立ち止まる
キキョウから次の街に向うルートは2つ。
エンジュ方面へ続く西側の道と、ヒワダタウンへ進める南側の道。
西の道へ行ってはみたが、ゲーム展開通りに”動く木”が道を塞いで通行止めとなっていた。
動く木…正体はウソッキーな訳だが、現在の手持ちの相性的に無理矢理バトルに持ち込むのは不利と判断し、忍たま達には正体を教えず迂回ルートを選ぶ。
機会があったらウソッキーって教えてあげよう。いつか多分。うん。

そして、南の道

「かーっ!またれいーっ!ポケモンジムには行ったのか!?」

街を出ようとした所、頑固そうな老人が突然進行方向を遮るように立ちビシリと杖の先を突き付ける。

ボールから外に出ていた加藤くんが「ジム?ポケモンジムって何ですか?」って聞いてくるが、今は取り敢えずこの老人だ。

「いえ、私はバッチを集めている訳ではないので…」
「何を言っとるか!ポケモンジムに寄って、己とポケモンを鍛える。トレーナーの常識ではないか!」

やんわりと側を通り抜けよう試みたが、老人は杖を掲げ更に声を荒らげて言い放つ。
いやいや怖い。
何が怖いって、このお爺さんの血圧が振り切れないかが怖い。
心なしか額の血管が浮き出ている気がするし。

「あの、お爺さ…」
「四の五の言わずに、行ってみなさい!!」
「わ、分かりましたから杖振り回すの止めてください!血圧上がりますよ!!」

老人の高血圧の恐怖に負けてキキョウの街を出るのを諦めた。

「まさか此所もゲーム通りだなんて…」

溜息と共に蟀谷を指先で抑える。
あの老人を説得するのは難しい。となれば、言う通りにジムに挑戦…

そうなると手強いジム戦に忍たま達を送り出すのは嫌だな。
空のボールは確か3つ残っている筈。

「普通のポケモン、捕まえるか…」
「えええっ!反対でーす!!」
「もふっ!!」

呟いた瞬間、肩に乗っていたガーディが顔面に体当たりを決行し、モフモフとした毛皮が呼吸を邪魔する。

「団蔵…君島さんが困ってるだろう…」

いつの間にかボールから出ていた潮江さんの手(鎌?)によって、私はモフモフ窒息死から救われる。モフ殺されるかと思った……

「だって君島さんが僕達を差し置いて、ポケモン捕まえるって言い出すからぁ!」
「それについては俺としても説明が欲しい所ですね。」

ガーディを宥めていた筈のストライクも、鋭い目をこちらに向けてきた。

「な、なんですか、その浮気疑惑みたいな言い方…」
「うわーん浮気だ!君島さんの泥棒猫!」
「絶対意味分からず言ってますね!?」

私の周りを喚きながらぐるぐる回るガーディに、街中の視線が集まりかけていたのでガシッと捕獲して、一先ず人気のない路地裏に移動した。






「ポケモンジムって言うのは何かこう…地域に認められた強いトレーナーがジムリーダーを務めていまして、このリーダーに勝つと公的に強いトレーナーとして認められると言いますか…取り敢えず、そこらのトレーナーより格段に強いので私としましては皆さんをその戦闘に出すのは危険だと判断したので、通常のポケモンを捕まえて鍛えて挑戦しようかと…考えている次第で御座います。」

路地裏に入ればガタガタと「出せ」と意思表示する黒門くんも交えて3匹のポケモンに説明を求められ、どの情報を伝えれば把握しやすいか取捨選択しながら話す。
最後の方は3匹の視線に負けそうになって早口になってしまったのは否めない。

3者言いたい事があるのだろう。しかし、一年生二人は一番大きなストライクを見上げ、そのストライクである潮江さんが一つ頷いた。

「ふむ、理由は分かりました。そして把握した上で言いますが、反対です。」
「僕も…嫌です。」
「そーだ!そーだ!」

三段重ねで反対された…
思わず額を抑える。

「だ、だって!今はポケモンでも本当は人間の生徒さん達を鍛えて闘わせるとか…私とんだクズじゃないですか!!」

目を瞑り、嘆く。

「私は現在、一時的ながらも君達の保護者なんですよ?それが、自分は安全な所で君達だけ危険な目に合わせるなんてロクな大人じゃない!」

「そ、そんな事考えてたんですか…!?」

恐らく黒門くんの驚いたような声に、瞼を上げれば三匹のポケモンは目を丸くしていた。

「えーと、おれ…君島さんは友達だと思ってた…」
「は…?」

加藤くんの言葉に、今度は私が目を丸く見開く番だった。

「保護者って、父ちゃんとか先生とかの事でしょ?君島さんはそういうのじゃないもん」
「うぐっ、確かに私じゃ山田先生や土井先生みたいに頼りにはならないですけど…」

人間の姿なら口を尖らせながら話しているだろう加藤くんを想像しつつ、その無垢な台詞に顔が引き攣る。

「ああっもう!そうじゃなくて!」
「君島さんが後ろ向きなのは充分に分かりましたから」

後ろ向きじゃなくて、慎重と言って欲しい。
潮江さんに目で訴えるけど、彼は構わず話し続ける。

「団蔵が言いたいのは、一蓮托生だと、そういう意味です。」
「いちれんたくしょう?」

思わず初めて聞く言葉のように聞き返してしまった。
それぐらい、まさに寝耳に水だったから。

「事務員だからと、大人だからと俺達を保護すべきだとお考えなら、それはもう達成しています。
ただ、俺達は君島さんを同じ仲間という認識で見ています。だからそう気負わないでください」

…な、
あの潮江文次郎に気遣いの言葉をかけられるなんて…!
今の私はそんなに余裕がなく見えるのか!?

「そうです!僕らは忍たまなんですから!一年と言えど優秀ない組の僕に、団蔵だって実践経験が豊富なは組だし、学園一忍者してる潮江せんぱいだっているんですよ!?」

そう胸を反らしながら告げた黒門くん。
キッと理知そうな瞳で見上げられる。

「僕たちはそんなにヤワじゃありません!」

そう、牙を見せ吠えるように告げられた。


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