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『空き巣に入られたというのは本当か』

警察から出て、ホテルに向かってチェックイン。
少ない荷物を放ってベッドに横になっているとスマホが鳴った。面倒だけど仕方がない、とディスプレイを見れば夜蛾学長の名前が鎮座している。
そうなれば出るしかない。

「え、なんで知ってるんですか」
『悟から聞いた。本当なんだな』
「はい…今伊地知くんが手配してくれたホテルです」
『怪我は』
「ないです」
『そうか、それは良かった。明日は暫く休める様手配するから休みなさい』
「え、いいんですか?」
『七海からも連絡が来ているから多少はな』

警察やら引っ越しで大変だろう。でもこっちも人手不足なのは変わらないから長期は難しい。引っ越しは早くしろよ。
と要点を絞って言われて電話は終わった。
確かに職場に連絡しないととは思っていたので良かったのは確かである。ただ、あの五条が色々手配してれたことには驚いた。
いや、前にも同じような事があって、同じようにしてくれてはいた。同じような事がある事がおかしいのだが、こればかりは##name_1##がどうにかできる事ではない。
どちらも被害者で回避することは##name_1##には出来ない事だった。

「あー…しんど」

ぽつりと出た本音。間違いはない。
しかし思わず出てしまった本音に##name_1##は大きな溜息をついた。

「シャワー浴びて寝よ。うん、それがよさそう」

勢いを付けてベッドから降りてシャワーの準備をする。
ビジネスホテルだから作りは簡素で、リラックスできるような代物ではないが掃除をしなくていいと思うとちょっといい気分になるあたり安上がりだなと##name_1##は思った。




「うん……」
『おっはよー!』
「………うっす、はよう、です」
『今日は不動産会社行くから午後から空けといてね!』
「え、誰…」
『寝起きとはいえ名前確認してから出た方がいいよ##name_1##さん』
「……あ、五条くんか。朝から電話、思わなかったから。七海くんじゃないしなって、思った」

枕元で騒がしくなるスマホを耳に当てて条件反射で出てしまった。
確かに電話口で言われるように確認した方がいい。そんな事が電話の向こう側の人間に言われるとは思っても見なかったが。

「んー…で、なに?」
『だから不動産会社。引っ越すでしょ』
「あ、そっか」
『昨日から連絡いれていくつかピックアップしてあるの送るから迎え行くまでに見ておいて。気に入ったのあったらそこから見に行こ』
「……なんで、五条くんが?」
『今のトコ僕が手配したとこでしょ?一応責任感じてんだよねー』
「あー。そうだったね、五条くんが用意してくれたとこだね。結構長い事あそこ住んでたね」
『まあ今回も五条家関係の不動産になるんだけど、セキュリティレベルは上がるよ』
「あの時はまだ未成年だったから甘えたけど、一応成人というかアラサーなのでそこまでしてもらうのも気が引ける」
『五条家に住みたい?』
「お言葉に甘えようかな!商業施設が近い方がいいなー」
『データ送っとくからみといてね』

しばらくスマホを放置して朝の支度をして、食事から戻ると言われていた不動産のデータが来ていた。
それを順に見ていけば、なかなかのお値段である。
呪術師をしているのでそれがネックというほど高いわけではないが、駆け出しの頃から住んでいた場所からではかなり違っている。
高いには理由があるわけで、立地が良かったり女性向けでセキュリティ万全であったりと様々だ。
引っ越そうと思って予算立てていたわけではなく、いきなりの出来事なのでいっきに家賃が上がる事になんだか抵抗がある。確かにセキュリティをあげなければいけないというのもわかる。
そもそもあそこだって悪いワケではないはずだ。なにせ五条家の息がかかっているのだ。時折そういう事を無視して悪い奴はいるわけで、そうだっただけなのだが。
スマホをいじりながらピックアップされているのを見ているが、「ここ!」というところはやはりない。
引っ越しをしないという選択肢はないワケだから余計に面倒だ。恐らく癖でまたあそこに戻りそうなくらいに長く住んでいたのだ。今の住居に不満がないから余計に基準らしい基準がない。
これは五条くんのおすすめになりそうだな、でも家賃が高すぎると嫌だな。と眺めた。


「僕は此処なんて良いと思うけど」
「でもここまでセキュリティ高くなくていいと思う」
「空き巣入られたのに?」
「間が悪かったの」

エントランスがって、入るにはパスワードと鍵がいる。
何もそこまでこだわる理由がない。「僕のオススメ」と言われて案内されたが##name_1##には不相応だと却下する。
次も似たようなセキュリティ万全で「此処も違うな」と次は##name_1##が要望したとりあえず女性限定のマンションに行ってみる。

「私ここがいいかな」
「えー?ここ?セキュリティ高くないじゃん」
「十分だよ、今まで高すぎたの」
「僕遊びにこれないじゃん」
「来なくていいよ…今まで来た事だってないじゃん」
「そうだけどさ。まあ##name_1##さんがここでいいならここでいいか。契約しちゃお」

保証人は僕ね。と前回同様に勝手に契約を進めていく。
確かに天涯孤独の人間である##name_1##にとって五条はとてもありがい存在である。あらゆる保証人になってくれるのだ。

「家電とはどうする?」
「使える物使うかな」
「えー駄目」
「え、なんで」
「犯人がなにしてるかわかんないじゃん。ぶっかけてるかも」
「な、なにを?」
「わかんないか。じゃあいいや。全部新しくしよ」
「勿体ないじゃん」
「勿体なくない。僕が買うからさ、じゃあこれから電気屋行こうか」
「えー…」
「七海オススメの家電も聞いてあるからそれも見よ」

これはもう##name_1##が何を言っても聞かないパターンのやつだなと思い、##name_1##は大人しく五条について歩くことにした。一番大切な住居は##name_1##の意見が一番に反映されたのだから、まあ一応良い事にしておいて。