乙女の装備品
「君島さん、これ似合いますよ!お花の模様!」
「あ、有り難うございます…」

ピンクや赤の小花柄が全体にプリントされたパンツが下がったハンガーを器用に咥えたガーディ。もとい加藤くん。
なんで私こんな年下の子にセクハラされてるんだろう…。
いや、この場合セクハラしてるのは…私か?



キキョウシティ故に外観は落ち着いてこじんまりしたお店だが、中は若い子向けのカラフルな下着を揃えている服屋さん。
の、中で加藤くんと一緒にパンツを選ぶ私。
ドウシテコウナッタ。

一年は組の特色だとでも云うのだろうか、加藤団蔵の突飛すぎる思考に脱帽だ。
何故パンツに至ったのか、訊くのは怖いが気になってしまう…
臆するんじゃない一織、今後も共に旅する加藤くんの事を理解するチャンスではないか!

「加藤くん…どうして、その……えーと、服の中でもパンツなんですか?」

よし!私よくぞ訊いた!10歳相手にパンツとか口にするの躊躇ったけど!

私の問いにガーディはきょとりと首を傾げ、少し考え込むように間を開けた。

「だって、食堂のお姉さんがパンツがとっても大事って言ってました!」

ん?

「女の子を一番守ってくれる上に、可愛いパンツを身に付けると気合いが入るんだ。って、教えてくれたんです!」

弾けんばかりの笑顔を向ける加藤くんに、どう反応すれば良いのか…
というか、加藤くんの思考が可笑しいのかと思いきや、まさかの食堂のお姉さん。
あっれー?あの子現代から忍術学園に落っこちて健気に頑張る良い子だと思ってたのに…。子供に何でパンツ云々話してるんだろう…。
どんなシチュエーションでパンツの話になったのか…

「君島さんの身を守るためと、気合いを上げるために一番のパンツを選びましょうね!」

アカン。これアカン奴や……

加藤くんの言葉が分かるのが私だけで良かった…
今の台詞が他の人にも聞き取れていたら、確実に店内の誰かに通報される。
勿論、私が、である。

いたいけな少年に下着選びを強要しているいかがわしい女性!と110番ですよ分かります。

「あ!君島さん、このクマの絵のやつ恰好良くないですか?」
「いえ、もう決まったので…!」

ヒメグマのバックプリントされたパンツを勧められ、私はすぐそこに掛かっていた普通の下着を手に取り、ヒメグマパンツを加藤くんから取り上げ元の棚に戻した。

そして早足でレジに並びお会計して店を出る。
これ以上加藤くんを下着売り場に居させては駄目な気がしたのだ。
あとは、他の人が加藤くんの言葉を聞けはしないと思うけど、店内の女性の目が向くのが怖かったし。

早く落乱の世界に彼らを戻さないと、と思ってはいたが、
変な影響を受けるのを防ぐ為にも帰してあげないと…!
っていうか、そういった面でも私が気を引き締めなければ!






一旦ポケセンに戻った後、テーブルに肘を付いて指を組み、その上に顎を乗せる。そして神妙な表情で唇を開くのだ。

「キキョウシティには元の世界に戻れそうな手掛かりはありませんでした。次の街を目指そうと思います。」
「はい…」

潮江さんが3人を代表して返事するが、その顔は気不味そうだった。
まあ、私が急いで先に進もうとしているのが見え見えだからな、気を使ったのだろう。
先程のパンツ事件で黒門くんもだが、潮江さんは相当気不味いみたいだ。
でも、私もとても気不味いです。
この子達が頑張って稼いだお金が私の勝負パンツに使われている訳ですからね。
いつかタイミングがあれば、加藤くんには勝負パンツには防御力や特殊性能は皆無だと言う事を説明しようと思う。
しかし折角購入した下着…有り難くはかせて頂きます!

彼等は知らない裏事情、否、知られてはいけない裏事情だが、これで就寝時のノーパン生活は終了した。


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