かつてこの世界は巨人という生物が支配していたらしい。 なぜらしいかといえば、この世にはもうその巨人という生物は存在していないからだ。 なんてファアンタジックなのだろうか。まるでおとぎ話の世界だ。 だいたいその巨人だって本当に居たかさえ誰も知らない。ただ昔の、それも数千年も前の文献に残っているだけの存在。居たという証拠さえない。だって巨人の化石ともいえる証明がないのだ。恐竜でさえある化石がない辞典で空想の世界。 まあそのいるかさえもわからない巨人の話はもういいだろう。 巨人なんて所詮は想像のものでしかないわけで。 それより今は私の目の前の小柄な男の人の話をしようと思う。 「で、お前が俺のマスターかガキ」 「が!?」 「さっさと答えろ」 おかしい。これは実におかしいぞ。 私はその巨人殺しのプロフェッショナルと名高い戦士の聖遺物を媒介に召喚をした。 そうだ、こんな小柄な、目つきと言葉使いが悪い男が。 つい最近その戦士を題材にした映画が公開されて私も見た。英雄として名高い彼はすらりとした美形の男性が演じ、紳士で、いかにも英雄だった。 ああ、失敗だ。これはまさしく失敗である。これ絶対違うし…いや?でも文献だと小柄な男性だっけ?まあ巨人自体いたかも不明な存在なのだからあの英雄もいたのかさえわからないわけで。 「答えろ、俺は気が長いほうではないんでな」 「ちょ、そんな刃物無向けるのやめ…!」 「なら答えろガキ」 「はいマスターです!私が貴方を召喚しました!!」 まるで大きなカッターの歯だ。そんなブレードが私の首に向けらていた。 問いに吼えるように答えると彼は鼻をフンと鳴らしてその刃をしまう。ブレードがあるということはセイバーなのだろうか。 なんとなく冷静な雰囲気を出してはいるが、正直心臓はバクバクで半分泣いている。 「…っち」 「え、舌打ち!?」 「何が悲しくてこんなガキがマスターなんだ」 「ガ、ガキって…」 「ところでお前は両手を上げるのが好きなのか?」 なに言ってんのこいつ。と思ったら確かに両手をあげている。これは現代における敵意はありませんよー。なのだ、まあ言われたからには下そう。 おずおずと手を下すと、彼はもう私には興味がないのかただ召喚に使った部屋を眺める。 「あ、あの」 「あ?なんだ」 「サーヴァントのクラスは…」 「見てわからねえのか」 「もしかして、セイバー?」 「それ以外に見えたなら削いでいたところだ」 「え、何処を」 「うなじ」 わーい。なにこのサーヴァント超恐い。チェンジで。 一瞬だけ頭の中が花畑になり現実逃避をしてしまった。 まあセイバーという最優クラスであるサーヴァントなのだから、駒としては一番だ。 ただ問題は英雄リヴァイではなかったということだろう。 「ここはお前の陣地か?」 「え、まあ…」 「下手くそな召喚陣だな。それにこの部屋汚え、掃除はしてんのか」 「普段は使ってない部屋を借りたから…」 「借りる?」 「ここは知り合いの人の家で、この聖杯戦争の期間借りるの。貴方を呼んだ聖遺物もその人が用意してくれたんだけど…とんだ偽物だった」 偽物と言う言葉に反応したのか、その足元にある聖遺物を手に取る。古いから状態はあまりよくないが、生きている人間が触るのとは別だから触ったからといって腐食が進むわけではないだろうからいい。 あとで文句をいわないと。いや、厚意で用意してくれた聖遺物だ、文句を言うのはお門違い、それなら自分で用意したらよかった。 「…懐かしいな」 「え?」 「立体起動装置、俺のだ」 「それ、リヴァイっていう人の使ってた奴らしいけど」 「本人が懐かしい言ってんだ、当たり前だろ」 「セイバーはリヴァイって人知ってるの?」 「お前の目は節穴か、目の前に居るだろうがガキ」 それを聞いて私が叫んだのは言うまでもなく、そしてそれに関してセイバーに鬼のような形相で睨まれたのも言わなくてもわかるだろう。 まさかこんな人相が悪くて口が悪くて小柄な男が英雄と名高いリヴァイだなんて。 ああ、そうか。昔は小柄だったからあれだ、巨人も今の時代にしたらそんなに大きくないんだ、そうでしょう? |