くのたま敷地から少し出た所ののっぽの木、その天辺付近の幹に座り学園内を見下ろす。いーい眺めだ。
風が私の前髪を揺らしてどこかへ流れていく
「うーん…お昼寝日和…」
座り心地は固くてちょっと痛いが、あったかい陽射しに梢の音に気持ち良くて瞼が重くなってくる。
今はどこからか聞こえてくる教師の悲鳴も子守唄代わりだ
「おい椛!」
「んー?」
しかし自分の名前が下から叫ばれれば、下がりかけた瞼が再び開いてくれる。
枝葉の隙間から地面を窺えば、同じ歳である忍たま六年生の食満がこちらを見ていた。相変わらずの急勾配な眉毛ですね
「こんな所に居たのか!どうりで見付からないわけだ…まったく…」
何故か責められるような口調を使われ、眠気を覚ましてくれた事には感謝するが思わず顔を顰める。
溜め息をつく姿に少ーしだけ苛ついたけど、私に用があって捜してたみたいだし、このまま地面と木の上の距離感で声を張り上げ話し掛けられるのも嫌だから降りるとしよう。
ひょいと飛び降り、バタバタと風切りを音を耳にしながら身を丸めてくるりと体勢を整える。
数秒足らずで地面に着き足音を立てずに彼の前に降り立てば、顔を引きつらせながら「猫みてぇだな…」とか言われた
歳上以外の引きつった顔見せられても全然嬉しくないなぁ…。
「でー?私に何の話?」
別に食満とは仲良くもないのに、わざわざ私を捜していたとは何事か。
面白い事態にでも転がるのだろうかと口許が緩んでしまう
「話つっーか…その、頼みがある」
「頼み?」
くのたま最上級生である私に゛頼み゛だなんて豪胆な男だ。それとも、それに相応しい物を用意しているのか?
「くのたま達を止めてくれないか」
あらぁ…随分と予想を下回る展開。
反射のように、スッと目を細めるが食満は気付かないのか話し続ける
「止められるとしたらお前だけだろう?」
「それ、どういう意味?」
「は…、どういう…って…」
静かに訊き返してみれば食満の表情が固まった。
「椛が…お前がくのたま達の中で、纏め役…だろ?」
「纏め役?」
つい、首を傾げる。
忍たま達からそんな風に見られていたのか。ふぅん、…何て言うか、イメージの押し付けも甚だしいなぁ
確かに、今回の件だって私の提案が発端で彼女達は動き出したが、それは別に私を特別視してる訳じゃない。
忍務や実習は別として、私達の間に上下関係なんか無い。
同級生であり友人である彼女達に口出しだなんて出来るわけもないだろうに。っていうか、する気もない
「そ、それに…昔からお前は忍たまに罠とか、毒とか、仕掛けなかった…し…」
辿々しくも何とか言葉を紡ぎ出す目の前の忍たま。彼の顔色は可哀想なくらい白く、紙のようになっていく
「そうだね。だから、私がくのたまの中でも良心的だと思ったんだ?」
一歩近付けば、食満は更に血の気を無くしたような顔で僅かに後退り。
うん、原因は
私の殺気なんだけどね
「優しい私に頼めば助けてくれると思ったんだ?」
「そ…れは…」
だけど、後退りをしようにも至近距離で急に私の殺気に当てられ思い通りに動かないらしい。
あはは。学園の中で、くのたまと忍たまの違いはあれど同じ最上級生だもんね。しかも、今さっき言った通り私は忍たま達に実技の復習だったり術を試したりなんてしてこなかった。
だから、完全に気を緩めてたんでしょう?
