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「や。」
「………わあ」

目の前に現れたのは袈裟姿の元同級生。
長かった髪は相変わらず長く、お団子はハーフアップのお団子になっていた。

「久しぶりだね」
「そうだね、みんな探してるよ。夏油くんの事」

だろうね。と##name_1##の目の前の男は笑った。
夏油傑。在学中に任務先の村を壊滅させて両親を殺した。##name_1##が知っている情報はそれだけ。
当時上層部に尋問されたがさして仲が良いわけではないわからない。とずっと言い続け、担任からも##name_1##よりも他2人のほうが接点は多かったと助けてもらった。ただ別段仲が良いわけでもないが、悪いわけでもなかった。

「ちょっと来てくれないかな」
「うーん、一応指名手配になっている人と一緒はなあ」
「大丈夫だよ」

こっち。と踵を返して夏油が歩き出す。
ここは都会から離れた片田舎。任務でやってきた。任務自体は1級らしい任務であったが##name_1##が早々に片付けたからフリーな時間を楽しんでいた矢先の事。
土地勘もなければ応援もない。
いや、夏油は特級なのだ。こんな面倒なことをしなくても##name_1##を殺そうと思えばもう殺せている。特級呪霊を従えているのだから1級の殺害なんて簡単だろう。
黙ってついていき、少し開けた場所のベンチに腰を下ろし、ここにおいでと隣を叩く。

「こうやって並んで座ると高専時代を思い出すね」
「袈裟なんて着てないでしょ」
「そこじゃないんだけど。元気?」
「それなりに。五条くんは最初凄ーくダメージ受けてた。私でもわかったよ」
「…そうか。悪い事をしたね」
「それって、呪詛師って意味で?」
「##name_1##、結構痛いところをつくね。でも私は後悔してないから、悪いとは思ってないし?」
「ふうん?で、私になんの御用で?言っておくけど人質にはならないし、呪詛師の勧誘も止めてね」
「ははは。##name_1##は私を捕まえる?」
「まさか。夏油くん特級だもん、敵うわけないし。それに懸賞金があるわけじゃないし、捕まえる理由がないし」

あ、でも喉乾いたなんか飲みたいかな。と普通に同級生として会話をする。
するとなんとなく言った##name_1##の言葉に笑いながら夏油がペットボトル飲料を出して「どうぞ」と##name_1##の手に乗せてきた。

「え」
「喉、乾いたんだろ?あげるよ」
「ど、どこから…?」
「…秘密」
「こわ!」
「毒なんて入ってないよ」
「その考えが怖い。まあいいや…いただきます」
「いただいちゃうの?本気?」
「だって夏油くんが私を殺す理由ってないでしょ?あるかもだけど、まあ特級に殺されたなら仕方がないよね、だってと特級だし」
「もう少し警戒しなよ##name_1##…」

人生なるようにしかならないのよ。と何かをあきらめたようにペットボトルに口をつける。
とりあえずプシュっという音が聞こえるしリングも外れていなかったので異物混入はないはずだ。

「………##name_1##は何も私に聞かないの?」
「聞いて教えてくれるの?」
「それは##name_1##次第かな」
「別に聞きたいこともないからな、私」
「え」
「自殺してないだけラッキー!的な?ほら、私見てたのに何もできなかったクチだからさ、聞く資格もなーんにもないし」
「…そんなことないよ。##name_1##は食べてない私を心配してくれた。蕎麦なら食べられるか、とか、ゼリーは?とか。夜は眠れてるかとか」
「でも休ませてあげられなかったし。まあ、なってしまったことは仕方がないし。もしかして聞いてほしいの?」
「まさか。##name_1##はいつも何も聞いてこないなって。本当なら色々聞きたいんじゃないかって、思って。私は、聞いてほしかったのかもしれない」
「それはないよ」
「……そうかな」
「夏油くん、聞いても言わないだろうし聞いてほしいなんて思ってないと思う。自分に整理がつかないから人に言って整理するタイプじゃないし」

