呪術 | ナノ
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「…ねえ、僕昨日変な事言った?」
「変な事?例えば」

えっと…。と言葉を濁す悟。
熱は下がり今朝からもう任務に行くことも可能だろう。
熱に浮かされて何か口走った記憶はあるが、それが夢だったのかどうなのかがわからない。
先に起きて朝食の準備をしていた名前に「おはよう」と挨拶をして、それから切り出した。

「んー。僕っぽくない、というか」
「ぽくない。」
「支離滅裂、的な」
「名前さん好き、甘えたい。とか?」
「………やっぱり、変な事言ってた…」
「熱ある時なんてそんなもんだよ。顔洗って着替えておいで。食欲はある?食べられそう?」
「うん、大丈夫」

やっちまった。という雰囲気で顔を洗いにキッチンから出ていく。
暫くして少しバツの悪そうな顔をして食卓に並んだ、いつもより少し少な目の朝食を前に座る。
ちらりと名前を見るが、名前は変わった風もなく、いつも通りにしている。

「…いただきます」
「いただきます。」
「…………」
「ねえ」
「なに?」
「私の事好きって、変な事なの?」
「うぇ!!??」
「上?なんかある?」

天井を見上げる名前に悟は焦って吹き出しそうな口を押える。
もぐもぐと鈍い味覚を誤魔化して必死に飲み込み、キョトンとしている名前を見る。
いや、確かに。と悟は焦る。
だって、だってだ。確かに「好き」な事は変な事ではない。一応は夫婦なのだから不自然ではないし、言えば当然である。むしろ「愛してる」ではないのが一般的には不思議なところだろう。
しかし当の名前はそれを流しに流しまくっていたのだから、そう正面きって言われると言葉がでなくなってしまった。

「昨日、僕ばっか好きみたいだって」
「嘘…」
「なんだ嘘か」
「いや、そうじゃ、なくてさ…言ってた?」
「うん。結婚してエッチしてるのに、僕が具合悪くても出ていっちゃうし甘やかしてくれないし。好きなの僕だけじゃんって」
「う、うわー…」
「立ちバックしたいとも」
「あ、それはしたい」
「脚の長さ考えて」
「爪先立ちでプルプルするの絶対可愛いよ。それ採用」
「くっそ…熱下がったと思ったらこれだよ」

そのまま普通に食事をして時計を見ればいい時間である。
スマホを見ながら「今日も休んじゃおうかな」と言えば「無理ならいいんじゃない?昨日虎杖くんが心配してたよ」と言うと少し悩んだのか「ま、悠仁は良い子だからね。休も!!」と高専に電話をかけて演技をして「今日も悪いけど休むわ…」と言って、終るとスマホをポイと投げた悟。
後片付けをしながらその様子をみた名前に「元気じゃん」と軽く笑われたが「病み上がりだもん」と茶化す。
ジャアジャアと水の流れる音が止んで、食器を拭き、料理が並んでいたテーブルを拭く。

「ね」
「うん?」
「今日は使用人来ないの?」
「今日は来ないよ。昨日も本当は来ない日だったけど、悟が熱出したでしょ?本家に連絡して来てもらったの。五条家の薬とか、医者とかあると思って」
「ああ…そういう」
「ついでにご飯頼んでたんだけど、ちゃんと私用と病人用にわかれてて流石って思ったね。当の病人は食欲なくてアイスだったけど」
「……名前さんの作ったのが食べたかったなー」
「今まで料理してこなかったんだから無理でーす。お見合い相手なら料理なんて皆完璧だったんじゃない?皆当主と結婚するために叩きこまれてるでしょ」
「夜伽もね」
「悪かったな下手くそで」

こちとら弟が離反者だから風当たり強いし呪術師してるから彼氏なんて居なかったんじゃ。と悪態をつきながらテキパキとキッチンの仕事を終わらせる名前。
それからお風呂の掃除だ、トイレ掃除だ、ゴミ出しだ、洗濯だと動き回っていると何故か背後からジーッと観察している存在が一人。
業を煮やして「なに!?」と言えば「なにも」と言いつつそれを辞めない。
使用人が定期的に来ると言っても、使ったままにはしておけない。それにゴミだって出さなければたまる一方なのだ、が。こうも後尻くっ付いてこられれば流石に名前でも嫌になる。

「さっきから何!?掃除機かけたいんですけど!」
「……いや、名前さんが、家事してるって思って」
「当たり前でしょ?時間あるんだから」
「明日使用人くるの?」
「明日は来る日」
「じゃあ掃除機明日でいいじゃん。リビングで一緒にテレビ観よ。映画でもいいから」
「………」
「一緒に居て。くっついてたい」
「お、おう…」

掃除機に伸ばしかけていた名前は手を奪われてリビングのソファに座らされ、どこからか持ってきたDVDを物色してプレーヤーに掛け、キッチンからジュースのペットボトルとグラスを二つ持ってきた悟は名前の隣に座って名前の腰に手を回す。

「あ」
「なに」
「叩き落とされない」
「叩いてほしかった?」
「ううん!嬉しい…これ胸糞映画なんだよ!」
「それを私に見せるの?もっといいのがいいな…」
「だって努力していい結果だして終わるなんて、胸糞でしょ。こっちはどんなに頑張っても無理な物は無理なんだし」
「まあ…確か、に?」

名前の腰に手をまわして、ぐっと自分に引き寄せ、そしてリモコンで再生を開始する。
言えば王道ストーリーで主人公は冒頭から打ちひしがれて、それでも前を向いて努力する。なのだろう。
時折悟が茶々を入れては名前が少し笑う。それを数回繰り返していると洗濯機が電子音を鳴らして洗濯が終わった事を告げている。

「洗濯物干さなきゃ」
「後でいいじゃん」
「駄目です」
「じゃあ一緒に干す」
「え、いいよ」
「やだ。今日は一緒に居るって決めたから」
「え…また面倒な事を。じゃあしてもらうか」

一時停止のボタンを押して画面が止まった事を確認してから立ち上る。
洗濯機はランプを点滅させて洗濯が終わった事を一応視覚でお知らせしているのをボタン解除して蓋を開けてカゴにしわを軽く伸ばしながら入れていく。

「乾燥機付の奴にする?」
「今の所そこまで大変じゃないし。必要になったらおねだりする」
「あ、今の感じいい。おねだりってところ」
「はいはい。」
「あ、今面倒臭いって思ったでしょ」
「思いました」
「こんなに可愛い僕なのに!」
「私の可愛いの対象は私より小さいモノが基本なので。悟くん、ちょっと私の可愛いの例外なんだなーこれが」
「どう?こうしたら可愛い?」
「ん?うざい」

さっとしゃがんで上目使いで名前を見上げる悟に名前は無慈悲にも残酷な言葉を落として洗濯物を干しにカゴを持ち上げた。

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