呪術 | ナノ
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「あ!名前さんじゃん!!」
「!」
「あ、ホントだ」

おーい!と大きく手を振って存在をアピールする虎杖に名前は小さく手を振って返事をする。
熱を出した夫、悟に代わり書類を高専に持ってきたのだ。
朝熱をだして、熱と言っても高熱ではないが微熱でもなく、まあ休みにして打倒だろうという熱。色々あって疲れもあるのだろうと名前が「休みなさい」と言って休みを取った。
構内を歩いて補助監督室に向かう途中、1年のトリオが名前を見つけたのだ。

「名前さん、無事ですか」
「無事って…無事だよ、生きてるよ、大げさだな」
「今日先生休みなのになんで名前さんがいるの?呪術師辞めたんでしょ?結婚して」
「そーそー。学長が今日は五条先生休みだからって自習だよ。午後からは3人で任務だけど」
「本日は溜まっていた報告書の提出と買い出しに。日付みんな結婚前のやつ、特級だからって誰も何も言えないからこうなってるの、学長から言ってもらわなきゃ」
「あ、先生の?てか、先生具合悪くて休んでるのに名前さんここに居ていいの?」
「ほっときなさいよ、あんなクズ」
「具合が悪いごときで死なないだろ、あの人」
「午前中は五条家のお手伝いさんにお願いしてあるから大丈夫。医者もお願いしようとしたら本人が嫌がってね」
「お手伝いさん…セレブ…」
「御三家パワー。家に居てもすることが何もない!復帰したーい」
「名前さんも先生になればいいんですよ、絶対五条先生より良い」
「賛成!名前さんとの実習良かったし」
「いいな、それ!」

あははは。と笑って「そろそろコレ出してから買い物行かないとだから、じゃあね」と別れて報告書を出しに補助監督室へ顔を出し、久しぶりだと仲間たちに挨拶をする。
女性自体が少ない業界なので、同性である女性補助監督とは仲がよく、顔を出せば喜んでくれたし心配もされた。
あの特級で御三家のひとつに嫁いだ、というのが一番大きい。
まあ東京の高専で活動してた名前と五条悟の関係を知っているし、また知っているからこそ結婚の報告には混乱したわけだ。

「名前さん…お久しぶりです、どうしたんですか」
「あ、七海くん久しぶり。本日は夫の溜めていた書類提出をしに」
「お、っと…」
「だって今や私も五条だし。すごーく違和感、違和感しかない」
「それで五条さんは」
「本日は体調不良のためお休みをいただきました。今家で寝てるはず」
「あの人も体調崩すんですね…」
「疲れが出たんじゃない?」
「いいんですか?ついてなくて」
「本家のお手伝いさんに午前中頼んだ。買い物して帰るつもり」
「よくごねませんでしたね」
「お義母様に来てもらう?って言ったら黙った」

んふ。と笑うあたり想像したのだろう。
結婚してその年でお母さんに来てもらうのは抵抗がありすぎる。しかし実家でもある本家から使用人がくるのだから然程差はない気がするが、それでも実母に比べたらマシだ。
短い雑談をしてから「任務がありますので、また」と七海が頭を下げて去り、名前も買い物をして帰らなくてはと高専をでた。
スーパー、ドラッグストアを巡り色々と買い込む。本家から色々と薬やらなんやらは貰っているが、市販薬や柔らかいアイス枕などを買って今回だけではなく次回に備える。もちろん自分の具合が悪くなる可能性もあるからだ。
食欲があるかはわからないが前に風邪など熱があって食欲が無い時はアイスクリームがいいと聞いていたのでアイスクリームを数個買い、食欲が出た時の為にレトルトのおかゆもあった方が良いのか悩み、それもやはり数個買ってきた。
戻ればまだギリギリ12時ではない、というくらい。使用人が名前に頭を下げて「おかえりなさいませ奥様」と挨拶をしたと思えば「では私はこの辺りで。御当主様はまだお部屋でお休みになってます、お食事は準備いたしましたがご不要であればお手数ですが処分なさってくださいまし」と勢いのまま言われて帰ってしまった。
荷物を片付けて寝室に行き、様子を見るために声を掛ける。

「どう?熱下がった?」
「名前さん…?」
「んー、ちょっと熱ある?かな?」
「冷たいね」
「さっき手洗ったから。熱計ろうか」
「んー」

体温計を出して体温を見るまでの間に「食欲ある?」「汗は?」「痛いところはない?」と優しく聞いてみる。
力がない「んー」という声に名前はまだ熱は有りそうだなと予感し、電子音が鳴って見て見れば、確かにまだ高い。

