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「やっぱり隠してたね」
「名前だってわかってだじゃん」
「勘だけどね。言っただろ?君が教員はじめて学生死んでないからその子も死んでないんだろって」

宿儺の器たる虎杖悠仁がこの交流会から復帰。
名前からしたら想定内の出来事であったがそれ以外にしてみれば想定外だった。
交流会1日目は特級呪霊が現れるというトラブルが起きたものの、誰も命を落とさず無事に終了した。
学長にしっかり怒られたであろう五条悟の後ろから名前が声をかけて手を振れば、アイマスクを捲って片目だけ出して悟も笑って答えた。

「歌姫は?」
「家入さんと飲みに行くんだって出たよ」
「じゃあ名前は僕とご飯でも行く?」
「奢りなら喜んで。とは言っても、君お酒飲めないからなあ」
「味は確かだよ」
「酒が飲みたいんだよ。七海くんいないの?」
「七海はいないよ。仲良かったっけ?」
「それなりに」

ふーん。と面白く無さ気に応えれば「京都来た時に一緒にご飯に行く仲でさ、酒の趣味が合うんだよ」と名前は笑う。

「補助監督なのにいいわけ?」
「所属は京都だから平気」
「そういう時は京都所属だすんだ」
「当たり前だろ?面倒事は嫌だからね」
「ふーん?良い性格してるじゃん」
「君には到底及ばないよ」
「五条先生!!」

二人でだべりながら廊下を歩いていれば後ろから元気な声が響く。
名前には効き馴染みのない声なので東京校の学生だろうとは見当はついたが、悟の口から「あれ、悠仁どうしたの」と続いて名前は宿儺の器の名前だとハッとした。

「先生お疲れー…って、あ、ごめん。話中だった?」
「全然平気だよ。あ、夏油名前、京都校で補助監督してんの」
「うっす!虎杖悠仁です」
「はじめまして、夏油名前です。君が噂の虎杖くん」
「うわさ?」
「死んだはずの悠仁生きてるからね」
「あー!そういうね!」
「それでいいの?五条、きみね…」
「二人は友達なん?」
「ん?まあ、そうだね」
「だって五条先生の事「五条さん」でもないし。へー!先生も友達いたんだ」
「どういう意味かな悠仁…」
「君面白いね!五条にそんな面と向かって友達いなそうだなんて!」
「え!あ!!ごめ、先生…そういう意味じゃ…だってナナミンも「五条さん」って呼んでたし」
「ナナミン?」
「七海だよ、七海」
「まーじで!?あの七海くんが!?学生に?ナナミンって呼ばれてんの!?最高かよ!!あっはははは!!」

あの七海くんが!?とブフっと吹き出してゲラゲラと笑う名前。
名前から見た七海は脱サラと言うだけあって一般的な感覚の方が強いし、何より名前と同じく一般家庭出身という事もあって共通点があった。
京都に来た際に一緒に食事や飲みに行くが、基本礼儀正しく堅いあの七海が、である。
あの性格であの風貌で、学生から「ナナミン」という可愛らしい呼び名で呼ばれていると思うと笑わずにはいらない。
口を手で覆い、腹を抱えて思わず笑えば悠仁には心配そうに覗きこまれるし悟には「名前やべーな」と言われる始末。

「な、なな…ナナミン!ナナミンて…ひ、ひー!あっはははは!ななみ、ななみん!!」
「な、なあ先生…夏油さん、大丈夫?」
「悠仁、名前って呼んであげな」
「へ?なんで?」
「夏油って苗字はちょっとアレだからだよ。おーい、名前、戻ってこーい。悠仁がビビってるよ」
「だ、だって!あの!七海く、が…ナナミン!かわいい…あっははははは!!」
「え、えーっと、名前?さん?大丈夫?てか名前さんもナナミン知ってんの?」
「んふふ、知ってるよ…んふ、……私これでも京都校の呪術高専出身だからね。ついでに補助監督しているから七海くんっが、ふふ…京都、…きた、時……飲み行ったり、してるっから…あー、駄目、笑っちゃう」
「つぼったな…」

