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嘘でしょ…。思わず##name_1##は呟いた。
叔父が変な宗教にハマってしまったと相談を受けて##name_1##は嫌々その宗教の集まりについてきた。それこそ叔父にでっち上げの悩みを相談し、「じゃあ叔父さんが行っている宗教の教祖様にお話しを聞いてみよう」と付き添って。
正直呪術師をしているのでそういう宗教やら救いは求めていない。誰も救ってくれないことを知っているから。まだ生きている人間のほうが助けてくれる率は高い。
事情を話して休みをもらい、面倒な身内の問題解決に片足を突っ込んだわけだ。面倒でせっかくの休みを返上して、である。

「##name_1##?」
「あ、ううん…な、なんでもない」

その教祖が元同級生だったなんて。
いや、確かにあの時「教祖してるんだ」なんて言っていたが本当だったのか。
それだと非常に不味い。なぜかと言えば、あの時お互いに次は敵だと思って別れたし、あの夏油の事だ、##name_1##の見逃すはずがない。
自分だけなら同級生のよしみで手を抜いてくれるかもしれないが、今は叔父がいる。嘘をついて抜け出すことも難しい。
大人しく教祖様のありがたいお話を聞くしかない。まして叔父は##name_1##が呪術師という特殊な職業だとは知らないのだ。

「では、本日私が相談を受ける相手を」

あ、そういうのするんだ。と笑いそうになるのを我慢しいると##name_1##の肩が叩かれる。
やっぱりね。としか言いようがない。

「ではスタッフから肩を叩かれた方はスタッフに従って」

「叔父さん、先帰ってて」
「そんなわけにはいかないだろう。私が##name_1##をここまで連れて来たんだ。待ってるよ」
「時間もわからないし。子供じゃないから1人で大丈夫。今度会った時に今回の話するから」
「…そうか?失礼のないようにな」

同級生だからなあ…と思って叔父を帰す。まあ無事に帰ってくれるかは不明だが。
見逃して貰えるようにお願いするしかない。ああ、なんて面倒なんだろうとニコニコして手を振る。
##name_1##を含めてざっくり10人。整理券を配られて##name_1##が最後で10番、やはり10人だったようだ。最後にしたのも理由があるのだろう、話が長くなってもいいよに、とか。
待合室のようなところで待たされ、数分に1人消えていく。時計を見て1時間以内に順番がくればいいほうか、とカバンに入れていた文庫本を出して読み始める。少し周りの目が気になるが私は相談事などないので許してほしい。まあでも本当に今更だが宗教にハマるくらい追い詰められていたのならもう少し叔父には優しくしてあげたらよかったのかもしれないと##name_1##は思う。そもそも数年に1回程度しか会わない叔父に対して思う事ではないのかもしれないが。これでも昔は可愛がってもらってはいたが、中学に入ればそれなりに忙しくなるし高専に入ってからは殆ど会っていない。確かに相談があると言って会った時は喜んでくれたし、まあ、うん…と無駄に罪の意識が芽生えてしまった。

「最後の方」

綺麗な女性に呼ばれて目線をあげればそこには##name_1##だけ。
「はい」と返事をして文庫本をカバンにねじ込む。

「や。」
「………本当に教祖だったんだね」
「信じてなかったの?ひどいな。私嘘なんてついてないよ」
「元気そうでなにより。それで帰っていいかな」
「駄目だよ」
「だよねー」

お座りなさい。と座布団を進められ、そこに座る。
小上がりに夏油が肩ひじをついて座り、下に##name_1##がいる。ここでの上下関係を明確に示している。

「一緒にいた猿は誰?」
「サル…?」
「非術師」
「ああ、叔父さん。最近変な宗教にハマってるって相談されて」
「変な宗教ね…大変だ、助けてあげないとドツボだよ」
「ですよねー。なんせ教祖が夏油くんだし」
「傑でいいよ」
「うーん、却下」
「この前呼んでくれたじゃないか」
「話が別なので」
「ふうん、そんなこと言うんだ」
「帰っていい?」
「駄目」

ニコニコニコ。と笑う夏油にとりあえず笑っておこうかと笑顔を張り付けている##name_1##。
ここで呪詛師対呪術師の2人の戦いが仮に勃発したとして、##name_1##に分はない。まだ相手が1級であれば話は別だが特級だ。するまえから結果は見えている。
もし何かあれば捜索くらいはしてくれるといいな、と##name_1##は溜息をついた。

