現在値
少年は手を振って走り去っていった。ヨシノのポケモンセンターへキャタピーを預けに行くらしい

「あの…君島さん…」

無言で10円を鞄の中に仕舞う私に潮江さんが遠慮気味に声を掛けてきたが、それを遮るように私から話し出す

「潮江さん、どんどん勝っていきますよ」
「は、はい…」

せめて日常必需品は買える金額を貯めなければ。傷薬とか旅に必要なアウトドアグッズとか非常食とか…服とか。
あれもこれも必要な物が多すぎて、どれなら後回しに揃えても大丈夫なのか分からない。
万年インドアだった私には全て揃がってないと不安に感じて取捨選択ができない

一体どれだけのお金を集めれば良いのだ…
頭が痛い。
でも、兎に角お金が無いと彼らを保護し元の世界へ帰してあげるどころか…私が野垂れ死ぬ可能性が大きい


「あっ、見かけないトレーナーがいる!ポケモンバトルしましょ!」
「勿論です」

今度はミニスカートをはいた女の子がモンスターボールを持ち構えながら声をかけてきたので、直ぐ様返事をする。

この子は先程の虫取り少年より年代が上だ。中学生ぐらいか?
100円ぐらいの賞金は期待できる…!そうであってくれ!……子供からお金取る計算するのは大変情けない。

しかし、背に腹は替えられない!
潮江さんにアイコンタクトを送って、またバトルをお願いする

朝早くにヨシノを出たけど、今日の午前中はこの道路でバトル三昧だな。
潮江さん、頑張って下さい!忍術学園一忍者してる貴方なら楽勝のはずです。ですよね?スタミナも有り余ってるはずですよね?






こんなもんだろう。
あ、黄昏時の忍者組頭は関係ないですよ

貯まった小銭が鞄の中からチャリチャリ主張してきて、そろそろトレーナーバトルは止めようかと思う。
30番道路は近所の子供達ばかりなので10円や100円単位の賞金だが、トレーナーの数が多い。思ったよりもたくさん稼げた………潮江さんが稼いだんですけどね。

太陽が上がってきて温かい空気が流れ始めたので、一度ヨシノシティに戻る事を考える

ストライクは勿論無傷だが、連戦で疲れが溜まってるだろうし、技だってPP…回数制限があるか分からないのだから
昼御飯を貰いに行くのも含めてセンターにまたお世話になろう。

「潮江さん、一旦ヨシノのセンターに戻りましょう」
「次の街は遠いんですか?」
「目指すとなるとお昼過ぎてしまうので…」

話している途中で手の中のモンスターボールが揺れた。
掌を持ち上げ見てみれば、カタカタと揺れ続けるボールの中から微かに加藤くんの声がする。しかし、あまりにも小さな声で加藤くんの声だと分かっても何を言ってるのかは聞き取れない。

「どうしたんでしょう?」

首を捻りつつボタンを押してモンスターボールを開く

「君島さん俺もー!先輩ばっかりズルいです!」

弾むように出てきたガーディは地面に足を付いた瞬間、私の回りをぐるぐる走り出した。
加藤くん……こっちの世界で会った時もこんな感じだったけど、行動が犬過ぎる…人に戻った日が心配だなぁ

「団蔵落ち着け…」

潮江さんがしゃがんで制止させたけど、加藤くんはまだ興奮気味に「だって潮江せんぱいばっかりじゃないですかぁ!俺だって!」と吠えて、また潮江さんが宥める。

潮江さんに任せて口出ししない方がいいか、と黙って眺めていれば残りのボールが揺れ出した。
……出すしかない

「そういう事でしたら、僕も団蔵と同じく戦ってみたいです。僕だけ遅れを取るのは嫌ですからね!」

出てきた黒門くんもそう言い始め、潮江さんからも視線が向けられる。
えー…゛一年生に危ない事させるな゛とか、そういう睨みですか?
潮江さんに睨まれるの怖いんですよ…目付き超鋭いし

「こう言ってる事ですし…街に戻る前に少し二人にも戦わせてはどうでしょう?」

…あれ。てっきり潮江さんは一年生が戦うなんて反対だと思ってたのに

私が驚いたのが顔に出ていたのか、潮江さんは続けて話し出した。

「きっと旅は困難です。二人も力を付けた方が良い」
「……そうですね」

断る理由も術もない私は首を縦に振るだけだ。

「やった!」

加藤くんは跳ねて全身で喜び、黒門くんも表情を華やがせる。

「…それで、君島さん!僕たちって、どう戦うんですか!?」

…あぁ、うん。
忍たま六年の潮江さんはポケモンの体でも直ぐに戦えたけど、一年生は人間時でも戦い方なんてそんなに知らないだろうしね…そうだよね…
……え?私が教えるの?

「じゃあ…まず…、お二人のポケモンの特徴なんかを伝えておきます」

いきなりバトル方法から入るより、それぞれ自分の身体について知っておいた方が戦う準備もできるはず。

真面目な顔で並んで座る小さな獣2匹を見下ろして、私は記憶を巡らせた

「加藤くんは炎を操る事ができるガーディという種族。勇敢で敵を怯ます攻撃的な子です。」

うんうん、確かこんな感じだった。
炎の石で゛でんせつポケモン゛のウインディになるんだよね。しんそくを覚える全体的に優秀なポケモンだ。

「えっと、黒門くんは電気を力とするコリンクって種族です。電気を使った強力な技を覚える上に攻撃力も…」

コリンクは3段階に進化して最終形態のレントラーもかなり優秀で……
ってこの2匹、タイプは違えどどちらも攻撃重視の高スペックポケモンだ…
私この2匹を手持ちにしてるなんて凄いな……じゃなくて!

ハッと潮江さんに目を移す。
ストライク、スピード特化で攻撃力も高い。ハッサムに進化はするけど最初から基礎能力値は高レベル。だけど虫タイプなだけに弱点が結構あるし防御系の値は弱い……
はがねタイプのハッサムに進化すれば防御も手に入るけど、メタルコートが必要だし何より通信交換なんてものをしなくちゃいけない…

このメンバー致命的に防御が弱い。
今まで中身が潮江さんのストライクが戦ってたから危ない場面は無かったけど、相手側から攻撃受けたら一気に崩れるかもしれない。
怪我をさせないように…って気を使ってはいたけど、どうやら本当に怪我をさせたら大変になる。
かと言って、先手必勝・攻撃は最大の防御…だなんて全部の戦いで上手くいくはずがない

「君島さん!」
「…あ、はい!」
「どうしたんですか?難しい顔で何か考えていたようですが…」

小さな二人に首を傾げられ、慌てて何でもないと苦笑を浮かべる。
潮江さんの視線を感じるが、彼は黙ったままなので気付かないフリをして一年生に話しを続けた。

この悩みを相談した所で彼らの能力値が変わる訳ではないのだから


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