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「……え、なにこれ」

医務室のベッドに横たわる同級生。同級生?同級生だった、もの?いや、人?まだ人なのだろうか。
いつも遠慮をしたように存在していた##name_2####name_1##という同級生の身体がある。
ただ目の下から存在している状態で。
眼の下を境に、その上が綺麗に無くなっているのだ。枕をしているがその空白部分には重さが存在していないかのようにふわりとしている。
断面を見る勇気はそうそうわかずに、横にいる家入に「…これ、本当に##name_1##なの?」と思わず夏油は聞いてしまった。

「間違いなく##name_1##。歯の治療跡も指紋も一致している。任務の際に呪霊か呪詛師にやられたみたいだな。同行していた1級は腕だけ、この状態で見つかった。それはここにはないけど」
「腕、だけ?」
「そ。腕だけ。理屈はわからない。あ、断面は安心しろ、ただ黒くなってるだけで中身は見えない。五条は見えるかもしれないけど、まだアイツ戻ってないし」
「##name_1##、生きてる、の?」
「状態としては仮死状態、だな。脈も呼吸もないが、それだけ。時間が止まってる状態。原因を解明しないとこのままなのか、死ぬのか。それもわからん」
「え…それって…やばくない?」
「ヤバイかヤバくないかと聞かれたらヤバイ。」

##name_1##の手に触れる夏油。何の反応もなく、温かいような冷たいような。わかるのは女子の柔らかさ。
普段触ることがないせいか、不思議な感覚だと夏油は思う。夏油と##name_1##は同級生だが、恋人関係ではないので手を繋ぐこともない。##name_1##がここで唯一手を繋ぐことがあるとしたら家入だけだろう。先輩である庵歌姫は普段時間帯があまり合う事がないので除外とする。
##name_1##の手を握っても、つんつんとつついても、反応はない。そのまま##name_1##の腕に夏油の指先が上がろうとすると家入にすかさず「おいクズ」と制止された。

「……##name_1##、可哀想に」
「夏油に悪戯されそうでな」
「任務でこんなになって、て意味なんだけど」
「そうか?私には寝てる同級生女子に悪戯と言う名の口にするのもおぞましい行為をするのかと思ったが」
「私ってそんな風に思われてるの?」
「##name_1##には思われるかもな」
「え」

ケケケケ。と笑う家入。

それから数時間後、五条が戻ってくると夏油と家入に引っ張られて医務室に連れてこられた。その道中で##name_1##の状態については2人から簡単にだが伝えられている。
医務室のベッドの上に横たわる##name_1##の身体。やはり目の下からしかなく、##name_1##の顔にかかっていた不謹慎とも思える布は##name_1##の頭の欠損さえ隠してはくれなかった。

「うっわ、なかなかヤベーじゃん」
「笑い事じゃないだろ悟。##name_1##、どうなの」
「ま、硝子が言ってた通りヤバイっちゃヤバイな。これ呪霊の級間違ってんだろ、1級案件じゃねえもん」
「同行の1級がやられてるってことは、じゃあ特級なの?クズ案件かよ」
「明日あたり夜蛾センから俺たちに任務の引継がくんだろ、明日祓っても十分だな」
「猶予あるんだ…良かったね、##name_1##」
「で、腕だけのポンコツは?」
「ここにはいない。腕だけベッドにあってもな」
「ふーん」
「どうしたの」
「まあ多分だけど、本体?それが呪霊の領域にあんだろ。##name_1##の頭と一緒だといいな」
「え」
「領域で##name_1##の頭潰されてればもう死んでるだろうけど」
「………それ、かなりヤバくない?」
「ポンコツが##name_1##抱えて頑張ってれば大丈夫だろ」
「五条…お前、呪術師が学生の頭抱えてくれるとでも思ってんの?」
「これで死ぬならまだいいだろ、死体があるんだ。こんなに死体が綺麗に9割以上残ってて何の不満があるんだよ」

確かに呪術師も、それを目指す学生も死体があるだけ御の字だ、というのは家入も夏油も知っている。
特級である2人と、医療側の家入は##name_1##がボロボロになって戻ってくるのも言えば毎度の事だった。
ある日は囮役、ある日は呪術師の盾にされて、ある日は上手くいかなかった呪術師の八つ当たりに。ことあるごとに##name_1##はボロボロになって家入に助けてもらい、そうした呪術師は五条家当主の力が及ぶ範囲で痛い目を見せた。
もしかしたら「俺の同級生イジメてんじゃねーよ、ポンコツ、間抜け!」という意味があったかまではわからない。それでも五条でさえ思う所はあったのかもしれない。

「厄介そうだから傑、オマエちゃんと今日休んどけよ」
「でも##name_1##が危ないんだろ?じゃあすぐ行くべきだ」
「…いや、でも五条の言う通り休んでからの方がいいなじゃないか?時間見ろよ、呪霊の時間帯と言えばそうだけど、人間休息とらないと正常な判断も動きもできないし」
「硝子まで………」
「まだ##name_1##が死んだって決まったわけじゃない。死んでるかもしれないけど。五条が言うにはまだ確定までの猶予はあるんだろ」
「##name_1##が生きていれば、な。元の呪霊か何かが##name_1##の頭潰してなけりゃな」
「………、なんでそんなに冷静なんだよ」
「なんで傑は冷静になれないんだよ」
「同級生だよ!?」
「焦っても##name_1##は戻らねえよ、冷静に行かないと##name_1##がマジで死ぬかもしれねえじゃん」
「五条の方が冷静じゃん。状況が状況だからな、現場に##name_1##の身体も持って行った方が良いのかもわからないし。腕の1本なくても生活できるがさすがに頭は死ぬしな」

焦って祓って##name_1##の頭から血がぶしゅー!なんて笑えんな。と家入が笑う。
しかしその可能性も0ではない、という事なのだ。
重要度で言えば呪術師の腕よりも##name_1##の頭だ。家入の言うように腕がなくても最低死なないが頭がなければ死ぬのは確実。
祓えば多く体がある方に戻るのか、すぐさま部位を戻さないと欠損とみなされるのか。

「あーメンドクセー呪い!!戻ったら##name_1##になんか奢らせようぜー」
「私欲しいの未成年じゃ買えないからコーヒーにするかな」
「…あのね君たち」
「お?優等生くん、なんだ?」
「ここは同行の呪術師だろ?その後処理で行くんだから」

そうこなくっちゃ。と##name_1##を囲んで悪ガキ達は笑い始めた。