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やけに寝心地が悪い。
そう頭の片隅で思いながらも脳味噌は急に起きてやくれない。

まだ眠りたい。いや、早く起きなきゃ仕事に遅れる。今何時だろう。
思考はちょっとずつ働いてくれるけど瞼は異様に重くて、微睡みにすがり付きつつ寝返りをうてば、痛い。
というか何だこの匂い。布団じゃない。部屋じゃない。

土と草?

目をうっすら開けば視界は緑一色。

え、え?なんぞ?意味不なんですが

「…どこ…?」

慌てて体を起こせば、私は草が繁った所にいた。
酔っ払って外で寝てしまったのかと仮説が浮かんだけど、直ぐに自分で否定する。
だって私は忍術学園に来てから大好きなお酒を一滴も飲んでいない。お酒なんて贅沢品買うより貯金だ。

「私…昨日…?」

一体どういう事なのか、まだ鈍い脳を必死に起動させて記憶を掘り起こす。
昨日はちゃんと自室で寝たか?

いや、違う。そもそも寝てない。
昨日は、そう。学園長の思い付きで忍たま全員参加の大会があったのだ。
そして私を含め事務員とくのたま達はポイントとして決められた場所に配置されていた。
それぞれのポイントに一人ずつ。
私はその役目をずっとしていた。

その途中だ。
何の前触れもなく目の前が真っ暗になり、ガクンとブレーカーが落ちたように意識が無くなった。

それは、私がトリップした瞬間と類似していた。

「つまり…またトリップ、した…?」

私の呟きに答えるものは居らず、草むらを穏やかな風が揺らしていくだけ。

何処だよここ!

一度やると癖になってしまうのは脱臼だと思うのですが、トリップってそういうもんなの?

膝を抱えて空を見上げる。
インディゴブルーのデニムをはいてる私。着替えた覚えないんだけどな…小袖どこいっちゃったのかな…?
でもこのズボン着心地良いから喜んどこうかな。


…うん、少しぐらい現実逃避させてほしい。暫くしたらやる気出すから。

バタバタと仲良さげに数羽で飛んでいく鳥を眺める。
ぼんやり目で追って、あの鳥なんて鳥かなぁ初めて見るなぁ、なんて考えていた。

「………ん?」

いや、あの鳥は初めて見る鳥じゃない。何度も見たことある鳥だ。
例えばアニメで、ゲームで、本で。

空から視線を下ろし、今度は己の周りを見回す。
他に何か、何かいないか?

ガサガサと音がし、視界の端を過る何か。
ハッと目を向ければ、草むらから木々の生い茂る方へ小柄な動物が走っていく。

特別良いわけじゃないが悪くもない目を凝らすと、その生き物は足を止めて立ち上がる。
尻尾を使って器用に直立し、周囲の様子を伺う姿は紛れもなく…オタチでした。

「ぽ、ポケモンの世界…?」

今度は前より生き易そうな世界だ、わぁい。
なんて麻痺した頭が言っていた。


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