ついつい | ナノ
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2016/09/20 15:16

冬木だ。
それが一番最初に思った事である。
見慣れた風景のはずなのに違和感がある。それはもしかしたら燃えていた冬木があったからかもしれないし、これが夢かもしれないという不安があるからかもしれない。
頬をつねってもいつもの通り痛い。そこの塀を触ってもコンクリート特有の酷くざらついた痛々しい感触。
夢ではない、でも住んでいた冬木とはなんだか違う。
そして何より人はいるが目に生気がない、というのだろうか。言峰神父のような何とも言えない、不思議な目をしている。
声を掛けても反応はなく、ただただそこに居るだけ。

「ここ、冬木じゃ……でも私、レイシフトなんて」

歩きながら独り言がこぼれた。
そもそも##name_1##はレイシフトをしていない。禁止されているわけではないが体質上血が流れる争い事が苦手であり、それが原因で体調を悪くすることがしばしばあった。
それがあり、レイシフト自体してくれという要請も少ない。そのはずなのに、どうして。

「…あの、すみません」
「え、あ、はい」
「あの…この辺りに詳しいですか?」
「え?あ…いえ」
「そう…ですか」
「どうかしたんですか?」
「…こんな事言うのも変な話なんですが、気が付いたらここに居て。でも、知っている場所なんですけど、でも私が知ってる土地とは違って……困ってしまって。人に聞こうと思っても誰も話を聞いてくれなくて。それで話し声が聞こえて、声を掛けたんです」

高校生くらいの女の子、金髪の青年二人、そしてプロトそのものの青い髪の青年。
その4名は##name_1##の話を聞くなりこそこそと話を始める。
はたから聞けば##name_1##は病人だ。
気づいたらここに居た、誘拐か記憶喪失。
知っているけど知らない、精神病の類か。
そんな話をしているのだろう。##name_1##だって他人がそんな事を急に言えば思ってしまうかもしれないし、交番に案内するだろう。

「すみません、ご迷惑をかけて…もう少し歩いてみます、迎えがくるかもしれませんし」
「あの、それならしばらく一緒に行きませんか?私達温泉を探しに来て、同じように様子がおかしいなって………」
「温泉?」
「え、あ、はい」
「冬木に温泉なんてあったかしら…あったとしても、そんなに有名じゃないと思うけど…観光かなにかで?」
「招待状を彼女が貰って」
「それで4人でいらしたのね」
「で、あんたは一緒に行くのか行かないのか。どっちなんだよ」
「ランサー、そんな言い方は」
「……じゃあ、お言葉に甘えていいかしら。正直一人で不安だったの、話し声が聞こえて安心して」

それから簡単な挨拶を交わせば案の定サーヴァントだった。
セイバー、アーチャー、ランサー。それが通常の名前ではないのは##name_1##も知っているし、何よりクラス名だ。
##name_1##の感覚が少しおかしいという自覚もある。知らないのであれば別だがサーヴァントという存在を知っていてサーヴァントがいて恐怖心がないのだから。

「##name_2##さんはここの人なんですか?」
「だと思うんだけど…なんだか知っている冬木とは違って…」

自分でもおかしい自覚はあるんだけど…。と続ける。
頭がおかしい人間だと言われても反論できないだろう。これでは本当に病人である。
もしかしたらだからこそ彼女らは##name_1##を不憫に思ったのかもしれない。

しばらく歩いていれば何故か花札で勝負を仕掛けられるし、若い雰囲気の見知った人が出てくる。
いつもの##name_1##であれば混乱しているところだが、レイシフトのおかげで色々慣れてしまっている節があるのでなんとなく察した。察してしまえばこの違和感も納得がいく。
ここは恐らく第4次聖杯戦争の辺りなのだろう、と。

「君、強いんだね」
「ええ、こういう遊びは慣れているし運が良いの」
「羨ましいな、運が良いなんて」
「それに謎がわかってきたから」
「それって…目が死んでいる事ですか?」
「目が死…いや、そうじゃなくて違和感の方」
「貴様何か知っているのか」
「ちょっとだけ、わかったの。でも信じてもらえないだろうし…それに迎えが期待できるかが問題かも…」

ここは##name_1##のいた時代ではない。##name_1##がいた冬木は燃えたのだ、ここは過去で##name_1##の居場所はない。
何かしらのアクシデントがあって飛ばされてしまったのだと思えば少し気が楽になる。そういったトラブルは初めてではないし、何より敵サーヴァントがいるわけでもない。居たがそれはそれ程問題ではなかったし、##name_1##を襲う事もなかった。
今頃探してもらっている頃合いだろう、##name_1##と契約しているサーヴァントが騒いでいなければいいがという別の不安があるが。

「##name_1##!!テメ、いい加減勝手にどこか行く癖直せ馬鹿!!」
「!」
「な、」
「ランサーに似てる人!?」
「敵か」
「勝手じゃないよ!気が付いたらここだったんだから、今回もドクターが悪いと思います!!あと敵ではありません、私の迎えです」

キャスターのクー・フーリンがゼイゼイと息を切らしている姿が。
ランサーの方であれば恐らくそんな事はないのかもしれないが、何せクラスがキャスターである。その辺は不得手なのかもしれない。

「つかここ冬木じゃねえか」
「皆さん今までありがとうございました、迎えが来たので私はこれで失礼します。本当にありがとうございました」




以上思いつかない!