「悩み事?言ってみなさい」
「はい教祖さま。私は帰りたいのですが帰してももらえません、どうしたらいいですか」
「うーん、それはとても難しい相談だね」
「休みを取得し、休みなのに休みじゃない日です。学生時代の同級生は離反して呪詛師で教祖、今目の前にいるんですけどね」
「すごいめぐりあわせだ…きっと運命に違いない。いっそ呪詛師に転職してみたらいいと思うよ」
「しねーわ」
「そうか、あの猿は##name_1##の血縁者か…」
「そのあたりは同級生のよしみでどうにかならない?」
「してほしい?」
「できれば」

ニイー。と、今度は悪い顔で笑いかけてくる。
##name_1##の記憶では夏油はこんな顔で笑うことはなかった。何がそうさせたのか、いや、元から持っていたものかもしれない。##name_1##だって人前用の顔と素の顔があるのだ、この成績優秀だった男がないわけがない。

「まあ末端の猿だしね、広報程度にしか使えない猿は1匹くらいいなくても問題ない」
「お!」
「だって仲良しの##name_1##のお願いだから、ね」
「すごい含むじゃん…で、要求は」
「………そうだな、アイス食べに行こうか」
「あいす?あ、アイス?」
「ほら、前食べたがっていただろ?まあこの辺りそういう専門店はないけど」
「お、お祝い、的な?」
「そうお祝い。今更になるけど、どうする?」
「それが要求なの…?私危ない橋渡りすぎでは」
「あーあ、じゃああの猿プチって殺そうかな」
「それもまた運命よ」
「え、嘘」
「これ以上変な宗教ハマって周りが不幸になるよりマシでしょ」
「ええー…嘘でしょ##name_1##」
「叔父さんには小さい頃世話になったけど、私の身の危険のほうが大切だから。叔父さんも本望でしょ。自分のために他人が犠牲になるより身から出た錆の方が」
「ま、待って、待つんだ##name_1##」
「じゃ、帰るわ。」
「わー!待った、待って待って待って」

行かないで!と立ち上がって帰ろうとする##name_1##の手をつかむ。
夏油の中の##name_1##はこんなにドライではなかったし、押しに弱い女子だった。しかし今はもう「は?知らんわンなもん」と言わんばかりだ。
呪術師をしていればそうやって割り切っていかなければならない場面もたくさんある。全員は助けることができない、助けるためは割り切るしかない、自分が助からなければ多くの犠牲が増える。

「やん、教祖さまってば大胆。大丈夫、五条くんにも上層部にも言わないよ」
「お、叔父さんの命、君そんな簡単に…?」
「だって叔父さんが求めているのは私の助けじゃなくて夏油くんの言葉や態度、施しだから。叔父さんが欲しい物は私じゃあげられない。夏油くんに殺してもらえるなら本望でしょ」
「そういう考えもありか…」
「ということで、私帰るね」
「帰れると思う?##name_1##は高専所属の呪術師だって此処の呪詛師は知ってるし、私の居場所を知って帰れると思っているのかな」
「そこは元同級生として黙っててあげる。五条くんにだってバレないだろうし、私はここを知らない、夏油くんは私も叔父さんも知らない。それでよくない?」
「………帰らないで」
「やだ、帰る」
「##name_1##……」

ゆるんだ夏油の手を振り払い、扉を開けると此処の呪詛師がずらりと並んでいる。
人数では##name_1##が圧倒的に不利、1級の呪術師とはいえ相手の実力がわからない時点でかなり詰んでいるし、なにより後ろには特級がいるのだ。
そうでなくても体格的にも体力的にも、腕力でさえ##name_1##は夏油にはかなわない。

「………、いいよ、帰してあげて」
「…よろしいのですか夏油様」
「うん…##name_1##、元気でね。呪術師が嫌になったらいつでもおいで」
「来ないよ。嫌になったら普通に辞めて違うことするし。あ、でも辞めて実家戻ったらお見合いとかさせられそう…それは嫌だな」
「おいで!」
「嫌だってば。じゃあね夏油くん、もう会わないことを願ってるよ。元気でね」

##name_1##は呪詛師に睨まれながら、その中を歩いてその施設から出る。
##name_1##が呪術師だとバレているならば##name_1##の術式も戦い方もバレていて対策がなされているはずだ。元同級生の夏油がその頭になっているので、されていないはずがない。
どこから殺されるかもわからない緊張感を持って、##name_1##は高専の敷地に入るまで警戒だけは落とせなかった。