「客?私に?」 「##name_1##に」 「……、この南極カルデアに?」 「そう、この南極カルデアに、ね」 んー?とコーヒーを飲みながら唸り、そして頭を傾げる。 日本から戻って数日。##name_1##にとっての日常は戻り、日本で買ってきたお土産は配りえ、日本で撮った写真のデータは出力してデスクに飾ってある。 ダ・ヴィンチに言われてエントランスに向かう##name_1##。しかし##name_1##に客に心当たりはない。なんせ##name_1##の血縁者らしい血縁者は縁が切れていると言っていいだろう、爺から逃げて弟に色々押し付けてきたのだ。今更誰が、 「やっほー」 「ヤッホー!じゃねえわ。五条家の当主に悠仁が何で此処に居るんだよ!」 「##name_1##さんそれ制服?なんかイメージじゃないね」 「制服に文句を言え、私の趣味じゃない………なんでここに居るんだよ!ここ南極なんですけど!?」 「え、三者面談しに。悠仁が##name_1##を日本に呼ぶより行った方が早いよっていうから」 「え、わざわざ三者面談しに来たっていうの?」 「いうの!」 「馬鹿なの…?」 「最強です」 「……なんで三者面談?高専であるの?三者面談。そもそももう私悠仁の保護者じゃないし」 「え!?嘘、そうなの…」 「学費も生活費もなんもしてないし。私保護者だったら高専辞めさせて普通の高校行かせて普通に大学か就職させるぞ」 「え…やだ、それ早く言ってよ」 「なんで担任が知らねえんだよ」 そんな話を大人がしている間、虎杖は無人のエントランスをあっちにウロウロこっちにウロウロ。 二人の格好を改めて見て見れば、日本で見た格好そのままである。この南極にあるまじき格好である。 正規ルートでは来ていない、という事だろう。不法出入国も良いところだ。施設内に入れなかったのは一応結界が張ってあるからだろう。唯一開かれているのはエントランスで、まあそのエントランスも弱いながらも結界は張ってある。そこまで来れるというのだから一般人ではない証拠だ。実際一般人とは言えないのだが。 ピピピピと音が響き、##name_1##が腕時計状の連絡機器のボタンを押して会話を始める。 「はい」 『マシュです。##name_1##さん、今御手隙ですか?少しお聞きしたいことがあるのですが…』 「今ちょっと手が離せないから後にしてくれる?終わり次第連絡するから」 『わかりました。急ぎではないので、後程ゆっくりお願いします。では』 「え!今の何?凄い!なんで##name_1##さん日本語なのにあっちは英語で会話になるの!?すげー!」 「…ああ、そうか。施術受けてないからか。ここは色んな国籍の人間がいるからそういう施術を受けるの。まあ私受けなくても何か国語かはわかるけど。で、帰るのか」 「どうする悠仁」 「なんで悠仁に聞くんだよ。先生だろ。てか帰れ帰れ」 シッシ。と手で追い払う格好をする##name_1##。 ##name_1##とて暇ではない。ついでに言えばこんな面倒な男の相手なんてしたくはない。だから早く帰ってほしい、いや帰れ。という状態である。 「僕ここ見学した―い」 「却下だ却下。そもそも見学とかしてないし」 「セイバーさんとランサーさんは?」 「中に居るよ」 「護衛なしで来ていいの?」 「馬鹿ね、ここ監視されてるのよ。何の対策もなく客を迎えるわけないでしょ」 「でも先生最強だよ?」 「魔術師の一人の命と施設の保持をとるだけ。私一人の犠牲でカルデアが守れるなら安いってこと」 「そんなもんなの?じゃあ##name_1##さん日本で魔術師しててもいいじゃん」 「私はカルデアにスカウトされて今いるの。日本よりいいよ?」 「そんなもん?」 所変わればってね、と笑う##name_1##。 苦労もあったが所詮は慣れだ。日本での経歴もあって表だって嫌がらせはないし、なにより一応カルデアでは良い地位にいるので嫌がらせをするという考えを持つ人間はまあいないだろう。 「ほら、帰った帰った。私は忙しいんだ、保護者じゃないのがわかったら帰れ」 「せっかく南極まで来たのにー?」 「勝手に来たんだろ。ほら悠仁も当主連れて帰って」 「俺?んな事言われても先生が連れて来てくれたし…」 「ここってさ、健全な職場なの?僕が中入れなかったし怪しくない?」 「勝手に侵入しようとする人間が健全ではないことは分かる」 「なにさ、人理保証機関」 「そのまま。人理を継続させるための機関、大金持ちが作った場所。給料いいから辞める理由がないね」 「じゃあそれ以上出したら高専来てくれるってこと?」 「行かねえよ。今更日本に未練はない」 かーえーれー。と##name_1##は再度唸るように言う。 しかし五条はのらりくらりとかわして居座ろうとする。 「……もしかして、帰れない、のか?」 「え!嘘でしょ」 「あったりー!いやー流石に南極まで二人はキツくてさー。だからさ、1日だけ泊めてくんなーい?」 「くんない。そもそもアポなしで来ておいてその態度はなんだ」 「ご飯だけでいいからさー。ね、悠仁もお腹空いたでしょ?」 「腹は減ってるけど…でも##name_1##さん困ってるじゃん、疲れてるのはわかるけどさ」 「ええー!?僕が悪いの」 「悪いな」 「悪いと思うよ」 まさか虎杖にまで言われるとは思っていなかったのだろう。 ひどい!と言わんばかりに大げさに泣く仕草をする五条。やだやだ泊まる!泊まるっていったら泊まるの!!と子供の様に騒ぐ仕草は##name_1##が思うに家の人間が見たら泣くのではないかと心配になる程である。 『話は聞かせてもらった!』 「え、なに?」 「勝手に聞くな駄・ヴィンチ!」 『なんか変な意味が込められて呼ばれた気がするけど、あえて無視するよ!君、ユウジだね』 「なんか名前呼ばれた!」 「駄・ヴィンチ勝手に話に入ってこない!」 『私は気にしないよ!##name_1##、その二人カルデア入れてあげなよ』 「誰が責任取るの?私嫌だよ」 『その辺りは大丈夫!適当に誤魔化すさ』 突如スピーカーから出るダ・ヴィンチの声。 ご機嫌で、そして面白うだという雰囲気が駄々漏れである。 『ま、ここで餓死されても寝覚めが悪いだろ?』 「べっつにー」 「ね、##name_1##。誰と話してんの」 『で、それ誰?』 「五条家当主、悠仁の担任」 『へー。知らないけど。まあいいや、とりあえずゲート開けるからお入りよ』 あ、施術は受けてね。とプツンと切れ、扉が開いた。 |