「あれ、##name_2##さんだ」 「久しぶりだねー」 「どうしたんですか?」 「泉田くんと相談してるの」 部室の机で二人が何をしてるのかと覗いてみると、レースの予定が書かれた色んな紙が乗っている。##name_2##は少し前まで部活のマネージャーをしていて先日引退をして今は受験生として勉学に励んでいる。 「そっか、今まで##name_2##さんが全部やってたもんね」 「そうなんだよ。だから##name_2##さんに聞いて予定の立て方とか教えてもらっているんだ」 「これはさすがに1年生じゃあね…泉田くんも大変だよね、部長で主将で予定管理まで」 「じゃあ、オレやろっか」 「……個人的には黒田くんを推薦します、私」 「えー。うん、でもユキちゃんの方がいいかも」 今まではそういう管理は##name_2##が一括に請け負っていたし、部活の備品管理や誰が休むとか早退したとかの連絡まで管理していた。なので福富は自分の仕事だけに集中していられたし、近寄りがたい雰囲気の時には##name_2##がフォローをしたりした。 「そうだ、黒田くんを私の後継者に任命しようではないか」 「じゃあ呼んできます、ユキちゃーん」 バタバタと足音を立てて探しに行く葦木場に二人は笑う。そして今まではなしていた内容を相談し始める。いつどのレースに誰が参加するか、こっちのレースはイベントに近いから盛り上げ役、これは次のレースの成績に関係するから…と##name_2##は次々と今までの経験から言っていく。 「お疲れ様です##name_2##さん、何か用事ですか」 「お疲れ黒田くん、まあなんていうか、君を私の後継者に任命しようと思って」 「え」 「というのは冗談で、主将に全部任せるのは大変だから副部長の君にもと思って」 「…はい」 備品の管理やその他は一年生に伝えてあるから問題はない。しかし予定となると1年では難しいところがある。だからと言って部長に全部任せることもできなし、監督だってそこまでの管理は今までしていない。 「マネージャーがいると良かったんだけど、ごめんね、私の力が及ばないばかりに…」 「いやいやいや、そんなことないですよ」 「私が1年の時は3年の部長副部長と私で予定組んだりしてたから、それに戻るって感じなんだけどね。その時から私が任されるようになったし、先輩から聞いてやりくりしてたから」 「ということは、福富さんとか東堂さんは予定の組み方を知らないんですか?」 「多分知らないと思うよ、私が全部やってたし。福富くんとは相談してたけど、私メイン」 それじゃあ説明はじめます。と##name_2##は案内の紙をもって三人の前で「これはアレで、それはどう」と始める。 確かに今まで##name_2##がレースの説明をしていたし、イベントレースだから参加は自由でレースに馴れたい人は参加してね。とかこれは成績に関係するから出る人選考してとか説明をしていた。参加する相談だって受けてくれたし、どんなコースかも知っていることが多かった。 「…という感じ。わからない事とかあったら私に聞くよりも運営の方に連絡した方が間違いないかな」 「##name_2##さん、よくこんなに覚えてますね…」 「慣れだよ、慣れ」 「ちょっと相談なんですが、1年におすすめのレースは」 「それだと来年の春のレースかな、デビューレースにはいいかも。ただそれは個人登録だから学校としてはやってないかな」 「学校に案内こないんですか?」 「高校の部活で初めてって人には私が個人的に声かけてたから。あとは、そうだな…荒北くんが最初に出たレースとか?」 えっと。と言って過去に出た記録ノートをさかのぼって見つけ、そしてそのレースの名前を挙げる。 「荒北くんは最初この部活じゃなかったからちょっと時期はずれちゃう、かも?」 「えー、荒北さんて実は初心者だったの?」 「うん、福富くんの自転車で練習してたんだよ」 「…それで、もうレギュラーとってたんですか?」 「私追出しの時に言ってなかったっけ?」 曖昧に笑う三人を気にすることもなく##name_1##は途中から部活に入った人は個人的なレースがいいかもね、雰囲気掴むためにも。とアドバイスをしている。 「まあ、こんな感じかな。そんなに大変じゃないけど、一人だとキツイから黒田くんお願いします」 「はい!ご指導ありがとうございます」 「忙しいところすみませんでした、ありがとうございます」 「##name_2##さん帰っちゃうんですか?」 「シキバ!お前な」 そんなことしてる暇があるなら練習しろ!と叱る黒田に葦木場は「だって##name_2##さんがせっかく居るのに」と駄々をこねる。 ##name_2##と葦木場はちょっとしたことから仲が良いというか、マネージャー業を少しだけ一緒にした仲で、ひとつ下の学年では一番仲が良い。良いと言っても懐いているという程度だが、よく手伝いをしてくれた。 「あ、そうだ。今日オレの誕生日なんですよ」 「そうなんだ、おめでとう」 「はい」 「そんな葦木場くんには…えっとね…そうそう、あったあった」 カバンをあさって##name_2##が出したのはお菓子の箱。いわゆるポケット菓子というか、可愛いパッケージで「期間限定」と書いてある。何かと菓子類を持っていたのは新開が##name_2##によく「なんかない?」と聞いていたのを見ていたし、##name_2##も聞かれるたびにため息をつきながら渡していた。 「今朝コンビニで買って、まだ開けてないからこれプレゼント」 「え、いいんですか?だってこれ##name_2##さんの」 「いいよ、また買うし。こんなのしかないけど…」 「よかったなシキバ。いっつも新開さんの菓子見てたもんな」 「え、そうなの?言ってくれればよかったのに。そうだ、今もあるからみんなにもあげるね」 今度はポーチが出てきて、そこから飴が出てくる。 今これが人気なんだ。とカスタードプリンやキャラメルといった甘ったるいパッケージがみえ、ちょっと困惑している。 「これは女の子用かな。で、こっちの方が皆にはいいかも」 「あ、これこの前もらったやつ」 「そうそう。新開くん対策なんだけどね。これも私好きなんだ」 大したものじゃないけど、食べてくれたら嬉しいな。と飴玉がコロンと揺れた。 |