呪術 | ナノ
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「結婚生活はどうですか五条さん」
「七海……それ嫌味?」
「さあ、どう取るかは五条さん次第では?私は新婚の人間にいう定型文として言ったまでです。正直貴方の生活には興味はありません、名前さんが心配なだけで」

アイマスクを捲って片目で七海を睨む。
睨まれた七海はどこ吹く風。コンビニで買ったであろうロゴの入ったコーヒーカップを片手に任務資料を読んでいる。
対して五条は七海に言われた「新婚生活」に少しピリついていた。
新婚だというわりには休みがない。まあそれは自分が特級だし?最強だし?と少し前までは笑っていたが今ではとても邪魔な称号である。せっかくの新婚に新妻と一緒に居れないとはどういう事だ。だからと言って高専の教師兼呪術師をやめて五条家の当主として鎮座なんてしてはいられない。
折角、淡く好意を抱いている人と運よく結婚できたは良いがこれでは台無しである。まあそれ以前の問題もあるのだが。
捲っていたアイマスクを戻して再び視線を封じて「っち」と舌打ちをする。

「聞けよ七海。僕これでも新婚なわけよ」
「そうですね」
「なのになんでこんなに忙しいわけ?」
「呪術師ですからね。嫌なら五条家当主として本家で鎮座していたらいいじゃないですか」
「ばーか。んなことしてられっかっての。夜だって名前さんとイチャイチャラブラブしたいのにさ」
「酷いセクハラを聞かせられました。名前さんに同情します」
「それが出来てないんだよ!夜なんてご無沙汰なんだよ!!」
「名前さん結婚相手間違えましたね確実に」

はあ。という盛大でこれ見よがしと言うような大きな溜息をついた七海。
これ以上は付き合いたくないと言わんばかりに資料をたたんでその場から離れるあたり本気で嫌気がさしたのだろう。
確かに、もし仮に、ではあるが七海と名前が結婚してそんな愚痴を聞かされたら五条もおちょくる前に逃げるだろう。相手が名前なのだ。
先輩で尊敬も信頼もあるが、そんなプライベートな事は知りたくない。それは嫌いだから、ではなく逆の理由で、だ。
淡い好意はあった。
でも好意があるからこそ幸せになってもらいたかった。
なんとなく本家に名前がいて、そこで見合いの話をしているから単に邪魔してやろうという気持ちで同席したら名前に見合い話が来たら思わず口に出してしまった。
「それなら僕が名前さんと結婚するし」
すかさず本人から否定されたが、ここぞとばかりに押しに押しまくって力でねじ伏せてしまったのは認める。分家の知らない適当な男と結婚するくらいなら好意がある僕の方がマシだ、そう思ったからだ。古い家だから男尊女卑は根深い、それに五条悟と親交があるとなれば分家の男なんて群がるだろう。
これで良かったのだ、そう、きっと。


「名前さーん、ただいまー。悟くん帰ってきたよ」
「おかえり。手洗いうがいしておいで」
「ハグとキスは?」
「手洗いうがいが先です」
「べろ入れていい?」
「駄目です。いいから早く手洗いうがいしてくる」
「はーい」

食卓につけば見事な料理が並ぶ。
日中は五条家の使用人が来て家事をしているのだから今まで料理していなかった名前が心配していた事は解消済みである。
「名前が作った料理」には少し興味があるが名前が拒否する可能性もあるので言わない。そもそもこうして結婚した事自体が事故のようなものなのだ。

「今日七海に新婚生活はどうかって嫌味言われちゃったよ」
「嫌味?」
「僕がこうして忙しい毎日を送っているの知ってるくせにさ。名前さんと子作りだってできてなんだし」
「とんだセクハラ。七海くんも災難だったろうに」

困ったように笑ってその話を流す名前。
当然だ、言えば悟の我儘で結婚したようなものなのだ。見合い相手の女ではないのだから子供がどうの、と言われても躍起になる必要がないのだ。

「ねえ名前さん」
「んー?あ、これ美味しい。作り方教えてもらお」
「なんでさ、僕と結婚してくれたの?」
「なんでって…ごじょ、悟くんが駄々捏ねて、こうなったんでしょ?」
「まだ僕の事五条くんて呼ぶ癖治らないの?名前さんも五条なのに」
「10年近くずーっと五条くんだっからね」

用意された料理を食べて、名前は単純に美味しいから作り方を知りたいと感想を言いながら結婚の理由を聞く。
勿論予想していた通り。
どうひっくり返しても返らない答えだ。
前当主夫妻の事だ、あの場の話は本気だろう。当主が貰い受けなければ分家の誰かに嫁に出されていたに違いない。
でも、と思う事がある。
当主ではなく分家であれば、これでも1級の呪術師なのだからそちらの方が幸せだったのでは、と。

「僕さ、結構名前さんの事好きなワケ」
「へー。それは有難い」
「一応恋愛的な意味…いや、異性として?」
「なんで疑問形なの?」
「んー、ほら、僕そういうのわかんないし。でも名前さんがお嫁に出されちゃうって思ったら、口から出たんだよね」
「ふーん?」
「名前さんて、僕の子供産める?」
「ブライダルチェックはクリアしてるから産めるはず。まあ若いワケではないからアレだけど」
「いや、そういうんじゃなく」
「?セックスしてるのに?」
「ゴムなしはまだじゃん」
「まだ最後まで出来る様になったばっかじゃん。こっちは負担が大きいの」
「僕のが大きいばかりに」
「そうそう。だたでさえ体格差あるんだから」

どうしたの?と笑う。
実際最後まで行けたのは最近で、それ以降ご無沙汰なのだ。
やっとの思いで挿入までこぎつけたが、それ以上はまだ負担が大きく慣らしていかないと無理!と名前は訴えてきたからだ。
ほぼ毎夜慣らしては名前を開発し、最後まで出来た時は達成感と幸福感はあった。
しかし、しかしだ。
今はこうして帰ってこられたが明日はどうかわからない。これから急な任務が入って出る可能性もある。

「今日はお疲れですか?悟くん、早くお風呂入って寝なさい」
「えー?せっかく帰ってきたんだからイチャイチャしよーよ」
「大体そうやってグチグチしてるのは具合が良くない時でしょ。暖かくして寝なさい、忙しかったんでしょ?」
「そうだよ、1級呪術師が1人寿退社したから」
「そっか…きっと嫁ぎ先がうるさかったのね、優秀な人材を失って大変だわ」
「新婚できっと毎晩旦那にヒイヒイ言わされてるんだよ!」
「それは…どうだろう、知らんけど」
「だから僕らもしよう!」
「寝ろ」

後片付けやらをする名前の後ろをついて回ってアピールするも「寝ろ」と言われ続け、大人しく寝ると翌朝確かに熱が出ていた。

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