「んー。まだ少し高いね」
「そっか」
「アイス買って来たけど、食べる?」
「……食べようかな」
「食べたら薬飲もうね、本家の薬にする?市販薬も買ってきたよ」
「薬か…」
「おかゆ作ってくれてあったから、おかゆもあるよ」
「そこまでは今いいや」
「起きてリビングまで行ける?」
「それぐらいは」

じゃあそこで食べようね。と言えば大人しく従う。
ノロノロと動いて名前の後ろについて歩く姿は子供の様である。体は大きくて全く子供ではないのだが。
買って来たばかりの冷感シートを額に貼り付け、アイスを出して正面の椅子に座る。

「食べさせて」
「それくらい出来るでしょ?」
「甘えたい」
「十分甘えてるよ」
「…午前中どっか行っちゃったじゃん」
「高専に報告書の提出と買い物にね。お手伝いさん居たでしょ?」
「使用人にやらせればいいじゃん」
「頼んでもいいけど、アイスとか薬とか、頼めないでしょ?」
「名前さん、僕の事なんだと思ってるわけ?結婚しても碌に………、具合悪くても名前さん知らん顔じゃん」
「………、?」
「僕ばっかりじゃん」
「さと、」
「僕ばっかり、名前さんが好きなんだもん」

はあ。としか名前は言えなかった。
まずアラサー男性が「もん」とか、と普段では笑えるが相手の状態を見れば笑うに笑えない。
熱で浮かされて、感情が不安定で、言えば取り繕いのない本心が漏れ出ている状態なのだと名前は思った。

「……好きなの?私が?真面目に?ホントに?」
「え…うん、好きだよ。何回も言ってるじゃん…」
「冗談だと思ってた……」
「酷くない?それ。名前さん好きでもない人間と結婚すると思われてるの?」
「玩具とられたくない子供の心理かと」
「…結婚してエッチまでして?」
「ほら、女性関係荒れてたでしょ?穴があれば誰でもいいのかと」
「………それ、は…言われても、否定できない……名前さんこそ、エッチできるんだ」
「昔の人にできて現代の私にできない事はないでしょ、生殖に関して」
「言い方…」

べりべりとアイスの蓋を剥がしてノロノロとスプーンを刺して口に運ぶ。
体温が高いためにアイスの外側がゆっくりと溶けているのが覗いて見える。
一口入れてはムニムニと口が動いて、しばらくしてまた一口。いつもバクバク食べるのとは違い、口の中でゆっくりと溶かして食べている。

「えー、いつから?」
「え……、名前さんが、分家に嫁に行くかもって思ったら」
「比較的最近だ。そっかー。じゃあ、もし七海くんとか伊地知くんと結婚ってなったら?」
「それも、嫌だな。誰かと結婚しないでほしい……ずっと、僕と一緒で一人でいてほしい」
「寂しい願望………」
「でも、名前さん僕と結婚しちゃった」
「しちゃったねえ」

うんうん。と他人事のように名前は頷く。
思い返せば確かに結婚という事になってくっつくようになった。それまでは特にくっつく事もなければ触る事さえなった。当然である、交友関係であったのだ。いくら仲が良くても10代とは違うのだから体を障ったりくっついてじゃれるなんてことはもうない。

「アイス食べたら薬飲んで、ベッドで寝なさい」
「…名前さんは?」
「ご飯食べて洗い物して、終ったら様子見にいくから」
「一緒に寝てくれないの?」
「寝はしないけど、横に居てあげる。有難いことにお手伝いさん夕食も作ってくれたから」
「……熱下がったらエッチしてくれる?」
「それは元気になったら考えようね」
「立ちバックしたい…」
「脚の長さ考えようか」

これもう元気なのでは?と思うが白い肌はまだ赤みを帯びている。
逆に熱がありすぎて訳も分からず言っている…という可能性の方が高そうだ。
甘えたいというのだから甘えさせてあげるべきか、と思い名前は早々にアイスを食べさせ薬を飲ませ、寝室へ追いやろうとしたが「やだ、ここで待つ」と言うので手早く片付けて寝室に寝かしつけた。

「…子供かよ」

思わず漏れてしまった言葉だが、反応はない。寝たらしい。

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