▼ 無双OROCHI2/まぜこぜ 大神まざってます 白い狼、なんだと思う。 森で食料調達の為に仕掛けた罠を見に行った時のことだ。 その大きな犬、ではなく狼はいた。できれば穏便に、といえば聞こえはいいが関わりたくないから隠れて息を潜め、その狼がどこかへ行ってくれるのを待つ。動物相手にそんなことは正直あまり効果はないのは知っている。それでもこちらには敵意はないからどこかへ行ってほしい。それにこっちが逆に餌になることもあるのだ、どっちにしろ警戒は怠れないとういうことなのだけれど。 「……人懐っこい、んだ」 息を潜めて、その狼が過ぎるのを待ったが、それはどうも狼には通用しないでその狼は大きな躯体で襲い掛かってきた。しかしその大きな牙は首元に刺さる事なく、大きな舌がベロベロと私の顔を舐めまくる。 「ちょっ…や、やめ…や」 大きな尾がぶんぶんと揺れ、喜びが身体全体で表現しているのはわかる。 しかしこの狼にこれほどまでに歓迎される覚えはない。それに生きた狼なんて近くで見たのはこれが初めてだ。 歓迎してくれるには悪い気はしないが、こうも舐められては気持ちが悪い。まるで味見をされているみたいだし、獣臭い。 「やめて!…もう、なに、この狼…狼?犬?大型犬?犬…っぽくない顔つき」 グイと下あごを持ち上げて、強制的に引き離すと狼は鼻をきゅうと鳴らすが知った事ではない。むしろいわれのないセクハラ、ある意味強姦だ。いや、暴漢に襲われたとういう感じだ。「まて」と少しきつく命じると狼はすこし恨めしそうに座って待つ。意外と頭が良いのかもしれない。 その隙に襲われて乱れた着物を簡単に直す。泥がついてしまった、しかもこの狼の足跡つきだ。これは孫市に笑われる。犬に襲われてやんの。暫くは笑いのネタにされる。 「で、狼さん。私に何か用事でもあるの?生憎私は用事ないけど」 まあ、我ながらおかしい事をしているのはわかっている。狼に話かけて何が面白いかと聞かれれば、自己満足の他ない。動物が喋るはずがないのだ。 「なんだ、犬なんて連れて。##name_1##犬なんか飼っていたか?」 「私の犬ではありません。罠を見に行ったらいて、……なぜか懐かれました」 「ほー。デカイな、どっから来たんだろうな。ん?でもこいつ、犬にしては…なんか犬っぽくない顔しているな」 ワシャと頭を撫で始めた司馬昭殿に狼は鼻をフンと鳴らして満更でもないといった感じで尾はほんの少し揺らす。 しかしこれだけの大型犬、狼を恐がらないで頭を撫でるとはそうとう肝が据わっているに違いない。私なら絶対に触らない。噛み付くかもしれないし、なにより大きな動物の力は馬鹿にならない。 「恐らく、狼ではないでしょうか」 「狼か…こんな所にもいるんだな。にしても白だなんて珍しいな」 「毛皮にしたら高く売れますでしょうか」 「やめとけ、この狼固まったぞ」 まるで言葉がわかるみたいだな。と面白そうに笑う司馬昭殿。見れば確かにショックを受けたように狼がこちらを見ている。 またワシャリと頭を撫でて司馬昭殿は「じゃあな、狼。##name_1##に毛皮にされるなよな」と何処かへ行ってしまった。あの様子だと仕事から逃げてきたところに出会ったのだろう。 後で王元姫殿に見つかって叱られなければいいのだが。まあ私の知った事ではない。むしろ見張りのアルバイトが入るかも知れないと密かに期待しておこう。そういった雑務は直接私の懐だ。 「さて、狼さん。君は一体何者で、私について来るのか」 案の定答えはない。 お供で使えれば文句はないが、白では目立つ。雪があるなら話は別だが、森で使うには目立つだろう。 あと今更だが狂犬病とか大丈夫なのだろうか。本当に今更で恐い。 まあ、ここには幸い仙人がいるからそう言ったことは安心していいだろう。今は、だが。 「…、もしや、阿部清明殿の式神とか」 「私がどうかしたのだろうか」 「!」 驚かせたかな。と背後から声がする。 「こ、これは失礼いたしました。この狼があまりに人懐っこくて。もしや阿倍清明殿の式神ではと思いまして」 「狼…?」 振り返れば何かを含むように笑っている陰陽師。 私がいう狼を見て一瞬驚いた顔をして、そしてまた一瞬困った顔をしてからいつもの整った顔に戻る。 「いや、私の式神ではない。その狼、大切にしなさい」 「え」 後悔はしない、むしろ大切にしないと後悔する事になるはずだ。 まるで忠告のように行って姿を消してしまった。 「本当に狼さんは何者なんだろうね、あの阿倍清明殿があそこまで言う狼さん」 湿った鼻の先をツンと指先でつつくとくすぐったそうに頭を傾げる。 動物は嫌いではないが、大型動物はなれないとやはり恐い。それに身体に見合うだけの餌が必要だ。 さて、孫市に相談だな。と思っているとまた犬に襲われた。セクハラ的な意味合いで。 |