「どうですか?火とか雷とか出てきますか!?」
こうなったら2匹には特殊攻撃を扱えるようになってもらい、遠距離のバトルスタイルを学んで頂かないと。
攻撃力が高い2匹だけど、特殊攻撃力─特攻も低い訳じゃない、
炎と電気というのは威力の強い技が多数あるタイプだ。
そこを活かして接近せずに勝てれば、怪我しない!はず。
「うーん…う〜ん…分かりません!」
「同じく…電気なんて本当に僕に出せるんですか?」
集中し瞑目していたのを解いて二人は地面に伏せながら嘆いた。
「出せるはずなんですけどね…静電気で良いですからパチパチっと出ません?」
「静電気って…」
やっぱり最初からは無理か…。
低レベルだと「たいあたり」とか「ひっかく」あたりの技を覚えてるもんなぁ…
ガーディとコリンクが特殊技を覚えるのがどのレベルからか、さすがに暗記なんてしてない。
でも技にならなくとも自分のタイプの力は出せると思ったが…中身が何も知らない人間だから扱い方が把握できないんだろうか…
「レベルを上げていけば使えるようになる…はずです。今は物理攻撃を使っていきましょう」
「はーい…」
「分かりました」
二人の返事を聞いて、初歩的な「たいあたり」をやってみるよう説明する。
この2匹が体当たりを覚えるのかは不明だが…
「こう…ですかね?」
「そうそう!出来てますよ黒門くん。」
数回練習して形にできた黒門くん。口頭での説明で理解できるなんて流石い組だ。
そして、加藤くんといえば…
「とうっ!やあっ!」
「加藤くんは……体当たりじゃなくて頭突きの気が…」
ガーディはたいあたりを覚えないのかもしれない。頭から突っ込む構えはどう見ても「ずつき」。
でも頭突きも立派な攻撃技だし…いっか。
「それじゃあ、実践をしてみましょうか。」
「「はい!」」
二人はパッと顔を上げて何故か距離を取って、ガーディとコリンクが向き合う体勢に。
…なにしてんの?
「これでバトルの練習ですね!」
「へ?」
「伝七、負けないぞ!」
「ちょ、えっ」
「こっちの台詞だ!団蔵なんかに負けるか!」
「なっ…!?」
「言ったなー!?」
バチバチと見えない火花を散らし、互いに向かって飛び掛かろうと走り出した二人の間に割り入る。
「す、ストーップ!二人とも待ちなさい!」
「あ、危ないじゃないですか!」
「何で止めるんですか君島さん!」
私を見上げて甲高く吠える2匹をキッと見下ろす。
「危ない、はこちらの台詞です!誰がお互いをバトル相手にするなんて言ったんですか!?怪我したらどうするんです!?」
「「え、えー…?」」
不服そうな表情しても駄目なもんは駄目だ。傷薬も持ち合わせてないし、お互いの力が同等の二人がバトルしたら両方ギリギリまで体力削っちゃうじゃん。
「君島さん意外と過保護…?」
「何か言いました?」
「い、いえ…何も…」
二人を引き連れ近くの草むらに入ってみる。
レベルの低い野生ポケモンが出てくると良いけど…
─ガサガサ…っ
「あ!君島さん!」
出てきたのはニョロモ。
それを見て二人はキラキラと私を見上げ指示を待っている。
「加藤くん、目一杯恐く吠えて下さい」
「分かりました!」
─ガウガウッ!!
私にも獣の咆哮として耳に響いたソレに、ニョロモは飛び上がって逃げていった。
「あれ…?君島さん、逃げちゃいましたよ?」
ニョロモなんて相手にしたら黒門くんはまだしも、加藤くんが危ないでしょうに。
チェンジです!チェンジ!
「さーて…どこかに良い相手はいるかなー」
「ええぇ…?」
「君島さんやっぱり過保護…」
─ガサリ…
茂みを揺らす音に今度こそ弱そうな相手を期待して振り向けば、顔を出したのはコクーン。
「ん!加藤くん頭突き。」
「はいっ」
勢いよく頭をぶつけ、コクーンは衝撃で後退る。けど、倒れはしない
コクーンはぎゅっと身を固くし、こちらの次の攻撃に備えてるようだ。
思った通り。野生のコクーンやトランセルは攻撃技を覚えていない
「さあ、もう一回です。心置きなく頭突きをどうぞ」
「君島さんなんか怖いです…」
黒門くんが何か呟いていたけど、加藤くんは指示通り渾身の頭突きを決めた。
コクーンが目を回し倒れる
「やったー!勝ちました!」
ぴょんぴょんと喜びのジャンプを披露する加藤くんに笑って頷いた。
ふむふむ、防御の高いコクーンに2回の攻撃で勝てたか…レベルは思ったより低くはないみたい。
「じゃあ次は、黒門くんの番ですね」
「!、はい!」
ちょっと緊張気味にピンと背筋を伸ばす黒門くん。
目を覚まし慌てて逃げてくコクーンを見送って、次の標的…じゃなかったバトル相手を探す。
「あ、いました!」
ピョコピョコ歩く姿が見えた。ポッポだ。私がこの世界で最初に見たポケモン。
「黒門くん、攻撃されそうになったら避けるんですよー」
「がんばれ伝七〜」
やはり緊張気味だけど凛々しくポッポに向かっていく。加藤くんが先に勝ったのを見て負けられないと思ったんだろう
そんな彼を少し離れて応援する。
「砂かけてくるのに気を付けて、攻撃したら一旦離れてください」
「はい!いきますっ!」
大きく返事をしてポッポに走って突っ込んでいくのをハラハラと見守る。
体当たりが見事にできて、ポッポがよろめいたのを横目に見ながらストライクを探す。
彼は一年生の練習からずっと近くで眺めているだけだった。
現在もすぐ側で木に背中を預けこちらを見ていたストライクに手招きする
「どうかしました?」
「潮江さん、危なくなったら潮江さんが倒してください」
隣に来た彼にそっと言う。
潮江さんが最後に倒しても、経験値は黒門くんにも入る。ゲームでのシステムだけど、この状況でも経験になるだろう
優先するのは無傷で勝つ事だ。
「分かりました…ですが、そう気を揉まなくても良いのでは?」
頷いた潮江さんだけど、そう告げて視線をバトルの方へ向ける。
それを追えば黒門くんがポッポを倒した瞬間だった
「一年といえど忍たまは強いんです」
「…ですね」
「見てましたか!僕勝ちましたよ!」
「あ、すみません。途中潮江さんと話をしていて。最後は見ました」
「君島さん!!」
「え?何で怒るんです?次はずっと見てた方が良いですか?」
「君島さん男の気持ちが分かってないなぁ」
「君島さん、俺もどうかと思います…」
なんか全員にディスられた。
私は君達の安全を考えているというのに…