初バトル
「今更ですが…私と一緒で良いですか?」

漸くその場から動く事になり、歩きながらチラリと隣のストライクを見る。
彼は頭をこちらに向け目を眇めた。

「言ってる意味がよく…?」
「私は旅なんてした事ありませんし。体力もまったく無いです。一緒に行動するのは潮江さんに負担かと思いまして……別々に探す手もありますでしょう?」

客観的に見なくても明らかに足を引っ張るだろう。
私は私でポケモン捕まえて旅をすれば良い。
潮江さんは潮江さんで情報を集めるのは簡単だと思う。

「いや、逆です。俺には知識が何もない。君島さんの知識が必要不可欠でしょう」

キッパリと言われた言葉は意外だった。
潮江文次郎というキャラクターの性格的に、私は間者だと疑われているか、もしくは町娘以下の体力でひ弱な人間だとか思われていて、勝手に嫌われてると思っていた。

「…どうかしました?」
「あ、いえ。潮江さんは自分の力だけで何事にも立ち向かっていく方が好きなのかと、勝手に…考えてました…」

そのままを口にする訳にはいかないので咄嗟に誤魔化したが、それも本心だ。
潮江さんは面食らったように瞬いた。

「よく…見てますね」
「へ?」
「当たってますよ。ですが、俺も分別はあります。優先するのはそこじゃない」

…すごい大人な意見を仰ってる…。
そうだよな、忍者目指してるんだから冷静な思考はそりゃ持ってるか…

「それに、一般人の君島さんを一人にするなんて始めから考えてません」

キリッと前を向きながら事も無げに告げる潮江さん。ストライクの姿でそんな事言ったらただのイケメンだよ。

でもそっか…私って一般人の枠に入れて貰えてるのか。
それが聞けただけでも、これからビクビクしなくて済みそうだ。
これからは出来るだけ余計な事を気にせずに、役に立つべく遠慮しないようにしよう。私の知識をフルで活かせるように

きっと役に立つ内は生かしてくれるだろうから





どれぐらい歩いたか。…あんまり歩いてない。

草むらはあちこちにあるが、ここら辺は岩場が多く地面も勾配があり凸凹している。
山…なのかな?

そんな悪路に私の足は一向に進まない。
潮江さんは歩幅を合わせてくれてる…というか、時折立ち止まって待ってくれてる。
下り坂が続き早くも体力のない私の足がガタついてきた。
申し訳ないやら情けないやら。

「はぁ…はぁ…っんぶ!」

足許を見て歩くのが精一杯で、前を見てなかったから潮江さんの背中にぶつかった。

あ。虫臭くない。とかアホなこと思いながら「ご、ごめんなさい」と謝ったが、潮江さんの反応がない。

鼻の頭を押さえ労り、顔を上げれば
彼の肩越しにコラッタが2匹。
それが…超威嚇してた。

「下がっててください」
「あ、はい。」

コラッタを警戒してか前を向いたまま言われ、指示通り下がって距離を空ける。

あれ、これって初バトルじゃ…と頭を掠めた時には勝負がついていた。
瞬殺だった。

あ、いや。殺してない殺してない。
でも、潮江さんは見事に腕の鎌を使いコラッタ達を凪ぎ払ってしまった。

コラッタ達は目を回して倒れている。…ゴメンね、このストライク忍者の卵だから強いんだ。
そう心の中で謝ったけど、同時に頭が計算しだす。

伝説ポケモンを探す旅をするなら潮江さんはポケモンとしても強くないと苦しい場面が出てきそうだ。
人間時の強さを引き継いだだけじゃ、もし強いポケモンとバトルになってしまったら…不味い。
ポケモンとしての技を使えるかは不明だけど、せめて今の体に馴れて貰わなきゃ

「潮江さん…この調子で出会ったポケモン全部叩きのめしてください」
「はい。えっ……は?え?」

え。なんでそんな驚くの。あと何でちょっと距離取るの。


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