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2013/03/17 22:32

「…手伝います」

「え、あ…いいです。小さかった頃はお願いしないとでしたけど、今は大丈夫です。ありがとうございます」


##name_1##の腕には大量の書物。端から見ればその腕には無理ではないかと思えるほどの量である。下手をしたら肩を脱臼してしまうのではないかとマスルールは心配したのだ。


「…でも、」

「マスルール、私はもう元に戻ったので一人でだいたいの事はできます。心配しないでください。それにマスルールの仕事に戻って大丈夫です」

「……姫の、護衛が今の俺の仕事なので」

「ではお父様にもう平気なのでマスルールを通常の仕事に切り替えてもらいましょう。今までありがとうございました。とても助かりました」


マスルールの目の前の女性はそう答える。
元は小さくて幼くて、守ってやらねばと思っていた。それはシンドバッドが養子として迎えたからだけではなく、弱々しい存在だったから。それが今、白龍のジンであるザガンのおかげで元の姿に戻り、庇護を受ける必要が無くなった。
しかしその書物の量はマスルールには見逃せるわけもなく、書物を奪って歩く。


「……姫は、小さい時はあれほど父と呼ばなかったシンさんを父と呼ぶんすね」

「……まあ、子供なりの意地ってやつです。父親じゃないのにお父様と呼べないという。小さい時は精神も子供よりなのでどうしても。今の私はそこまで意地をはる事もないので。マスルール、あれも持って行きたいので待っていてもらえますか?」

「はい」


あれほど小さかった背が大きくなった。
抱き上げて移動もしたが、今は嫌がられるだろう。もう女性なのだと##name_1##の後ろ姿を見てなんだか少し寂しい気持ちになるマスルール。


「…乗せてください」

「一冊くらい持たせて。じゃあ戻りましょうか、お父様の部屋」

「まだシンさんの部屋で勉強なんすか?」

「実はジャーファルにお目付役を任命されて…」

「……ああ」


書庫から目的の部屋まで歩いてどの位か。
後ろからあの三人組と、##name_1##が元に戻ったことで現れた少年が声をかけてきた。その少年は##name_1##の使い魔だというが、どこからどうみても少年にしか見えない。


「マスター、また勉強ですか?」

「まあね。戻る手だてがまだ探せてないから。そっちは…なにしてたの?」

「僕は街に行ってました」

「僕はヤムさんの所ー」

「俺も師匠と修行を」

「私も修行を」

「あ、ごめんなさいモルジアナ…マスルールも言ってくれたらいいのに」

「いえ、午後から稽古をつけてもらう約束なので」


本当に?と言いたげな目で##name_1##はマスルールを見る。
その目にマスルールは黙って頷く。嘘ではない。午前は元から##name_1##の為に使うように命じられていたのだ。


「マスター、それよりお昼ですよ」

「この書物を部屋に運んだら行く予定。アーチャー、食べるの?」

「##name_1##…さん、それ酷くないか?アーチャーだって食べさせてやれよ」

「ああ、勘違いされると困るから言ってておきますね。僕はマスターから魔力供給があれば基本的に食事は必要ではないんです」

「…そういえばアーチャーさんは##name_1##さんの使い魔、なんでしたね」

「使い魔という表現は好きではないので、サーヴァントで」

「ああ、だから##name_1##さんと同じ様なルフなんだね」


そうなんです。と笑いあうアーチャーとアラジン。##name_1##からしたらルフという存在が魔力の関係だという事しかわかっていない。もっと深く理解をしたらいいのだろうが、そこまで深くしても今後使い事が無いだろうと##name_1##はだいたいの存在の把握でそれ以上を止めたのだ。


「あんまり周りに迷惑をかけないこと。いい?」

「はーい。彼と一緒にしないでほしいところですが」

「彼?誰だい?」

「もう一人の僕と言いますか。そのうち会えますよ、彼が出ると大変だと思いますけど。多分あの人の気に入りませんよー」

「君だって気にくわないくせに。じゃあ私行くから、いい?アーチャー、迷惑かけないでよ?いい?」


##name_1##に口うるさい程に言われ、アーチャーは「はーい」と返事をして三人と姿を消した。
一つ大きくため息を付いた##name_1##にマスルールが「大丈夫っすか?」と声をかけると「大丈夫、平気」と帰ってきた。
アーチャーと##name_1##の関係をみると、まるでシンドバッドとジャーファルである。
##name_1##がまた歩き始めるとマスルールもそれに従いついて行く。


「おお、##name_1##…と、マスルールも一緒か」

「…ッス」

「お仕事の進み具合はどうですか?」

「……オレの可愛い娘が…ジャーファルみたいに」

「あら、お父様。きっとジャーファルもしっかりお仕事をしていただければ煩くないと思います。あとお願いがあるのですか…」

「こんな時にお父様…小さいときには言わなかったのに……くっ」

「ではシンドバッド王」

「お父様で」

「…………」

「…実はマスルールに私の護衛と言いますか、私の相手の任を解いてほしいのです。もう書物を運ぶのに誰かの力を借りないと出来ないという事はないので」


ああ、それもそうだな。とシンドバッドは頷く。
小さかった##name_1##は誰かに守らせなければいけなかったが今はそれも必要ない。この宮殿の中であれば安全だ、それに子供のように最初から最後まで世話を焼いてやる必要もない。
シンドバッドはマスルールに「ではマスルール、お前は以前の仕事に戻れ。詳しい事はジャーファルにでも尋ねればいいだろう」と任を解く。それに少し残念そうな顔をしたマスルールだったが、黙って頷いた。


「なんだ、残念そうだな」

「…あ、もしかして私のお昼寝の時間ね」

「昼寝…ああ、##name_1##の昼寝に付き合うあれか。いいな、オレも一緒に寝たい」

「寝ません。もう昼寝の必要はありませんので」


悔しそうに唸るシンドバッド。まるで構わない顔をして書物のチェックを始めとた##name_1##の横に控えるマスルール。最後の勤めと言わんばかりに構えている。


「…欲しい書物はあったか?」

「まだ見つかりません」

「……そうか」

「姫こちらにいらっしゃい……ましたね」

「ジャーファル、お父様ではなく私に用事ですか?」


用事というところまでいきませんが…と##name_1##とジャーファルが話し始める。
その姿にシンドバッドが大きな溜め息を漏らすと、何故かジャーファルに睨まれた。



――――――
普通に短編くらいの長さになった(私基準)

補足
主を姫と呼ぶのは名残
主が呼び捨てに呼ぶのは「姫に敬称付けていただくなんて恐れ多い…今まで通りでお願いします本気で」と言われたので。
前回が子供Ver
今回が元通りVer
あと言葉遣いが丁寧(堅い)のは目上の人だから。
だからアーチャー(ギルガメッシュ)には通常運転。
気が向いたら青年体ギルガメッシュもしたいねーなんて。
しかし長いな、これ。

青年体になったら迷わず魔力供給絞ってそうである(笑)
シンドバッドとかに絶対絡むなー絡むなー(2回目)