2013/03/17 16:00
部屋に見合った扉が小さく開く。
視線をそこに移すが人の姿はない。風のイタズラかと思ったが、頬をなでる風もない。その視線を下へと移動させれば子供が一人。その小さな腕には書物。
「どうした?父になにか用事が?ん?」
そう子供に問えば子供はその小さな頭を左右へ振り、「ちがいます」と返す。
「ジャーファ」
「ジャーファルに用事か?」
「はい。今日の課題を終わらせたので、提出です。王様の所にいませんか?」
「課題が終わったのか?偉いぞ。父に見せてみなさい」
子供はシンドバッドと書物を交互に見て、頷いて小さな声で返事をした。扉をきちんと両手で閉めてパタパタと小走りに駆け寄って書物を差し出す。
「王様はお仕事終わりましたか?」
「うん?いや、まだ終わりが見えなくてな……」
「シン…おや、姫。どうしてここに?」
「ジャーファ、課題終わりました。提出です」
おや、それは素晴らしい。さすが姫。とジャーファルはにこやかに褒める。そしてその笑顔のままに顔をシンドバッドに移し、「シン、姫は課題終わりましたが……?」と違う意味での笑顔になる。
その笑顔にビクリと肩を振るわせるシンドバッド。そんなシンドバッドの様子に##name_1##は黙って知らないフリをした。それは##name_1##がまだ仕事が終わっていない事を知っているからである。
「いやー、##name_1##が来てな…」
「姫、課題を持ってきたのは何時ですか?」
「え……っと、」
「姫、正直に教えてください。それとも姫は嘘を付くような子なのですか?」
ジャーファルに迫られ、困惑する##name_1##。困ってシンドバッドを伺い見るが、諦めて##name_1##は「さっき、来ました」と正直に話す。
「シン!姫に嘘を付かせないでください!姫、嘘を付くのはいけません。今回は見逃しますが、次はお仕置きしますからね」
「は…はい。ごめんな、さい」
「##name_1##は悪くないぞ!これは…」
まったくもってその通りなのだ。##name_1##はなにも言っていないし、シンドバッドの嘘に加担もしていない。
小言というよりもお説教になり始めたジャーファル。このままだと自分にも矛先が向くかもしれないと##name_1##はジャーファルの腕を引いて一旦その熱を解いて「課題」と声を出す。
「ああ、すみませんでした姫。しかし何故シンの部屋に?」
「ジャーファは忙しいので、ここに来たら会えると思いました。必ず王様のところ来ます」
「捕まらないから捕まるところに来たのか…父の為じゃないのか…」
「では後で見ておきましょう。姫はこの後どうするのです?ご飯は食べましたか?」
「ピスと食べました。これからシャルルのお稽古の見学をして、ヤムライの所に行きます」
「え、ここに、父と一緒に居てくれないのか?」
「王様、お仕事終わってないです。ジャーファだけじゃなくて皆さん困ります」
至極当然の事を子供の##name_1##の口から出るとジャーファルの口から出る小言以上の威力がある。
そんなシンドバッドの反応をまるで無視したジャーファルはうんうんと頷き、気をつけて行くのですよと笑顔で答える。
「今日はマスルールのお供はないですから、あまり遅くならないように。ヤムライハは時間を忘れる癖がたまに出ますから。時間になったら姫が教えて差し上げてください」
「はい。ジャーファもお仕事し過ぎないでください。王様は頑張ってください」
子供らしからぬ##name_1##の言葉に二人は言葉を失いかけたが、ジャーファルは「姫の応援もあったことなので、シンは仕事をやりあげてください」とジャーファルに冷たい笑顔で言われた。
―――――――
主は人名の最後だけ言わない謎の愛称で呼んだらいいなーとか。
子供特有というか、なんというか…
ジャーファルはジャーファ
シャルルカンはシャルル
マスルールはマスルー
ヤムライハはヤムライ
ピスティはピス
とかね。
アリババは…アリババ?
モルジアナはモルジア
アラジンはアラジン?
そこまで考えないと言われればそれまでだ!