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「…それが?」
「ああ、今回は##name_1##という名だよ。まだ本調子ではないけど仲良くしてあげてくれないかな」
「宿儺様に歯向かわなければ私は構わない」
「まあそういわずに。記憶が戻るまで時間がかかるんだ。私を認識できていないみたいでね、宿儺に会う前には戻ると思うけど君には反抗的な態度かもしれない」
「ソレは厄介な縛りを結んだものだな。呪肉体にしておけば楽だったものを」

夏油ではない夏油に抱きかかえられた##name_1##は裏梅ににらまれる。
張相の一撃は重く##name_1##の意識はいまだにハッキリしておらず、時折意識が浮上しては唸っている。

「転生体の方が記録を多く持てるからね。私はそちらを良しとしたまでさ。宿儺の様な人間ではなかったからね」
「すぐ死んでいたのにか?」
「すぐじゃないさ、それなりに役立ってから死んだよ前回も前々回も」
「…ぅ」
「起きるのか」
「どうだろうね、張相がかなり強く殴ったみたいで」
「呪霊、受肉体にまかせるからだ。お前自身が動けばいいものを」
「この身体じゃ高専の人間に見つかると厄介なんだよ、残穢だって気を使ったんだから」

さあ早く目覚めなさい。と言いたげに、まるで子供をあやす様に抱いた##name_1##を揺らす。
##name_1##が負傷しているので揺らすのはあまり良くないが、目覚めてほしい方が大きいのだろう。愛しそうに、愛くるしいものを包むように。
裏梅と別れ、かつて加茂家の当主として牛耳っていた加茂の本家に行き、現在の当主を始末して家人たちの脳をいじる。
夏油傑の肉体年齢は##name_1##と同じ。それを娘や従者にするにはもったいないのでどうせならという事で加茂家でしか通用しないが妻という立ち位置に刷り込んだ。
立場、関係など些細な事ではあるが、加茂家の人間を使うにはそれが良いだろうと考えた結果だ。
己より下であり、他より上。娘という歳ではなし、従者では男尊女卑が大きいここでは不和が生じる。
家の者に言いつけて##name_1##の部屋を準備させ、手当をさせる。

「##name_1##さまがお目覚めになりました」
「ああ、今行く」

世話を任せた人間が呼びに来た。
それには部屋には呼ぶまで誰も近づけるなと全員に伝えろと命じて姿を消させる。
浮足立たない様に落ち着いて##name_1##がいる部屋の前に行き、なるべく優しい声色と意識して静かに「##name_1##、入るよ」と言って戸を開ける。
髪を綺麗に整えられ、格好も洋装から和装に替えられた##name_1##が布団でぼんやりとしている。意識は戻った、という事かと納得した。

「起きれるかい?」
「……げと、」
「うーん、まだ混濁してるのかな。まあ前の記憶を引きずり出すのには脳に負担がかかるしね、張相の奴は頭を殴るからいけない」

ゆっくりと体を起こす##name_1##。
まだ頭がふらつくのが危なっかしいので思わず手を出してしまったが、そのおかげかしっかりと座ると安定した。

「けん、じゃく、さま…?」
「!」
「げ、とう…くん、」
「そうだよ、羂索だ。よく思い出したね、偉い偉い」
「どう、して…げとう、くんの…からだ、に」
「君も知っている通り去年のクリスマスにね。最高のクリスマスプレゼントだよ、まあ私その宗教じゃないけど」
「ご、じょう…く、ん」
「今回は成功したよ、この夏油傑の身体様様さ」
「どう、して…」
「うん?ああ、これ?まあ話すと長いけど、##name_1##はその時死んだ後…だったかな?加茂家の当主の身体貰って、それでまた加茂家の当主になったんだよ。##name_1##は私の妻だよ、立場はね」
「………………」
「##name_1##?疲れてしまったかな、そうだ食事は出来そう?喉は渇かないかな、必要なら持ってこさせよう」

ゆっくりと頭を振る##name_1##。
##name_1##に記録が戻った、いや復活したと羂索は笑う。
最初の生で縛りを結び、転生させて再度主従になる。
##name_1##の最初は羂索の弟子で、羂索と同じく結界術に秀でていた。素晴らしい術師が死ぬのは惜しい。とはいえ、呪肉体になるほどの呪力はない。羂索と同じく脳を新しい身体に入れて器を変えることもできない。
ならばと結んだ魂の縛り。まさか成功するとは思わなかったが、同時に長生きしてみないと分からないこともあるのだと改めて思った事でもある。

「しぶや、は…?」
「それが気になる?壊滅状態さ。少し休みなさい、これからまだ君には働いてもらわないといけない。天元の回収に宿儺の確保だろ?宿儺に関してはやることがまだあるからね、指が何と言っても20本だ」
「宿儺、さま…ああ、イタドリ、ユウジ、は…宿儺様の、器の子」
「おや、知っていたのかい?」
「呪霊側の、男が、探していたので。私を、殴った男です」
「ああ、張相か…。少し眠りなさい、思い出したばかりで疲れているだろう?」
「…はい」
「##name_1##が起きる前に着物を用意しよう、綺麗な着物がいいね。いや、まだ怪我があるから怪我に障らないものが良いかな。ここでは私の妻なんだから良い恰好をしよう」
「…恐れ多いです」
「いいじゃないか、今度は男女で年も近い」
「私の…友人の身体です、どうかご勘弁を」
「残念だけど、加茂家にはそれで通したから。それに関しては目が覚めてからでもいいだろう、休みなさい。なんなら夏油傑に関しての記憶は消しておくけど」
「やめてください、私の記憶です。どうか、消さないで」

お前は本当に私が弱いところを知っているね。と##name_1##を寝かせて頭を撫でる。
可愛い可愛い弟子で従者。時代が移り変わり、性別が代わり、器であったり肉体の年齢がその都度変わる。
初めて女で生まれた##name_1##。前は夏油傑には及ばないがそれなりに男性らしい肉体を持ち、羂索に付き従った。

「私の可愛い##name_1##、女という肉体では少々体力面で心配だけど今の私には呪霊操術がある。一緒に世界を見よう。やっと私の願い叶いそうだよ、お前と一緒に見れそうで私は嬉しいよ」

私に賛同してくれたお前が、このタイミングで転生していたのは実に喜ばしい。
夏油の肉体で羂索は##name_1##の頭を愛おし気に撫でた。