呪術 | ナノ
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『どーーーーーーいうことよ!!!ちょっと、五条と結婚するってなに!?』
「え…もうそっちに話行ってるんです…?」

翌日、「僕と名前さん結婚するから」とさらりと報告された職場。
当然のことながら現場は騒然となり、学長には呼び出されるは後輩の伊地知には「何か質の悪い冗談ですか…?」と心配され、家入には大笑いされるし、七海には「腕のいい弁護士を紹介します」と司法の立場から心配された。
そして午後、スマホがけたたましい音楽と共に着信を知らせて誰かと思って画面を見れば「庵 歌姫」の文字。
出て「もしもし」という前にこれだ。

『嘘なら嘘って言いなさい!本当なら私五条家本家に乗り込んで怒鳴ってるやるわ!!』
「あ、あの…」
『やっぱり嘘なのね!!誰よ、そんな質の悪い。名前があんな悪魔と結婚するわけないじゃない!ねえ!!』
「本当だよー。ってか、人の結婚とやかく言うから歌姫結婚できなんじゃない?」
『五条!!はあ!?なんで名前の携帯に…って、今はいいわ。そんな変な噂流すんじゃないわよ!!名前が可哀想でしょ!!!』
「聞こえてた?僕と名前さん結婚すんの。マジもマジ、大マジ」
『………は?』
「式には呼んであげるよ、先輩だし?名前さん歌姫と仲良いし」
『五条、名前に代わりなさい、早く、すぐに、早急に今すぐ!!』
「何怒ってんの?名前さん、はい。歌姫が名前さんと話したいって」
「もしもし…」
『五条に何か握られているのね、そうなのね。それ結婚じゃないと駄目なの?私じゃ力になれない?硝子、硝子は?助けにならないの?』
「あの……残念、ながら…」
『そんな………』

ぶつん。と切れた通話。
画面を見れば通信切断と表示され、最後にはいつものホーム画面が映し出されている。

「え、これ初期設定じゃん。変えないの?恵でさえ変えてるよ?」
「あんまりしっくりくるのなくて」
「じゃあ僕にしよ」
「結構です」
「駄目!僕と結婚するんだから僕を感じて!僕は名前さん画面だよ」
「勝手に人を撮るな!」
「名前さんのスマホゲット!んで、僕の自撮り!ホームとロック画面に設定だ!!」
「ああああ!勝手に!これどうやって戻すの?」
「え、知らな、い、の?」
「初期のいくつかあるの変えるのはわかるんだけど、そこでいいのかな…」
「ううん、違うよ。でも僕変えてあげない、僕の事見てね」
「……あとで七海くんか伊地知くんに聞くよ」
「ねえ名前さん、僕と結婚するんだよ?」
「不本意だけどね」
「いやなの?」
「いやですねえ」

休憩室で隣に座っていた五条は面白くないというオーラを全力で出して名前を威圧する。
対して名前は言えばいつもの事なので然程警戒する事も無ければ身構えることもない。いつもの様に「はいはい」と受け流してしまえばいいのだ。
そもそもこういう事に慣れている。まあまさか結婚という事になるとは夢にも思っていなかったのだが。夢なら悪夢だろうが。

「僕の事嫌い?」
「嫌いではない。ただ結婚の対象ではないかな。色々五条くんにはお世話になってるし」
「僕好きだよ」
「ありがとう」
「………、ふーん」

すっと名前のスマホを取ってロック画面とホーム画面を初期設定の画面に戻す五条。
はい。と手渡して名前が確認すれば確かに戻っている。
どういう風の吹き回しだろうか。いつもであれば「ぜーったいにダメ―!!」と子供の様に言うのに。と名前は少しだけ不審がる。

「あ、そうだ。再来週の土曜は指輪見に行くからね。翌日は本家で打ち合わせ。爺たちが茶々入れて来てるみたいだから家の親は早急に進めたいらしいし」
「五条くんの事だからそんなのすっ飛ばすかと思った」
「一応は古い家だからね。色んな日取りがあんの、本当面倒だよね。それで今週の休みは引っ越しね、とりあえず僕の部屋に来てもらうから」
「……えあ?!」
「暫くバタバタするから新居探しは後ね。僕の部屋の方が広いでしょ?家具はまあ追々?ベッド広いからまあ暫くはそれ一緒に使おうね。日用品も暫く僕の使ってよ」
「………、ま?」
「ま」

別に準備しなくていいからね、ほとんど捨てるし。とまた爆弾発言を落とす。
名前はただ「は?」「へ?」「え?」と一言を発する機会の様に言われることに相槌のように出すしかできない。
何故、引っ越し。
ああ、結婚だもんな…。え、結婚?真面目に?本当に?まじで?嘘…。というループが頭の中グルグルしている。

「え…まって、本当、まって」
「なに?」
「結婚するの?本当に?」
「本当だよ」
「誰と誰が」
「僕と、名前さん」
「………はー…」
「今更駄目とか無理とか話はなかったことに、なんて出来ないからね」
「だよねぇ……結婚で、なんか漠然と幸せなものだと思っていたけど、なーんか違うなあ」
「………そう?」
「ま、子供のころに見てたドラマやらアニメやら漫画の影響だからね。フィクションとリアルは違うって事かな。10年前に家族なんて亡くなったし、それの影響で一般人の友達だって疎遠になってそのままだし、呪術師だし」
「一応僕の両親だって結婚してるんだけど」
「呪術師でしかも御三家の元当主夫婦なんて参考にならないでしょ」
「確かに」

さりげなく腰に手をまわしてきた五条の手を名前は迷いなく叩き落とした。

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