先輩と後輩と、事務員と
「君島さーん!君島さんだ!君島さんですよね!?」

えぇ…名前めっちゃ呼ばれてる。
という事は、私の足に飛び付いてくるこのガーディも潮江さんと同じく忍たまの子…?

「その声…団蔵か…?」

横に並んだ潮江さんがガーディを見下ろし呟いた。

「うえっ!?な、何かでっけぇカマキリみたいなのがいる…!もしかして…潮江せんぱい…!?」

どうやら一緒にいるストライクには気付かず突撃してきたらしく、目を見開いて跳び退ってから漸く彼の正体を口にした。

「わー!わぁー!潮江せんぱい格好良い!それ何て種類の虫なんですか!?」
「やはり、団蔵か。」

ストライクの周りをぐるぐる走り回りはしゃぐガーディ。
その様子から確定したのか後輩の名を口にして潮江さんは頷いた。ちょっと呆れている。

「おーい伝七!お前も早く来いよ!潮江せんぱいと君島さんだ!」

ガーディこと加藤くんは足を止めると振り返って茂みの方に声をかけた。

「伝七…?一年い組の黒門伝七か?」

潮江さんが軽く首を傾げ呟くと、加藤くんの大声が向けられた茂みからコリンクが顔を出した。

「本当に…会計委員会委員長の潮江文次郎せんぱいなのか…それが?」
「そうだよ!会計委員会の俺が言ってるんだから間違いないさ!潮江せんぱいだ!」

まだ不安そうにするコリンクも、再度ガーディが告げた言葉に漸く茂みから出てきてゆっくりと私達の側に歩み寄り座った。

「いやぁ、でも良かった!知ってる人に会えて。本当もうどうしようかと思ってたんですよー」

加藤くんも並んで座ると尻尾を振りながら言う。
一年生二人はこうして見るとポケモンの姿になっても目元に特徴が残ってる気がする。
ガーディはつぶらなキラキラした瞳
コリンクは僅かにつり目で理知そうな瞳だ。

考えてみればストライクも鋭い目付きは人間の時と同じだなぁ。

「いったい…どういう事なんでしょう…?周りはまったく知らない場所だし…」
「こんな体になってるせいか会う人会う人に追っかけられるし…」

黒門くんが俯き加減で呟く。さっきの私以上に混乱して気が滅入ってるようだ。
加藤くんもはたりと元気を無くしガックリ項垂れた。
そんな二人の言葉に潮江さんがピクリと反応を示す

「人に追い掛けられた…?」

加藤くんの方がバッと顔を上げ潮江さんに飛びついた。

「そうなんですよ、せんぱぁい!聞いてください!」






加藤くんと黒門くんの話を聞けば、潮江さんの表情がみるみる険しくなっていく。

「君島さん、どういう事ですか…。この世界では人間とポケモン、助け合って生活していると…!」
「はい。少し落ち着いてください」

説明しようにも、気が立った潮江さんを前にすれば平常心で話ができないから、さりげなく距離を取って宥める。

「僕たち人間じゃないから攻撃されるんですか?」
「いえ、人間達は悪意があって攻撃してるわけじゃないんです」

声の弱々しい黒門くんの言葉をすぐに否定する。
不思議そうな表情が3つも向けられた。

「加藤くんと、特に黒門くんはこの辺りには棲息しない珍しいポケモンですから。手に入れたい人が多いんでしょう」
「珍しい、ぽけもん…?」
「じゃあたまに投げ付けられるあのボールって、捕まえるための道具ですか!?」

彼等にはまだまだ説明しなきゃいけない事があるらしい。

「詳しい事は後だ。」

潮江さんが二人に告げた。次に「今一番大事なのは…」と続けて私に振り返る

「俺達が捕まえられない術はありますか?」

訊きながらもその落ち着いた様子じゃ、多分確信を持っている。

「はい。私の手持ちのフリをして頂ければ、無闇に捕まえられる事はないでしょう」
「手持ちって…君島さんのペットのフリですか!?」
「まあ、そうですね…」

ペットかぁ…
加藤くんに言われて、何だかその響きに苦笑が浮かぶ。

「飼い主役お願いします」
「よろしくお願いします!」

ガーディとコリンクが私の足許に座り込んで頭を下げた。

「俺からも…お願いします」

ストライクが軽く頭を下げる。

「あは、は…できるだけ皆さんが他の人間の手に渡らないよう細心をはらいます…」

悪の組織以外は人のポケモンをゲットしようとしないはずだけど…なぁ


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