小説 | ナノ

じっ、と。真横から見つめているのだが、意に介さないようでドでかい椅子に座る彼はまったく反応しない。
こちらをチラとも見ず、私のお土産の某携帯ゲーム機に夢中になっている。
モンハンそんなに楽しいのかー。こんなにゲームが好きならポケモンにすれば良かった。そっちの方が君のイメージ崩れそうで良いよ。

「ねぇ、XANXUS君。おねーさんが会いにきたのに無視?」
「……。」

無言頂きましたぁ!
彼の低い声の代わりにゲーム機から多彩なアクション音が響いている。
私の教育方針は「飴と鞭は飴多め、ただし鞭は容赦なく。」なんだけど飴(ゲーム)与えすぎたかね?
まあ、再教育のカリキュラムは終わったんだけどさぁ…。
私の知らない所で未来がどうのこうのとか、スペードがどうのこうのとか、呪いがどうのこうのとか、色々あったみたいだし。ちょっと心配してるわけですよ。綱吉くんより、9代目よりも君を心配してるの…分かってるのかなぁ。

「昔はお姉さんが来ると喜んでたのに…」

無表情だけど赤い目をこっちに向けて輝かしてたのが懐かしい。いやぁ、あの時は可愛らしかった。

「テメェは…ミエーレじゃないだろ…」

ボタンをカチカチと操作しながら乱雑に呟かれた言葉に思わず目を丸める。

「…ミエーレの方が良かった?」

ソファの上で膝をぎゅっと抱え、そっと訊く。
肯定された所で私は日本人で中学生の女の子なのは変わりようが無いんだけどさ。

下がりそうな視線を堪え、窺っていれば昔よりずっと鋭くなった瞳が私を映した。

「大差ない。」

素っ気ない口調で、さっさとゲームに目を戻してしまったけど。何だかちょっと嬉しい。
彼にとってはどちらも口煩い存在で鬱陶しいのは変わらない。とか、そんな意味合いなんだろうけどね。

「ねぇ、ねぇ。XANXUS君。あのね、」

このタイミングなら訊けるだろうか。彼と再会してからずっと燻っていた問い。

また反応を示さない彼に、これだけは無視してほしくなくて彼の全然柔らかくなさそうな頬を人差し指で突っつく。

「あのね、君はボンゴレが嫌い?」

ボタンを押す音が止んだ。
次いで、私の指が捕らえられる。
頬を触られたのが嫌だったんだろうけど、嫌だったのはそれだけじゃないみたいに力が込められて少し痛む。

「気に入らないのは…あの擬きのカスだ」

すっごく冷めた声音で吐き捨てるように、獣が唸るように告げたその言葉に口端が上がっていく。

「そっか…」

私の教えた事は、間違ってない部分もあったのかな。少しは君に根付いてくれたのかな。


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