呪術 | ナノ
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※高専時代(アンケより)

「ん?」
「どしたんだよ」
「あれ、名前先輩じゃね?」
「あ、ホントだ」
「姉さん、なにして…ってまって、あれ」
「ナンパじゃね?ウケる」
「なにもウケないよ硝子」

三人が連れだって繁華街に出てみれば、そこには見知った人間が男性と話していた。
夏油名前。特級呪術師夏油傑のひとつ上の姉で、同じく呪術師として高専に居る。
呪術師としては到底弟には敵わないが、それでも二人は仲が良く、お互い可愛がっていた。
特に弟は言えばシスコンに片足を突っ込んだような性格で姉に対しては過保護な面がある。
以前級友でもある家入硝子に「キッショ」と言われたが軽く笑って飛ばしていた。

「今日は姉さん任務のはずなんだけど…」
「戻ったんじゃね?制服だし」
「補助監督いねーじゃん。何してんだろうな」
「私ちょっと」

行ってくる。と一歩踏み出そうとしたところに傑の手を悟が掴む。
ちょっとまて。と言わんばかりに。
そして硝子がこっちだと言わんばかりに傑と悟の身体を押して名前が気づかないだろう場所まで身を隠す。
まあ大柄の男性が2人いるのでどこまで通用するかは運だろう。
名前も一応は呪術師で、視覚を使っての術式を使うのだ。
それにしても3人から見る分には男性はぐいぐいと名前に迫るし、名前は名前で身をじゃっかん引いて拒否の姿勢を見せている。

「あれナンパか硝子」
「たぶんね。名前先輩絡まれてんなー」
「ちょっと、2人とも観察なんてしてないで助けてあげなきゃだろ」
「まあ待てよ。ここは名前先輩がどうあしらうか見てえ」
「はあ?なんでそんな事に姉さんを」
「もしかしたら未来の義兄かもしねーよ?傑」
「ふざけるな。私より弱い人間に姉さんが守れるわけないだろ」
「傑より強いってなると悟か九十九さんだけじゃね?名前先輩と悟結婚していんだ」
「駄目に決まってるだろ、いくらなんでも悟は駄目」
「こっちだってお断りだっての。お?」

悟が反応したので2人も同じくその先を見る。
すると名前の手を握り、迫る男性。まあ言えば熱烈的である、実に。
しかし名前はまだ気づいていないがその背後には後輩3人が控えている。
その男性がどういった経緯で名前に迫り、あまつさえ手を握っているのかは知らない。
特に弟である傑は今にも飛び出していきそうなのを悟が押さえ込んでるのだが、それもそろそろ限界だろう。

「名前先輩押しに弱いもんなー」
「笑ってる場合か!離してくれ悟、姉さんが困ってる」
「傑、わかってないね。こういう時は寸前で助けた方がヒーロー感があるんだよ」
「硝子、なに?それ。俺が行けば常にヒーローじゃね?」
「悟は少女漫画でも読め。まあ、ほら、あれだよ。名前先輩優しいから経験して対処を、ね」
「硝子…姉さんは私が守るからいいんだよそういうの」
「もういいのか?もっと困ってる先輩見て楽しもうぜ」
「悟!」

君ってやつは。と悟を叱るように言おうとした時だった。
片手だった名前の手を今度は両手を掴み、熱烈な言葉を名前に浴びせているのだろう、名前の身の引き具合が強くなっている。
それにしても、である。
一応は高専生で任務の送り迎えは基本あるのだが、どうして名前は一人なのだろうか。
勿論補助監督だって色々任務が立て込めば迎えに来れない、行けないというのは無い話ではない。特に高専生の女学生なんて舐められる立ち位置ではある。
しかし名前はあの特級の夏油傑の姉で、傑自身は無自覚のシスコンの気がある人間だ。補助監督と言えどそこまで馬鹿ではないから名前の扱いには慎重だったはずなのに。

「あー、そろそろ行っていいぞ傑」
「なんで硝子の許可がいるんだよ」
「今がベストだって事だよ、ほら行け。悟も面白そうだから行け」
「男に見る目ねーなって言えばいいんだな」
「馬鹿、あるだろ。私の姉さんだぞ」
「キッショ」

