domani | ナノ



  Come posso aiutarla?


「うわぁあああぁぁん!!!」

Ciao.こちらは沢田家嫡男、ナマエです。
麗らかな休日の昼下がりをお伝えします。BGMは、泣き声と破壊音。

「今日も快晴だなー」

防音と幻覚、その他諸々の改造を経たマイルームで寛ぎながら、手に持ったアイスティーを掻き混ぜる。開け放した窓から聞こえた音に推測すると、牛柄の小さな雷が来た。
……まあ、先週ボウィーノのボスから丁寧な手紙を頂いたんだけどね。近々こっちに送るから、と。


あの子の周りに、着実に人が増えている。
良い人間も―――悪い人間も。
机に広げた調査報告の隅、"Veleno scorpione"の文字に眉根を寄せた。

「毒サソリ、ね……」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

いやー、日本は暑い。
コンクリートジャングルや高層ビル群など、都市部は特に近代的に進化しすぎていて。たまに自然の森や林、湖などが恋しくなる。うん、緑は大事。
さわさわと流れる草木の擦れる音に耳を傾け癒されながら、目的の人物を待つ。


程なくして、目の前で止まった1台の自転車。
『炎』的にも、間違いない。

閉じていた瞼を押し上げて、ゴーグルの奥に笑いかける。

「久しぶり。Veleno scorpioneヴェレーノ スコルピオーネ
「…… Quetzalケツァール、何か用?」

帰って来たのは冷たい声。彼女にとって、彼以外はその辺の草と同等なのだろう。それがよく判る声音で、ますます笑う。

「あははっ!いやー、聞いてたけど話通りだね」

目の前の彼女が不快そうに、懐へ手を伸ばす。
隠された翡翠はとても冷たい色をしているのだろう。

「いくらボンゴレの鳥だろうと、これ以上話を―――」
「ねえ、毒サソリ?」

一歩、近付いて。
一瞬で間近に迫った俺に驚いたのか、固まった彼女の手に在る、黒光りするモノに指を添えて。

「この先、『沢田綱吉』を"殺 す"なんて………思わないでね?」
「!!っあんたに何の関係があるの?!!」

弾かれた様に叫びながら、銃口をこちらに向ける。
わー、怖い…―――なんちゃって。

「んー………。大事な弟、だからさ」
「!!」
「今度が在るなら、『そう』なるのは君だよ?」

握り締めた鉄の塊は、灰となり吹き抜けた風に儚く散った。
茫然と立ち竦む彼女に微笑む。出来るなら無駄な血は流したくないんだ。
"今"は『沢田ナマエ』なわけだし。
―――あ、そうそう。

「また会ったら……次はケツァールじゃなくて、ナマエって呼んでね。―――ビアンキ」

微かに震える彼女に肩を竦める。
怖がらせ過ぎちゃったかな?…けど、これくらい言わないと。
もしあの子が悲しむのなら、危険に晒されるのなら、それを未然に防ぎたい。あの日の二の舞にならないように。
―――その為の力なら、もう手に入れたでしょう?


「さーて、」

忠告はした。彼女への用は済んだ。その他の方達も相手にしなくちゃいけないし……人気者はツライねぇ。
制止の声が掛からないのを良いことに、全速力で駆け出す。

「…平和だ、といいな」

今はまだ、何も知らずに。
あの子は笑っていてほしい。―――陰で蠢く、血と硝煙の香りに溺れずに。毎日、毎夜送り込まれる暗殺の意思など、お伽噺だと。

今日の お 客 様 は何名様だろう ね ?

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