ま、それも私が思っている夏油傑像だけどね。ともらったペットボトルの蓋を閉め、自分の隣に置く。
お互い好きに理想像を作って、崇拝しているのだ。と##name_1##はぼんやりと伝える。

「今何してるの?お坊さん?お経読んだりしてるの?」
「私?教祖してる」
「……夏油、さま?的な?」
「そうそう。夏油様って言われてる」
「へー!すごいね。教祖…似合う」
「そうかな。##name_1##は今1級?」
「そう!卒業してから1級になったんだよ、五条くん推薦で」
「じゃあお祝いしないと」
「教祖さまから!私VIPだね」
「同級生だからね」
「わーすごい!」
「なにがいい?」
「えーそうだな…あ、アイス食べたい」

へ?と今までの顔から不意に毒というか、何かが抜けた顔になる夏油。
それを見た##name_1##が「あっはは、変な顔」と笑う。

「ア、アイス?」
「そ、アイス。この前五条くんと硝子で食べてさ、夏油くんとは行ってないなーって思って。まあ硝子はアイスなんていらないから酒って言ってたんだけど」
「え、3人で?##name_1##いつも誘っても行かなかったのに?どんな心境の変化?」
「大人になったの」
「えー…じゃあ、ご飯とかも?」
「ご飯は行かない」
「じゃあ、ご飯食べようか」
「嫌だ!アイスがいい、アイス。あ、クレープでもいいよ?」
「うーん、じゃあアイスかな…アイス好きだった?」

気分だよ、気分。と##name_1##が立ち上がって、それから夏油を急かす様に目の前に立つ。仕方がない、と言わんばかりに立ち上がると##name_1##から見た夏油は学生の時よりも不思議と大きく見えた。身長が伸びたのかもしれない、いや、背がピンとしている。

「あ、でもその恰好で一緒に歩いたら目立つね」
「まあ、それは仕方ないね」
「うーん、やっぱり止めた。お祝いの言葉で終わりにしよ!」
「着替えて来ようか?」
「ううん、いい。呪詛師と一緒のところ見られると面倒だし」
「今は?」
「んー、ばれたらヤバイね。その時は助けてよ」
「一緒に呪詛師してくれるなら考えてもいいよ」
「うーん、じゃあその教団の雑用で雇って」
「2人の誘いには乗ってくれるのに私の誘いに乗ってくれないなんて酷いじゃないか」
「だってあの2人は職場が一応同じだし?夏油くんも一緒だったら、違ったかもね」

意地悪か。なんて##name_1##が笑いながら自分のカバンから小さなポーチを取り出し、そこから紙切れを夏油に差し出す。
淡い色をしたメモ紙だろうか、4つに折りたたんである。それを##name_1##は「はい」と差し出し、何かと受け取る。
開けてみれば郵便番号、住所、会社名、電話番号が書いていある。

「なにこれ」
「学生の時、私があげたソバのメーカー。教えてって言われたの聞いて、ずーっと持ってた。いつか会えるかもって思って」
「…………覚えてたんだ」
「頑張ったんだよ?ポーチ変える度に入れてたんだから」
「…馬鹿だな、」
「紙1枚くらいの余裕はあるからね。じゃあね夏油くん」
「………」
「今回の事は五条くんにも上にも言わないから。同級生ってことで、バイバイ」
「…待ってよ」
「んー?」
「………っ、そこは、友達、だろ」
「友達だったんんだ、私と夏油くん」
「………えっ」
「バイバイ、傑。さようなら」

元気でな!と##name_1##は夏油の肩を元気よく叩き、来た道を戻る。
振り返らず、未練を残してはいけないと。
同じく夏油も##name_1##の気配が消えるまでそこを動かずに貰ったメモ紙を握る。

「………、」

きっと同じタイミングで、お互いの気配がわからなくなったところで大きく溜息をついた。
もう会わない、次があるなら敵同士だと確信して。