暗闇の中、目を凝らし見渡しても動くものは何もない。
八左も小平太も目が冴えてしまったのか、息を詰めて音の正体を探っている。
カリカリカリ…
「部屋の外?」
小平太が呟いた時、
カリカリカリ…がりっ、ガリガリ…
軽く引っ掻くだけだったような音だったのに、明らかに力を込めて引っ掻いている。
「「…」」
無言の室内に外からガリガリと音が小さく、けど確かに響く。
ガリガリッ…ガリ…
「や、……やや子…わた、しの…」
聞き覚えのある、というか先程まで耳にしていた掠れたか細い声が部屋の温度を下げた。
「ちょうだい」
ガリガリと引っ掻く音をBGMにはっきりくっきりと聞こえた女の声
「ちょうだいちょうだいちょうだいちょうだい私の子ちょうだいちょうだいやや子をちょうだい作らせてちょうだい私の子をつくらせてちょうだいちょうだいちょうだいちょうだいちょうだいちょうだいちょうだいちょうだい」
息継ぎもなしに女は言い続ける。
大声ではないが、途切れずにまるで呪文のような女の声が空間を支配する
長次が目を覚まさないのが不自然なぐらいだ。
「小平太…に付いて来やがったか…」
「殴ったのも埋めたのも効果なかったみたいだな…」
舌打ちをして頭をガリガリと掻く。
俺と同じく上体を起こす二人。青褪めて言葉を無くす八左ヱ門は勿論、小平太も眉間に皺を寄せ
なす術がないようだ。
「ど、どうするんですか…?子供を作らせてくれ、だなんて…」
引きつった顔で八左が怖ず怖ず尋ねる
俺は小平太に視線を向けて顎で「行ってこい」と示す。
小平太は無言で首を横に振りまくった。
「お前のケツ追っかけて部屋まで夜這いにきてるんだぞ。暴君っ、ここが男の見せどころだ!」
「イヤだ!だったら私、男じゃなくて良い!」
スパッと言い切った小平太に八左が「それはちょっと…」と言っていたが小平太は頑なに首を振っている
でもお前みたいな女も嫌だけどな。
女の子っていうのは、もっとこう…細くて柔らかくて良い匂いがして食べたら甘いんだ!
前世の私はさておき、女の子には夢を見てる俺である。彼女いない歴=年齢の俺である。
と、自分の世界に行きかけていたら小平太さんは悲痛な声を上げた
「だってアイツさっき退治した時に色んなとこ折れたり色んな物が刺さってる状態なんだぞ。そんな女とにゃんにゃんできるか!」
にゃんにゃん…!?
その表現オヤジ臭くね!?
じゃなくて、うん、そうだな…
あの女の人、俺達の攻撃によって劇的ビフォーアフターしちゃったもんな。
なんという事でしょう…!グロい姿が更にR指定ものに…!(当社比5割増)
その化け物に体狙われるとか冗談きつすぎる。背中がゾワゾワする。…あ、断じて快感のゾワゾワじゃないですよ!?不快感のものですよ!?
「これ以上殴っても無駄なら相手したくない!」
「じゃあ…どうします?まだガリガリしてますけど」
八左ヱ門の言う通りガリガリ音はずっと続いてる。ガリガリ君ソーダ食いたくなってきちまったじゃねぇか
「無視して寝よう!」
「お前それ自棄クソじゃねぇか!?」
小平太さんが布団の中にログインしました
彼女はご執心