町に到着
やっと着いた…

オレンジ色に染まるヨシノシティを眼前に私は安堵の息を吐いた。
視界は薄暗く、何処からかご飯の匂いが漂っているが、どうにか夜になる前に町に着けた。
野生のポケモンに出会わないよう草むらを避けて歩くのは一苦労だったが、私一人でも道路を無事渡れた事に達成感を感じる。

持っている3つのモンスターボールから忍たま達を外に出してあげないと窮屈だろう。
確かポケモンセンターはトレーナーが無料で利用できる施設だったはず。
3人の体力を回復させる為にも、今日はそこに直行しよう。


町の中で一際大きく目立つセンターに真っ直ぐ向かい、明るく電気の灯った建物内に足を踏み入れた。
受け付けらしきカウンターに立つ優しげなお姉さんに近付けば、ニコリと微笑んだ彼女から声をかけてくれた。

「こんばんは。ポケモンを回復させますか?」
「はい、お願いします。」

3つのボールをカウンターに乗せる。
その中の1つが不安げにカタリ、と揺れたので「大丈夫ですよ。」と小さく声をかける。

「ではお預かり致します。暫くお待ち下さいね」

綺麗にお辞儀したお姉さんはボールを持って奥へ入っていった。

ゲームみたいにその場で機械に乗せて回復!とはいかないか…
回復の間何していよう…

あ。そうだ、ここで一泊できるか訊いとかないと。

カウンターに戻ってきたお姉さんに「済みません、」と声をかけた。






「ひゃー!すっげぇ、この布団ふっかふか!しかも跳ねる!」

部屋の中で3人を出すと、加藤くんがベッドで跳ね始めた。黒門くんの冷めた目にも気付かないくらい夢中らしい。
今日一日で一年生二人のやりとりに慣れつつあるので苦笑に留める。

「こんな立派な宿、泊まって良いんですか?」

室内を見渡していた潮江さんが問い掛けてきた。
私は思わず口角を上げ答える

「ポケモントレーナーは無償で一泊できる施設なんです」
「そんな…どうやって成り立つんだ…?」

異世界のカルチャーショックに難しい顔で呟く潮江さん。
私だって詳しい仕組みは分からないので「この世界ならでは、ですよ」とだけ返しておいた。

「私の名前でトレーナー登録も出来ましたし、これから先の生活は何とかなりそうですねぇ」

良かった、と頷いていればベッドで遊んでいた加藤くんがこちらを振り向いた。

「はい!君島さん、これからどうするんですか?」

挙手の代わりに前足片方を上げた姿が大変可愛らしい。

「お二人にも色々説明しないといけませんね」

近くにあったソファに腰掛ければ、それぞれがその場で聞く体制になる。
チラリと潮江さんに目配せすれば、彼も心得た、と頷いてくれた。

この世界の事を二人に伝えるのに潮江さんも説明役に加えて、話し始めた。

「そして俺達は伝説の忍者になるんですね!」
「違う!今の話のどこをどう聞いたらそうなるんだ!」

一応ひと通り現状を話したのだが、シリアスな雰囲気にはならずに何故か得意気に胸を反らした加藤くんを黒門くんが怒っていた。

「僕がもう一回説明してやるからちゃんと聞け!」
「お願いしまーす」

最初は喧嘩ばかりで心配もしたが、どうやらこの一年生コンビはなかなか良い相性みたいだ
思わず潮江さんと顔を見合わせ笑ってしまった。潮江さんは呆れた笑いではあったけれど。

「団蔵に理解させるのはもう少し時間がかかりそうですから、君島さんは先に休んでいてください」
「そう…ですね。じゃあお風呂いただいてきます」

悪い気もしたが、私がいると邪魔になるかもしれないし余計な気を使わせるのも可哀想だ。
言葉通りに休ませて貰おうと、私は備え付けのシャワールームへ引っ込んだ。






「ふむ、服も調達しなきゃ…だな」

風呂から出て呟く
私の所持する服は、ポケモン世界に来て何故か着用していた一式のみ。洗濯をしてる間着るものがない。
幸い、用意されてたバスローブを着れば今日はなんとかなる。部屋には乾燥機能付き洗濯機もあったので、今から洗えば明日の朝には乾いているだろう

他にも、旅をするなら入り用な物が多い。傷薬も、非常食も、マップも、あー…鞄もいるよね
しかし今の私は一文無し。稼ぐあてと言えば……、……いや、いくら忍たまの潮江さん達とはいえ子供を危ない目に合わせる訳にはいかない。そうだ駄目だ。
それに大人の私がどうにかせねば。


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