肩がぶるぶるしながら必死に話そうとする名前ではあるが、どうも上手くいかない。
余程悠仁の「ナナミン」がツボに入ったのだろう。切れ長の目が潤み、同性である悠仁から見てもドキリとする。身長は高く、まあ五条よりは低くはあるが身長は高い部類。
不思議な色気というのだろうか、それがまた不思議な物である。

「それで悠仁、どうかした?僕に用事?」
「ううん!先生の姿見えたから声掛けただけ!」
「それだけで声かけてもらえるなんて教師冥利じゃないか五条…ふふ」
「馬鹿にしてる?」
「してな、い…っふ。」
「してるよね?ぜーったい、してる」
「だって今までそこまで慕ってくれる子いなかっただろ?庵さんなんて慕われてるのに」
「そーなん!?五条先生嫌われてんの?」
「悠仁…」
「君正直だね、面白い程。五条はこの性格だからねー仕方ないねー」
「名前……」
「まあこの性格だけど助けてもらってる呪術師は多いのも事実。私もその一人だしね、補助監督だけど。君だって五条に助けられた人間だろ?仲良くしようよ、五条に助けられた人間同士さ」
「名前さんも?」
「そ。私も処分されるところで五条に助けてもらった部類さ。五条で困ったら私の所に秘密で来な?バレと面倒だから秘密でね?」

口に人差し指を当てて言う姿のなんと色っぽい事だろう。
思わず悠仁は赤面して「お、おっす」と目線をそらす。
それを見た悟が「悠仁?」と声を掛けると「なんでもない!じゃあねセンセ!!」と走ってどこかに行ってしまった。
まあどこかに、といっても学生なので学生寮かその辺りだろう。時間が時間である、外出が許可さえる日でもないのだ、今日は交流会なのだから。

「元気だね、彼」
「ちょっと、僕の可愛い生徒を誘惑しないでくれる?」
「誘惑?私男だけど」
「悠仁には刺激が強いんだよ色男」
「君には負けるよ。で、どうする?食事行く?」
「居酒屋にいく?全国チェーンのやっすいとこ」
「君が行くのに全国チェーン?」
「そこスイーツ食べ放題でさ、チープな味で今ハマってんの」
「齢考えなよ…まあタダ飯にありつけるならいいや」
「じゃあ決まり。七海だと嫌がって来てくれないんだよ」
「七海くんはそういうとこ好きじゃないからね」
「硝子と伊地知くらいだし。GLGに付き合える人少ない問題」
「その性格が問題の糸口だね。じゃあ着替えてどこ集合にする?」
「このまま行こうよ」
「スーツに匂いがつくから駄目だよ」
「めんどくせーな。じゃあ僕が付いて行くから着替えたら行こ」
「わかった」

本当補助監督ってめんどくさいよねー。と悟が言えば、名前は「君の方が何万倍も面倒だよ」と真面目に返される。
実際問題、五条悟に好き勝手いえる人間は少ない。
無駄に家柄よく、無駄に顔がよく、無駄に強い。
それに太刀打ちできるのは名前の双子の兄だけで、名前はその恩恵を受けているだけである。出身校も違えば立場も違う。ただただ特級呪術師だった兄の恩恵を受けて名前は今生きているし生きてこられた。



「げ!!なんでアンタ達…」
「げってなんだよ、げって」
「あれ?お二人もここなの?」
「ちょっと名前!アンタなんで五条と一緒にこの居酒屋なのよ!!」
「五条がここのスイーツ食べ放題のチープな味にハマっているというので、タダ飯を食いに」
「名前、お前ももっといい店強請れよ。御三家の当主だぞ?」
「いいの、俺はただで飯が食えれば。家入さん、ここの酒どれが美味い?」
「高いのから順に飲めばいいじゃん」
「ってかなんで隣の席なのよ!!」
「おい名前、これ美味いぞ」
「硝子も無視しないで!」
「庵さん、他のお客様の迷惑になるから静かにね?」

居酒屋で通された部屋は個室ではなく、しかも隣のテーブルはつい数時間前まで会っていた面々である。
庵歌姫、家入硝子。通路を挟み五条悟、夏油名前。
がやがやとざわつく居酒屋で愚痴りながら最終的に飲んだくれた歌姫。
悟は悟でスイーツだけを食し、名前は飲み食いし、硝子は淡々と酒を飲み続けた。

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