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「##name_1##さん空き巣に入られたってマジか?」
「学生まで広がってるの…それ…」
「悟が言ってたぞ」
「しゃけ」

ひいん。と##name_1##が泣く。
少ない人間なのでこういった情報が早い事は知っているが、プライベートな事過ぎるのに早い。誰かが結婚したとか死んだとかじゃないんだぞ、##name_1##は内心腹を立てる。
引っ越しやら警察やらの諸々が落ち着いたので現場復帰で高専に来たら学生らに囲まれ、この様である。

「スエヒロも処分されたって聞いたぞ」
「なんだスエヒロって」
「まさみちが##name_1##に作ってやったぬいぐるみの名前。呪骸じゃないから本当にただのぬいぐるみだって言ってたな」
「高菜?」
「ほら、去年末のアレ関係で、まさみちが##name_1##にやったって言ってた。また新しいの作るって言ったぜ」
「あー。そっか。##name_1##さんも大変だよな…なんか手伝う事ある?」
「いや、大丈夫。もうほとんど五条くんが手配してくれて、引っ越しも終わったし」

あとは犯人捕まるのを待つだけだよ。と言えば本当か?と疑う目で学生たちが##name_1##を睨む。
嘘ではないし、本当とも言い切れないが。
盗まれた物は戻ってくるかはわからないし、犯人だってどうかわからない。
亡くなった両親の形見も、妹が好きだったキャラクターのぬいぐるみも、弟が最後にくれた誕生日プレゼントも。さすがにぬいぐるみは盗まれてはいなかったが、中に何かないか引き裂かれていたので元にはもどらないだろう。
学生らと別れて高専内を歩いていれば補助監督らに「もう出てきて大丈夫なんですか」と何度聞かれた事か。何もしていなくて、していても変わらないのだから任務に出た方がマシだというレベルなだけであって、精神的にはまあまあしんどいが。

「あれ、##name_1##さん。久しぶりっす」
「猪野くん、久しぶり。七海くん待ち?」
「違いますよ、一人で任務です。##name_1##さんもですか?」
「そんなとこ」

猪野は知らないらしい。
任務が一緒になる七海がそう簡単に人のプライベートを喋る様な人間ではないから当たり前かもしれない。補助監督の一部にも知れているかもしれないが、まあ任務を休んでいたのだから知っていても仕方がないだろう。
知らないらしい猪野は「ここで会うの久しぶりっすねー」と世間話を始めてくる。
少し滅入っていた##name_1##にとっては嬉しい癒しである。心配してくれるのはとてもありがたいが、まあ気が滅入る。

「そうだ、この前七海さんに美味い焼肉連れて行ってもらったんすよ」
「焼肉好きだね」
「やっぱ肉っすよ、肉。そこのカルビ超美味くて、##name_1##さんも今度行きましょ」
「七海くんが行くって事は高いとこじゃん、そりゃ美味いよ。七海くんの行くとこ間違いないし」
「ですよね!俺も七海さんみたいに美味い店見つけてー!」

話しながら歩いているとスマホが震えて着信がある事を教えてくる。
「ごめん」と一言断りを入れてディスプレイを見れば警察からだ。少し離れて電話に出ると犯人が捕まったという連絡だった。

「誰っすか」
「ん?警察」
「え!警察!?」
「ちょっとねー。今日任務休ませてもらお!伊地知くんか誰かいるかな」
「一人で行くんすか?一人で平気っすか?」
「多分大丈夫だよ、心配してくれてありがとね」

警察と聞いて驚かない人はいないから、これが通常の反応だろうなと##name_1##は当事者ながら思う。
しかし今まで休んでいたからと思って来たが、無駄足になったのは残念である。任務が好きというわけではないが、まあ適材適所の結果だろう。任務はキツイししんどいが、まあ##name_1##にはこれしかないのだと勝手に思ってしていることだ。
猪野と一緒に補助監督がいる部屋まで行き、今日同行するはずの補助監督が誰かを聞いてその補助監督に事情を説明する。
補助監督にも##name_1##の事は伝わっており、少し困った顔をされたが了解され、「では代わりの呪術師の方を当たってみます」と面倒臭そうに言われた。
悪いなとは思うが、一番悪いのは空き巣であって私じゃないし!と開き直る##name_1##。

「七海呪術師、夏油呪術師の代わりに任務をお願いしたいのですが」
「あ、七海くんお疲れー。ごめんね、警察から連絡来て」
「いえ、私は##name_1##さんに同行しますので他の方を」
「え」
「え」
「五条さんが一緒なら私は同行しませんが」
「いや…一人で」
「いけません。女性が一人で警察に行って舐められますよ」
「え、ええー…」
「七海さん##name_1##さんと一緒に警察行くんですか?」
「ええ、こういう時は女性一人で行くものではありませんから」
「じゃあ、俺##name_1##さんの代わりのやつもやりますよ!」
「いえ1級案件ですので…」
「いけるって」
「「「いけません」」」

声が三人被る。
まさか猪野も三人から同じことを言われるとは思っていなかったのだろう、驚いて「…っすよね」と先ほどまでの勢いがなくなってしまった。
1級である二人は若い猪野をわざわざ危険な任務行かせたくはないという意思、補助監督は適切に仕事を行うべきだという考えだ。
実際問題2級である猪野には回らない任務なのだ、どう頑張っても。
ここからは任務の割り振りを考える呪術師ではない人間の仕事なので、ここからは補助監督が頭を悩ませることだろう。
猪野は大人しく自分の任務に向かいなさいと七海に言われ、補助監督にも行ってくださいと言われ、##name_1##にも補助監督困らせないと言われて大人しく向かう。

「なにか動きがあったのですか」
「犯人が捕まったみたい。それで」
「そうですか、では向かいましょう」
「七海くん疲れてるだろうし、一人で行くよ私」
「何言っているんですか。ああいう機関は女性だけだと舐めてかかってきますよ」
「前何度もボールペン使うフリして何本か折ったら大人しくなったよ」
「…なかなかアグレッシブなことしましたね」
「力見せた方が早いじゃん?とくに男はさ」
「いちいち破壊するもの大変です、私が一緒に行きます、いいですね」
「嫌だって言っても来るパターン」
「ええ」

無駄な抵抗はしません。と##name_1##は両手をあげて歩き始める。
犯人が捕まったとして物は帰ってこないだろうなと考えていたので、とりあえず犯人の顔を見に行くつもりで##name_1##は大きな溜息をついた。