まさかの邂逅
「…君島さん…?」

誰かに呼ばれた。

「えっ、う、うわっ!?」

呼ばれて反射的に振り返ったけど、近距離に立つそれを見て悲鳴を上げずにはいられない。

さっきからダメージがありすぎる。勘弁してほしい。

すぐ後ろにストライクが立っていた。
ピンチじゃん!これはヤバい。走って逃げ出したいけど、下手に動いて刺激になってしまえばバッサリ攻撃されそう。
ストライクのスピードに勝てるわけないし、どうしよう。

固まったまま見つめあってしまう。
緑の体に鋭利な両腕、そして目付きも鋭いストライク。その双眸がしっかりと私を捉えている。

「君島さん…ですよね?忍術学園事務員の」
「っ!?」

大袈裟なぐらい体がびくついたのは私が小心者ってわけじゃないはず。

「す、ストライクが喋った…!?」
「すとらいく…?」

自分の種別を口にしながら首を傾げるそれ。
ちょっとかわい…じゃない!何!?やっぱり喋ってるの目の前のこのストライクだよね!
私ったらトリップしてポケモンの言葉が分かるようになっちゃったの!?
そしてストライクはなぜ私の個人情報知ってるの!?
混乱の極みだよ!

「あの…この姿じゃ信じて貰えないかもしれませんが、俺、潮江です。忍たま六年の潮江文次郎です」
「……あぁ?」

人間って混乱を通り過ぎると苛つきが生まれるよね。
思わず返事が雑になってしまった。
今度は彼がビクリと肩を揺らし1歩後退りしたけど、私そんなに怖い顔してたのかな。





少し窮屈そうに正座するストライクと、成人した女の私がこれまた正座で向かい合う。
場所は相変わらず草むらの中。
妙な光景である。


「──で、気が付いたらこの姿で…取り合えず辺りの様子を窺おうかとした時に君島さんを見付けて…」

ストライクの表情はとても苦悶の色だ。

「そう…ですか。私もさっき目を覚ましたばかりなんです。人間のままですけど服が変わってるし…」

全身まるっと格好がこの世界のものになっている。
困ったな。あの着物は借り物なのに……服が消失って何?行方不明とか、返せる可能性とっても低いよ。弁償しなきゃいけんのか…!
この久々の現代的な服は誰かが着替えさせたってことなのかなぁ…なにそれ神様の苛め?

まったく訳が分からない。
情報が皆無なので揃って溜め息を吐き出した。

「あ。ですが、先程…ストライク、と俺を…」
「私が、異世界から来た…というのは知ってますよね」

唐突に別の話題を持ち込んだのに、ストライク…潮江さんは怪訝そうにしつつも頷いた。
異世界から来た。その事実は食堂の手伝いをしている女の子が話していたので、私も同じだと伝えていた。黙っててややこしくなるのも怪しまれるだろうと思ったから。

「知ってるんです、この世界。私の暮らしてた世界では有名でした…」



かくかくしかじか、と。私は出来るだけ分かりやすく簡潔にこの世界を知ってる理由とこの世界についても話した。



「…それでは、俺は…この世界に存在するポケモン…とやらになってしまってるんですか。」
「どういう原理か分かりませんが」
「…まあ、でも…異世界に渡る事も不可思議なので、原理なんか考えても…」
「確かに、考えても無駄かもしれません」

眉間に皺を寄せ頷く潮江さん。私も苦笑で返す

「考えて解明するより、不思議な事には不思議な力で解決する方が良さそうですもんね」
「……、それは、君島さん…何か当てが…?」

私の言葉を聞いて徐々に目を見開く彼。
それに自信を持っては言えないが、少し表情を緩め口を開いた。

「伝説のポケモン達を探しましょう」


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