小説 | ナノ

どうにか現状を回避したくて、私が脳みそフルスピードで絞り出したのは… 随分おざなりな逃げ道だった。

「っ弁慶!」

呼べばピクリと肩を揺らし、伏せていた瞳が私の目へ向く。

「あの、あのさ…、私、弁慶の気持ち信じ切れないし、理解も出来ないよ」

その言葉に唇を噛み締め、両手に力を込める彼。 そこで私は慌てて「だから、」と続けた

「時間をくれないかな?」
「時間、ですか…?」

聞き返してくれた事に小さく息を吐いて、ひとつ頷く。

「私が弁慶を信じるまで、弁慶の気持ちを理解できるまで、…じっくり考える時間が欲しい。」
「…、…考えて、くれるんですか?」

弁慶の表情が緩むのが見て取れて、私は何度も首を縦に動かす。

「それまで待っててくれるなら、私だってちゃんと覚悟できるし。ただ、その間は距離を測り違えないで。ね?」
「待ちます。僕、待ってますから…」

ふわり、花が綻ぶような柔らかい笑みを浮かべ、了承する彼。
捉えられていた体の自由も、弁慶が力を緩めたので簡単に解けた。

良かった、私が言った牽制も通じてる。

「でも、いつまで待てば良いんですか?」
「えっ、と…」

首を傾け訊かれた言葉に、そこまで頭を回してなかった私は焦る。

「じゃあ、…もし、平和になった時まで弁慶が私を想ってくれていたなら…、その時はきっと受け入れるから」

でも、きっと、 戦が終息して平和になった時、弁慶の心に私は残っていないだろうし。私だってこの世界に残れているか…

狡いとは分かっているが、弁慶を助けるのは私じゃないから。
弁慶だって…時間を置けば冷静になって、自分に必要なのは誰か気付くだろう。

貴方が幸せなら、私はとても嬉しいんだよ。


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