小説 | ナノ



「僕じゃ…駄目なんですか?」

私の方が息も苦しいのに、ソイツは苦しげに眉間に皺を作り、潤んだ目を伏せた。

「べんけ…っ、落ち、着けって…!」

腕から脱け出そうと、腕を掴んで引き離しにかかるが、さらに力を込められる。
ちょ、この馬鹿!可愛い顔して馬鹿力!

「違うっ…、違う違う違ーう!私は信じられないだけだ!」

もがいて、渾身の力で叫ぶ。

「信じ、られ、ない…?」

ポツリ、弁慶が鸚鵡のように返し、ようやく力が弱まった。

「ケホッ、…そう、信じられない。弁慶の、想いが」

失礼だけど本音だ。

龍神の神子である望美は、清く美しく…って何かわざとらしい言い方だな。
まあ、とにかく、
望美ちゃんは可愛い。そして優しくて、いつも真っ直ぐで、異世界の人間である源氏の為に戦い、みんなを救おうとしている。
その心はきっと誰より強くて綺麗だ。

そんな彼女の側にいて、彼女と共に、彼女の力になりたい。と思うのが当然の流れ。(多分。だって私ならそうする)

私は力も無いし、容姿も秀でてない。(遠回しに表現したけど、悲しくなるな…)

この世界で望美ちゃん達と出会って、梶原家に保護された。
譲みたいに家事能力があるわけじゃないから、いつも部屋でぼんやりお留守番だ。
正直、駄目人間すぎる。

そんな私の何処を好きになったと言うのだ。ちょっと小一時間問い質したい。…聞いたところで納得いかないと思うけど。

「どうしたら、」
「ん?」

あ、ごめん。ちょっと考え込みすぎた。
意識を戻して弁慶へと目を戻す。ってか顔近っ
…脱け出すの忘れてた。

「どうしたら信じてくれますか?」
「へ、ぇ?」

そうくるか…

っていうかまた声が裏返った…!


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