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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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あー!!!という男女の叫び声が響いた。
一人はライブラに最近強制的に入れられた##name_1##、もう一つはスポンサー契約にやってきた男性に付き添って現れた緑色の長髪の個性的な男性。双方互いに指を指してタイミングよく、そして同じリアクションをして叫んだのだ。

『ままままままま巻島!』
『なんでお前…!』

こんなところにいるんだよ!と詰め寄る巻島に##name_1##は間髪入れずに腹に一撃。勿論男と女の力の差はあるものの、不意打ちだったその一撃に巻島は「ぐふぅ!」と言ってその場に蹲る。
それを見たスポンサーは大いに笑い、##name_1##に向かって「やあ」と声を掛けると、また##name_1##は「ななななな!!!」とまるで壊れた音楽プレイヤーの様に同じ言葉を繰り返した。

『相変わらずだね、##name_2##さん』
『なー!?え、どうし…巻島、と、お兄さんが…?は?』
「彼女とお知り合いで?」
「ええ、弟の祐介と同じ高校の部活で。私もまさか彼女がここにいるとは思ってもみませんでしたけど」

大切な商談だ。とスティーブンに念を押された##name_1##は内心面倒くさいなと思いつつ頷いた。どうこう言ってもどうぜ良い様に丸め込まれるのだから無駄な労力は消費しないことにしてたのだ。
相手が日本人だからこっちも日本人がいた方が何かとあっちの警戒心も解けるだろうという考えて##name_1##が選ばれたのだが、どうやらそんなスティーブンの思惑を##name_1##は軽く壊してしまったらしい。
ただ、救いはそのスポンサーが##name_1##の高校時代の部活仲間の兄だと言う事だろう。

『あ、巻島…ごめん、大丈夫?』
「申し訳ありません、うちの従業員が失礼を」
「いや、いいんですよ。弟も友人に会えて嬉しいでしょうし、##name_2##さんとも知り合いですから」
『お前な…』
『いやー、吃驚してさ。悪い悪い』
『思ってないっショ…その言い方』
『思ってる思ってる』

いやースマンスマン。と軽いノリで謝る##name_1##。もちろん日本語なので日本語がわかる##name_1##と巻島、そしてその兄くらいしか理解はしていない。スティーブンは生憎日本語までは習得していないので##name_1##の英語の教師はもっぱらクラウスが引き受けている。

「##name_1##、」
「…はい、すみません」
『英語、少しは上達した?』
『英語に囲まれていますから…』
『兄貴と俺とで態度違い過ぎっショ…』
『そりゃ一緒に馬鹿やってた巻島とそうじゃない人じゃ当たり前じゃね?』

と##name_1##が返せばはははは。と笑う巻島兄。急に笑い出して少し驚いた様子のスティーブンはチラリと##name_1##を見て「いい加減にしろよ」と目で叱る。
それを感じ取った##name_1##は巻島を立たせて「マジごめんな」と一言。もっともそのくらいのじゃれ合いは高校当時からよくあったのでそれほど気にする事ではないが、関係を知らない第三者から見れば異常だと言う事だ。
それからの商談は思いのほかスムーズに執り行われ、むしろ##name_1##が先方と旧知と言う事もあって色々と優位に進めることが出来た。


『つうか、お前普通に歩けてるけどもう大丈夫なのか?』
『ん?あー、まあまあ?そうそう、チャリ乗れるようになったわけよ私。もう懐かしくて泣きそうなくらい』
『マジかよ…』
『巻島達どのくらいここにいるの?』
『兄貴次第っショ。付いてきただけだし俺』
『そっか、時間あればチャリ乗ろうぜ!って誘おうと思ってさ』
『乗れる場所あんのか?』
『あるある。今お世話になってる人から聞いたんだよねぇ、私が自転車乗るっていうので子供にも教えてって』

二人で少し話しておいで。と帰る直前に二人にさせられ、まあ積もる話もあるが話してはいけないと再三教育されている##name_1##としては今まであった事を巻島に言うわけにもいかず、適当な日常を話す。
HLに居たのは前もってメールで「留学することになったHL。死ぬ」と短いながらもしてあるので居ても不自然ではないが、ライブラという特殊な所にいることは言っていない。
ただそれに関して聞いてこないのはお互い踏み込んではいけないのだろいうという見えない意識が働いているらしい。
そして再度お互いの連絡先を確認し合い、「死ぬなよ」と冗談にならない会話をして別れた。


「さて##name_1##、僕の質問に答えてくれるかな」
「…はあ」
「彼とはどういう関係?高校の同級生って本当?」
「弟の巻島祐介は高校の部活の仲間。三年の時留学で会ってないです」
「何か僕らに関して話した?」
「いいえ」
「お兄さんの方とは?」
「部活の大会応援きて知り合いです」
「…ふーん」
「ちょっと何尋問してるのよスカーフェイス。##name_1##っち困ってるじゃなーい」

影からコソコソと##name_1##とスティーブンの会話を聞いていた男どもをかき分けてK・Kが報告書をデスクに叩き付ける。
ライブラに##name_1##が入り、住居の件で相談したところ「じゃあ家にホームステイしたらいいわ。異文化交流よ!」と招いてくれて今現在##name_1##はK・Kの家にホームステイと言う形で住まわせてもらっている。英語能力はあまり高いとは言えないが、子供と一緒に教育テレビやアニメをみたり、一緒に勉強している。

「今日の商談の相手が彼女の知り合いだったんだよ」
「うっそ、##name_1##っち顔広いの?なんでそんな人と」
「弟高校部活仲間、待って、いま持ってくる」

支給されたスマホとは別に自分のスマホをバッグから取り出し、その画面をK・Kに見せる。その写真は高校最後の年にIHの表彰を撮ったもの。そしてそれとは別で3年だけで撮ったものに部活全体で撮ったものを順々に見せる。
疑われているわけではないが、見せた方が言うよりも早いと##name_1##は判断したのだ。

「大会か何か?」
「部活の大会、優勝」
「まあ、凄いじゃん##name_1##っち」
「私、メンバー違う、でも嬉しい。えーっと、リベンジ」
「リベンジ?」
「前の年、優勝違った。メンバーだったけど」

##name_1##はここで2年であった事件を話していない。そもそも話す理由がないし誰もその件を知らないからだ。##name_1##が体に不調を訴えることがない限り、誰も知ることはないだろう。義足を使っている限り、##name_1##が歩けないと言う事もない。

「K・Kさん、俺も見たいっす」
「僕もいいですか?」
「いい?」
「どぞ」
「ザップっちはいいの?」
「んなガキの写真見ても面白くねっすよ」
「あ、女の子」
「後輩、部活のマネージャー寒咲」
「はいはい、そういう話はあっちでやってくれ。##name_1##、これから彼との商談の時はよろしく」
「よろしく…?」
「知り合いなんだろう?こっちとしては君が居てくれると助かるって事だよ」
「あ」
「どうしました?」
「大学!」

講義始まる!とスマホを返してもらい、急いで事務所を出る。
そういう事は多々あるのでメンバーにしてみれば「またか」という印象でしかないが、それでもライブラという秘密結社なのだからもう少し落ち着くべきだと思われる。しかし実際しっかりと秘密結社として動けているのは少数なのは言うまでもない。