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怒られる!
その一言だった。
いや、そもそも私には非はないです!という反論がすぐさま頭に浮かんだのだが。
何度目かのレイシフト。最近ではすっかり自分だけどこか別の所に飛ばされると言う事がなくなって油断していた。
見渡せば緑の木々、そう森だ。それも青々と茂った木々で視界は正直よくはない。木漏れ日のおかげで暗さは感じないが一人だという現実が限りない不安を煽ってくる。
特異点の情報で先輩マスターとサーヴァントと一緒にやってきたはずなのに、また一人。
これはもしかしたらドクターか、もしくは何かの陰謀で毎回一人にさせられるのではないかと思ってしまうくらいには恨みが積もる。
唸っても、何をしても一人。念話を使ってみるもアメリカの大地の様に誰も反応してくれない。

「…やばいよね、コレ…………」

敵のサーヴァントも、野生動物も、まして知り合いも居ない。
風でザワザワと葉の音が重なるがどうやっても人の声は聞こえてこない。
ここでぽつんと立っていても野生動物やもしかしたら敵サーヴァントに襲われるかもしれない。
背後だけでもと思い、木の陰に身を寄せる。隠れたとしてもサーヴァント相手ではそんなのは何の意味も持たない事は十分に理解しているが、何もしないよりはマシだろう。
大きな溜息をついて、膝を抱える。





「お嬢さん、こんなところでどうしたんだい?迷子かな」
「……っ、え」
「こんなところで寝ていたら危険だよ」
「………」
「付近の村の人かな?」
「………」
「怪我、しているの?」

ふるふるふる、と頭を振る。
多分、人間ではない。でもアメリカの敵だったサーヴァントと比べて敵意は感じない、むしろその反対。
物腰は柔らかいし、何より人間である##name_1##を気にかけているように思えた。

「…実は、はぐれて」
「じゃあ迷子か」
「………そう、ですね。迷子、です」
「隣、いいかな。私も一人なんだ」
「一人、なんですか?」
「ああ。君とは違って最初から一人だけどね」
「最初、から?」
「ソロサーヴァント、それかはぐれサーヴァントというのかな」
「……」

失礼するよ。と##name_1##が座っている横に座る。
##name_1##が思った通り彼はサーヴァント、まさか自己紹介でもないが自分からばらしてくれるとは思ってもみなかったが。

「名前は?」
「……##name_2##、##name_1##です」
「##name_2##?」
「##name_2##は…ファミリーネームで、##name_1##がファーストネームです」
「じゃあ##name_1##と呼ばせてもらおうかな。私は…アーサー・ペンドラゴン」
「アーサー王…、ですね」
「同じ名前なだけだよ」
「……そう、ですか。サーヴァント、なのに?」
「君はサーヴァントが何か知っているんだね」
「………はい、これでも一応マスターですから。サーヴァントとはぐれちゃいましたけど」

やっぱりね。と笑うアーサーに##name_1##も##name_1##で「あ、やっぱり私がマスターって知っていたんだ」と納得する。
敵ではない、ソロサーヴァント。
最初こそそんな存在がいるのかと思ったが、何度もレイシフトを重ねる度にソロサーヴァント自体は珍しくないのだと認識を改めた。

「一人は初めて?」
「いえ、もう何度か経験しています。今回敵に囲まれていなくて良かった、と思えるくらいには」
「…災難だったね」
「慣れてしまいました。でも、皆はちゃんと見つけてくれるので大丈夫です。それまでちょっと不安ですけど」
「信頼があるんだね」
「…なんだか、そういわれると照れますね。でも、はい」
「信頼関係は大切だよ」
「…………」
「私が言うのも変かもしれないけれどね」

##name_1##がキョトンとしていると、アーサーと名乗った彼は困ったように笑う。
もしかしらた懇親のボケで笑わせようとしてくれたのかもしれないが、##name_1##にはそうとは思えなかった。何より、もし彼がアルトリアの男性、いやしかしか…と##name_1##が黙り込むと「ごめんよ、困らせたかったわけじゃいんだ」と謝られた。

「アーサーは、一人なんですか?」
「ソロサーヴァントだからね。マスターはいないんだ」
「じゃあ、先輩のマスター紹介します」
「君がなるって言わないんだね」
「私より、きっと先輩の方が良いと思うので。沢山のサーヴァントがいて、そのサーヴァント皆先輩の事大好きですから」
「そうか、それは会ってみたいね」
「きっと大好きになりますよ」

ぎこちない会話だっただろう。
敵とも味方ともお互い判断を完全にできないから、いや、##name_1##にとっての敵か味方かが判断できないからだ。下手に怒らせてしまえば##name_1##は簡単に殺される、それはアメリカでその結末が簡単に見えてしまった。
相手を刺激しない、そしてなるべく大人しくておく。これが今##name_1##が出来る範囲での防御なのだ。

「…君は―ッ、誰だ!下がって##name_1##、敵襲だ」
「何が敵襲か!我らが主をどうするつもりだ」
「ハサン、大丈夫、大丈夫だから。私無事だから、大丈夫」
「##name_1##様、今暫しお待ちを。すぐにお助けいたします」
「##name_1##、君の知り合いかい?」
「私のサーヴァントです。ハサン、大丈夫だから。何もされてないし、私も怪我してないよ、落ち着いて。あの、ごめんなさい、剣を下げてもらえますか?ハサンが」
「しかし…」
「…………わかった」
「ありがとう。ハサン!」
「##name_1##様!」

辺りを警戒しつつも剣を下げるアーサーに礼を言って走り出す。
髑髏の面、しかもいかにも怪しいという姿で、相手はサーヴァントだ。
##name_1##にとっては契約しているサーヴァントではあるが、彼にとっては未知の存在。
それに##name_1##を信用するには時間が短すぎる。

「##name_1##様、ご無事ですか…ああ、よかった」
「ありがとう、ハサン」
「体を百に裂き、お姿を発見して集約いたしました。して、あれは」
「えっと…ここで待っている時に出会った、サーヴァント?」
「敵でございましょうか」
「たぶん、敵じゃないと思う。先輩は?」
「あちらのマスターは別行動をしております。ザイールを連絡役に使いましたので連絡は済んでおります」
「本当?よかった。アーサー、話があるんですが、いいですか?」
「……その前にこの辺りのサーヴァントを下げてもらえるかな」
「それは出来ん。敵か味方かの判断が出来かねる、また我らが主の命に係わるのでな」
「ご、ごめんなさい…先輩のマスターが来れば大丈夫だと思うから…」

サーヴァントにとっては一瞬の距離だが、##name_1##はハサンのすぐ隣で「ごめんなさい」と何度も何度も謝って最終的に「もういいよ…」と何故かアーサーの方が折れていた。