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切っ掛けというのは案外単純で短絡的なものだ。
交換留学といえば聞こえはいいが、そのシステムというより大学の交換留学という定義が少し変わっていた。
学科も学年も全てにおいてランダムで選ばれ、海外での勉強を半ば強制的にして来いと大学に命じられたのだ。
何ともおかしな話だろう。そもそも留学というのは自分がやりたいからするのであって、まして大学から強制されるものではないのだ。
英語が堪能でなければ、むしろ授業、講義でなければ触れることがなかった人間だ。それがいきなり英語圏に投げ出された不安と言ったらないだろう。
まして、このHLといわれるあの世とこの世が混じるところだ。

「あああああ!!!!」
「!?」

日常的に起こる事件も、日本ではきっと大きなニュースになるはずの目の前での出来事。しかしそれはここでは日常過ぎて恐らく新聞にも速報にもならないだろう。爆発なんて日常茶飯事のそれこそ数時間に一件は起きていると言っても過言ではない。ない日がないくらいに日常。
そして今日も爆発が起き、ついでに##name_1##は運悪く巻き込まれそうになったところをここHLへ来る数か月前に突如自分の本来のあったはずの脚を奪われ、化け物曰く「神々の義足」とやらを強制的につけられた。最初こそ少しは知れば猛スピードなんてこともあったが何とかコントロールを得、ついでに様々なことが出来るようになっていた。そのおかげで爆発から間一髪のがれ、ついでに空中に逃げることができたのだが。
普段であればその爆発に注目が集まるはずであり、それこそここで人が飛んでいようが気にならないくらいに色んなもの大小様々あるのだ。それが今、脚と同じ様な光を放つ二つの光を持つ少年と青年の間の人間に指を指されている。

「ザップさーん!あの人!!」
「すげーな、宙に浮いてやがる」
「感心してる場合かー!!義足!義眼と同じ義足持ってんだよあの人!!」
「なに!?」

本能的にヤバそうだと感じた##name_1##は何やら騒いでいるその二人組から逃げる。
そもそも##name_1##にとって逃走は簡単なことである。なにせその脚なら誰にも追いつくことが出来なければ、何者もその進路を妨害することも、そして捕まえるために伸びるあらゆるものを妨げることが出来るのだから。
何もない宙をまるで足場があるかのように走る。脚が動くたび、その先に小さな水文の様に小さな光の輪が重なってはすぐ消える。
ついでに言えばこの騒ぎで視界が悪い。少し現場を離れてしまえば後を追う事もできるはずもない。そう##name_1##は思っていた。

「いたー!!」
「!?」
「よう嬢ちゃん、大人しく付いてきな。痛い目を見たくないならな」
「どんだけアンタくずなんだよ!えーっと、少しお時間いいですか」
「ない。だれ、しらない」
「えっと、その脚なんですけど…えっと、同じでしょ?」
「ちがう。しらない。くるな」

小柄な少年がゆっくりと遠くでみた二つの光を再び灯す。どうやら##name_1##が先ほどみた少年のそれは彼の目玉だったらしい。同じような光を灯し、恐らくは仲間だから恐くないよというアピールなのだろうが、##name_1##に取ってみればどうでもいいこと。むしろ仲間意識を持たせてるあたり怪しすぎる。

「えらく断片的な喋りだな…」
「もしかしたら外国の人なのかも…英語圏じゃない。アジアっぽいですね」
「まあいい、捕まえればいいだけの話だろ。おいレオ、視界奪え」
「もっと友好的に行きましょうよ…もしかしたら未来の仲間ですよSS先輩」
「どっちにしろもう印象は良くねえよ」

何か話をしているうちに、と思った矢先。急に視界が反転、いや違うものになる。周り、うねり、そして入り混じる。自分の脚で立っているのか、それさえも判断できないほどにゆがむ視界に##name_1##は混乱する。

「!?」
「悪く思うなよ、嬢ちゃん」
「あーあ。ツェッドさんだったらもっと紳士的に事が運びそうなのに」
「うるせ!なら魚類と一緒の時にこのガキ見つけろよ」
「んな無茶な…」


次に気が付くと、見慣れない天井。すこしぼんやりと頭を整理していると、気を失う前にみた少年が覗いてきた。

「!」
「よかった、大丈夫ですか?」
「…だれ」
「俺はレオナルド・ウォッチ。君は?」
「………どこ」
「ああ、手荒な真似してごめん。でも君には一緒に来てもらわないと駄目だったんだ」
「…?バッグ」
「あ、はい。」

そのレオナルドが多少戸惑いつつも##name_1##に##name_1##のバッグを渡す。すると##name_1##は電子辞書を取り出して再度「ここはどこ、誘拐か」と英文を見せる。

「誘拐じゃない!…まあ、やったことは誘拐に近いけど……」
「金ない」
「だから違うって…えっと、君英語しゃべれない?」
「すこし」
「だよねー…」
「かえる。学校行く」
「学生さんか…」
「レオくん…」
「あ、ツェッドさん」
「ツェッド…?」
「あれ?##name_1##さん」
「え、知り合い!?」
「ええ、個人的に知り合った人ですけど…どうしてここに?」
「誘拐」
「え」
「違うって!」

レオナルドとツェッドが何かを話し、そしてその話を聞いたツェッドが驚いている。
##name_1##とツェッドはなんてことのない切っ掛けで出会い、知り合いになっただけの事だ。

「##name_1##さんは日本からの留学生で英語がまだあまりうまくないんです」
「どうやって知り合ってコミュニケーション取ってたんですか」
「辞書を片手に話し相手を」
「ああ…だから辞書持ってたんだ」
「授業はじまる、行く」
「日本語出来る人いましたっけ…?クラウスさん当たり出来ないかな…」
「僕が##name_1##さんを見ているので、レオくんは聞いてみてください。あのお二人のどちらかは出来ると思います」
「お願いします」
「##name_1##さん、少しお時間ください」
「学校、授業はじまる。できない、こまる。無職」
「…そうですね、学生ですもんね…レオくんすみません、##name_1##さんを学校に行かせてからじゃダメでしょうか。僕が責任を持って案内します」
「………それ俺に言われても」
「誘拐、犯罪」
「…………じゃあ、そういう事で。俺からクラウスさんかスティーブンさんに報告しておきます」

無事ではないが、講義には遅刻したものの普段真面目に授業を受けているという教授の厚意があって遅刻扱いにはならずに済んだ##name_1##。
その日の講義が終わるとツェッドに連れられ、再度##name_1##が誘拐犯と呼ぶ人物たちに会うことになる。