「クーちゃんを独り占めだんてズルいわ!」 それはつい先日、先輩マスターが召喚したサーヴァントの1騎であるメイヴ。クラスはライダーで女王らしい。 そのメイヴは##name_1##の姿を見るなり駆け寄り、そしてズビシという擬音が聞こえそうなほど勢いよく指でさしてきたのだ。 「……クー、ちゃん?」 「クー・フーリンよ、クー・フーリン」 「それでクーちゃん…」 聖杯に願って「私の考えた最強のクーちゃん」を作り出したのが彼女だった。 彼女と同時に召喚されたクー・フーリンオルタも一応はクー・フーリンの一部というより1騎であり、先輩マスターに譲られそうになったのを必死で断ったのも記憶に新しい。 その時の断り方が「クーフーリンはもう間に合ってます」というのが先輩のツボにはまったらしく、しばらくそれで笑ってはマシュに心配されていた。 「聞いたわよ?貴女、クーちゃん侍らせてるって!」 「侍らせては…いないと、思うけど……」 「だって!だってキャスターのクーちゃんにランサーのクーちゃん。若いクーちゃんもいるんでしょ?それを侍らせてるっていうのよ」 「でも、それは先輩が…」 冬木に居る時に召喚したサーヴァントがクーフーリンだというだけで彼が来ると##name_1##にとマスター権を渡されただけだ。と##name_1##が説明すれば、それでも結局「ズルい」と言われてしまった。 「でも、確かに私の所にクーフーリン多いかも…」 「かも、じゃなくて多いのよ!羨ましい!私もクーちゃん欲しい欲しい欲しい」 「………んー、サーヴァントにサーヴァントは譲渡できないから、メイヴが私と契約」 「させるか!!!」 する?という半分冗談のような、雑談のよな話をしようとした時だ。 誰かが##name_1##の首根っこを引っ張り、メイヴから距離を取らせ、そしてメイヴと##name_1##の間に入り込む。 ここはカルデアで敵の心配はない。あるとしたらサーヴァント同士の私闘くらいで比較的平和ではある。一部のサーヴァントがマスターを違う意味で狙う事はあっても命の心配はない。 「きゃっ…いたっ」 「ランサーのクーちゃん!」 「おう悪ぃな##name_1##。だがしかしだ、お前がメイヴと契約するのは我慢ならん!!」 「そうか!私と貴女が契約したら同じマスターに仕えるサーヴァントになるのね」 「クーちゃんいうな!」 「頭良いわね、貴女!名前はなんていうの?」 「知らずに来てたのか!」 「えっと」 「マスターお前は黙ってろ!いいかメイヴ、オレはお前とマスターを同じにするつもりは毛頭ない!」 今までクーフーリンにマスターと呼ばれたことは少なく、ほとんど名前で呼ばれていた##name_1##はその迫力に押し負けて黙る。 いつもはフレンドリーでふざけたりしていた仲だが、ここまで敵意をむき出しでマスターの名前さえも伏せるとは思っていなかった。それほど嫌っているのだろうか。しかし相手のメイヴはそんな事はどうでもいいと言わんばかりにきゃあきゃあ喜んでいる。 「だいだいテメエにはオルタがいるだろうが!こっちまでくんな!!」 「クーちゃんはクーちゃんだもの、全部欲しいわ!」 「うるせぇ!お前はオレのマスターに手出すな!おいマスター!」 「は、はい!」 「お前はこれから一人行動禁止だ禁止!クーフーリンの誰か一人を絶対置け!いいな」 「えーそれはちょっと…」 「ズルい!私もクーちゃんと一緒がいいわ!」 「オルタがいるだろ!!」 「だってクーちゃんもあっちが良いって言ってるんだもの」 「マスターが断ってるだろうがよ!」 「クーちゃんと私がそのマスターと契約したら万々歳でしょ?いい考えだわ」 「全然万々歳じゃねえよ!!」 これは俗にいう一方通行というやつ?と##name_1##は頭を傾げる。 恐いなと思ってみていたやり取りも、一方的にカッカしているのはクーフーリンの方だ。 どうやらクーフーリンはメイヴを酷く嫌っているらしく、メイヴはその逆でクーフーリンに好意的だ。その好意がどのような好意かはまだわからないが。 ここの好意はさまざまで、##name_1##はあまり深くかかわらない方が良い事を学んだ。 「行くぞマスター付き合ってられん」 「ま、待って。ドクターに呼ばれているから行かないと」 「ドクターに用事なの?私も行くわ、クーちゃんも行くなら」 「ついてくるな!」 「クーがここに居ればメイヴは私には付いてこないと思うけど」 「ええ。だって私貴女にはクーちゃんのマスター…まって、今クーちゃんをクーって呼んだ?」 「何か問題があるのか?マスターなんだ、おかしくはないだろうが」 「ズルーい!クーだなんて、私はクーちゃんが良いと思うの!」 「じゃあクーちゃん、私ドクターの所に行くから。あとはよろしくね」 「じゃあねー。ねえ貴女、私との契約考えておいてもいいわよ?」 「私は先輩との相談で決まれば誰でも歓迎するから、来てくれるなら嬉しな」 「んな!」 クーフーリンとメイヴの攻防に関わらない方が賢明だと判断した##name_1##は逃げる。 メイヴという英霊がどのような英霊かは##name_1##は知らないが、クーフーリンが嫌がっているのは確実だ。ただ殺そうというところまではいかないと言う事も理解できる。 メイヴを抑え付けるようにクーフーリンがふんばり、それにメイヴが喜んでいるのも事実。 人の恋路を邪魔する者はなんとやら、ではないが恐らくクーフーリンに関わらなければメイヴは##name_1##に興味を示さないらしい。すでにクーフーリンに迫っては##name_1##の事など眼中になく「クーちゃんクーちゃん」と夢中だ。 「ちょ、##name_1##!!」 「ちょっとクーちゃん!!##name_1##って誰よ!」 もしかしらたクーちゃんはおバカなのかもしれない。と思いながら「がんばれー」と思ってもいない応援の言葉で激励した。 |