軽く笑って硝子が背中を押すと傑はすぐさま名前の傍に行く。勿論一緒に悟もいるが、一番近い観覧席という感覚が強く硝子とは別の意味でワクワクした目で見ている。

「ちょっと、嫌がってますよ」
「え」
「あ、す「彼女に何か用ですか?」
「こえー」
「いや、助けてもらったお礼にお茶にでもって…ねえ」
「嫌がってましたよね」
「え、その…えっと、知り合い?」
「お「関係ないでしょ?というか手、離してもらえます?」
「びびってんじゃん、少しは手加減してやれよ傑」

名前を掴んでいた手を傑が逆に掴み、高身長を生かして自分よりも低い身長の男を冷静を装った顔で冷たく見やる。
当然言われた男性は自分よりも大柄な傑に酷く驚き、名前の手を握っていた手を緩めたのを見て傑はすぐに名前の手を取って自分の後ろに隠す。

「でもさー、お前それだけで手掴んでたわけじゃないだろ」
「え」
「下心っつーもん、持ってたよな?」
「ご、五条くんっ」
「アレ、ぜってーお礼にお茶とかいうやつじゃあ、ねーよな」
「へえ…何しようとしてたわけ?制服着てるから未成年って、わかるよね」

形勢逆転、ではないが今度は男が困惑する番となってしまった。
2人は私服で名前は制服。
そして名前の知り合いだというのは会話や態度からわかっている。
男からしたら名前の彼氏か何かで厄介な女に手を出したなんて思っていてもおかしくはない。

「あ…いや……」
「おにーさん、なに黙ってんの?」
「おい、そろそろ逃げんぞ。警察呼ばれた」
「げ」
「まじかよ。助かったなおにーさん」
「へ」
「傑、めっちゃ怒ってるからな、感謝しろよ俺にも」
「悟、傑、行くぞ」
「おー。ほら傑も行くぞ」

いそげ。と硝子が声をかけてさっさとその場から逃げる。
勿論傑は名前の手を引いて。
悟は面白半分で「じゃあな、おにーさん!今度は女に声かけるの間違えんなよ」と笑いながら長い足で走り去る。
そのまま走り、高身長で目立つ男が2人とそれに付き合って走ってる女子が2人。1人はその男の一人に手を掴まれたままだからある意味ドラマチックだろう。
弟でなければ。
適当に走って繁華街から少し外れた小さな公園に入って、ようやく名前の手は解放された。

「……っ、は、疲れ、た…ちょ、なに?なん、で…3にん、いる、の」
「名前先輩息きれすぎじゃね?」
「……あの、な…お前、ら、ふた、りが…おかしいん、だよ……、先輩、も、私も、ふつう、だ」
「硝子もやべえ」
「姉さん、手、大丈夫?怪我はない?」
「い、ま……しん、ど」
「怪我してるの?あの野郎…」
「ちが……、やすま、せて」

はあはあはあと肩で息をしてしゃがみこむ2人。
いくら鍛えていると言っても男女の差は大きいし、なにより体格の差がある。筋肉質な男といくら鍛えて筋肉が他の高校生よりるとしても、大男と並んで走るにはスタミナだって少ない。
息が整わない女子2人を公園のベンチに座らせて自販機でお茶を買って持たせる。

「ありが、と…」
「んで、先輩あの男なに?」
「あの、人……?んとね、」
「あー駄目、疲れた。名前先輩膝枕して」
「私汗かいてるからっ、汗、臭いよ…」
「大丈夫、名前先輩良い匂いだから…」
「ちょ、硝子ちゃんっ」
「名前先輩の膝枕は貰った、悪いな男ども」

名前の許可を得ないまま硝子はそのまま名前の膝の上に頭を乗せて「いえーい」と言わんばかりにくつろぎ始める。
名前は困ったようにしていたが、諦めたのか貰ったお茶に口を付ける。

「姉さん、補助監督の人は?」
「他の緊急任務だって言われて、私は一人で戻れるからって任務の方に行ってもらったんだ」
「なら傑でも呼べばよかったじゃん」
「シャンプーが無くなりそうだって思って」
「それで変な男に声掛けられたの?危険じゃないか。それと硝子、どいて」
「やだね。名前先輩の膝最高。柔らかい。良い匂いがする」
「硝子ちゃん!やめて!!」
「当たり前だろ!」
「傑…すげえ変態臭いからやめろよ…」
「うん…私もそう思う…彼女にしてもらいなよ」
「彼女いないし」
「え、じゃあこの前の女の子は?」
「へ!?」

硝子がニヤリと笑い、「ばーか、バレてんだよ」と名前の膝の上で傑を笑うと悟も一緒に「ばーか」と笑った。

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