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「どうかしはりました?」
「え、あ、あの…」
「スタッフさんですよね?」
「あ、はい…そ、そうなんですけど」

京伏の控え付近でウロウロしているスタッフを不信に思って声をかけると、どうにも歯切れの悪い。
それに少しだけ訛りが京都らしい。以前京都に住んでいた人が懐かしさに寄ってきたのか?いやそれはないだろうと石垣も頭を傾げる。

「あ、あの…御堂筋翔って、います?」
「御堂筋くんの知り合いですか?」
「え、あ、…まあ…」
「彼ならさっきステージの方行くって言うてましてけど」
「え!そ、そうなんですか…」

明らかにしょんぼりと肩を落とすそのスタッフ。見るとボランティアと書いてあるあたり、同じ学生のボランティアスタッフ。御堂筋に何の用事があるか知らないが、少しだけ不憫に思える。

「御堂筋くんに何が用事ですか?なんなら伝言しますけど」
「あ、いえ…会えたらなって、思うただけですから」
「お知り合いですか?」
「何しとんのキミ」

後ろからヌッとあらわれた御堂筋に石垣は驚いて肩が揺れたが、御堂筋本人はまるで気にする様子がない。むしろ小さな声で「キモ」と呟いて、まるで見下したようにしている。

「翔!久しぶりやね、元気やった?」
「んな、なんでここにおるの!?」
「学校のな、自転車競技部の人に頼んでスタッフにさせてもらってん」
「み、御堂筋くん、知り合いか?」
「うっさいわ!ちょい、こっち来ぃ!まったく頼んどらんわ」

そのままスタッフの腕を引っ張っていく御堂筋。石垣は「ロードちょっと方しいて」と言われたので、呆気にとられながらその後ろ姿を見送る。たぶん、いや、まあ知り合いの様子だったから大丈夫だとは思う。あのスタッフは御堂筋の下の名前で呼んでいたわけだし。と石垣は自分に言い聞かせた。



「聞いとらんけど!」
「メールした」
「見に来るってだけやろ」
「だから、来たやない」
「スタッフとは聞いてないわ!」
「だ、駄目やった…?」
「……ダメやない。驚いたわ、馬鹿」
「姉さんに向かって馬鹿とは何事や、翔」