そんな時に殺気なんて当てられちゃ堪ったもんじゃない。身体が強張って当然だ。
そして、くのたま相手に警戒心ゼロの奴が当然100パーセント悪い。
「ねえ、アンタが私の何を知ってるって訳?」
「…っぐ!」
漸く強張っていた表情筋が動き、苦痛の形に変わっていく
食満の首を掴んでいるのは私の手。
そりゃ、七松みたいな人体構造をぶっ飛ばしたような馬鹿力は私には無いけど
力は少なくとも人間を追い詰める術は知っている。
現に私の手を引き剥がそうと藻掻いてるが全然力が入っていないし、その目には怯えの色が滲んでいる。
「くのたまの何を知ってるつもりでいるの?」
「ガハッ!!」
女の細い指が男の首に食い込んでいく様は中々に良い光景だ。
流石に食満に身体的影響を残す事が目的じゃないので、手を離す。
無様に倒れ込む…て事はしなかったが、新鮮な空気が嬉しかったのか食満は何度も噎せて咳き込んでいた。
「勝手に勘違いして決め付けるのやめてよねー。吐き気がする」
「…ッ!」
食満の背中を擦ってやりながら告げれば、彼の目がまた恐怖の色を含んで見開かれた。
軽く労るように背中をポンポンと叩けば、呼吸も落ち着いたようだし私はさっさとこの場を去ろう
「待…っ、椛…!」
「ああ、そっか。まだ答えてなかったね」
掠れた耳障りな声が続く前に自分の台詞を被せる。
「その頼み、もちろん断るよ。」
くのいち教室に戻る道へと進みながら、手を振りはっきり返答してあげた。
数歩進んで無言の彼を振り返れば、首をさすりながら難しい顔で俯いている
「一つ、誤解を解くのならば」
私の声につられ顔を上げた食満と視線を会わせ微笑む
「私が君たち忍たまに手を出さないのは、ただ単に君たち相手じゃ…つまんないからだ」
さてさて、もう用は無いだろう。自室にでも帰ろ
あーあ、呆れた忍たまだ。くのたま相手にタダで頼みをきいて貰うなんて脳味噌お花畑かっての
結局実の成る言葉を一つも言いやしない。やっぱ忍たまってつまらない。
しっかし、食満のせいで今日は見たかった半分も観れなかった
風が私の前髪を揺らしてどこかへ流れていく
「うーん…お昼寝日和…」
座り心地は固くてちょっと痛いが、あったかい陽射しに梢の音に気持ち良くて瞼が重くなってくる。
今はどこからか聞こえてくる教師の悲鳴も子守唄代わりだ
「おい椛!」
「んー?」
しかし自分の名前が下から叫ばれれば、下がりかけた瞼が再び開いてくれる。
枝葉の隙間から地面を窺えば、同じ歳である忍たま六年生の食満がこちらを見ていた。相変わらずの急勾配な眉毛ですね
「こんな所に居たのか!どうりで見付からないわけだ…まったく…」
何故か責められるような口調を使われ、眠気を覚ましてくれた事には感謝するが思わず顔を顰める。
溜め息をつく姿に少ーしだけ苛ついたけど、私に用があって捜してたみたいだし、このまま地面と木の上の距離感で声を張り上げ話し掛けられるのも嫌だから降りるとしよう。
ひょいと飛び降り、バタバタと風切りを音を耳にしながら身を丸めてくるりと体勢を整える。
数秒足らずで地面に着き足音を立てずに彼の前に降り立てば、顔を引きつらせながら「猫みてぇだな…」とか言われた
歳上以外の引きつった顔見せられても全然嬉しくないなぁ…。
「でー?私に何の話?」
別に食満とは仲良くもないのに、わざわざ私を捜していたとは何事か。
面白い事態にでも転がるのだろうかと口許が緩んでしまう
「話つっーか…その、頼みがある」
「頼み?」
くのたま最上級生である私に゛頼み゛だなんて豪胆な男だ。それとも、それに相応しい物を用意しているのか?
「くのたま達を止めてくれないか」
あらぁ…随分と予想を下回る展開。
反射のように、スッと目を細めるが食満は気付かないのか話し続ける
「止められるとしたらお前だけだろう?」
「それ、どういう意味?」
「は…、どういう…って…」
静かに訊き返してみれば食満の表情が固まった。
「椛が…お前がくのたま達の中で、纏め役…だろ?」
「纏め役?」
つい、首を傾げる。
忍たま達からそんな風に見られていたのか。ふぅん、…何て言うか、イメージの押し付けも甚だしいなぁ
確かに、今回の件だって私の提案が発端で彼女達は動き出したが、それは別に私を特別視してる訳じゃない。
忍務や実習は別として、私達の間に上下関係なんか無い。
同級生であり友人である彼女達に口出しだなんて出来るわけもないだろうに。っていうか、する気もない
「そ、それに…昔からお前は忍たまに罠とか、毒とか、仕掛けなかった…し…」
辿々しくも何とか言葉を紡ぎ出す目の前の忍たま。彼の顔色は可哀想なくらい白く、紙のようになっていく
「そうだね。だから、私がくのたまの中でも良心的だと思ったんだ?」
一歩近付けば、食満は更に血の気を無くしたような顔で僅かに後退り。
うん、原因は
私の殺気なんだけどね
「優しい私に頼めば助けてくれると思ったんだ?」
「そ…れは…」
だけど、後退りをしようにも至近距離で急に私の殺気に当てられ思い通りに動かないらしい。
あはは。学園の中で、くのたまと忍たまの違いはあれど同じ最上級生だもんね。しかも、今さっき言った通り私は忍たま達に実技の復習だったり術を試したりなんてしてこなかった。
だから、完全に気を緩めてたんでしょう?
そんな時に殺気なんて当てられちゃ堪ったもんじゃない。身体が強張って当然だ。
そして、くのたま相手に警戒心ゼロの奴が当然100パーセント悪い。
「ねえ、アンタが私の何を知ってるって訳?」
「…っぐ!」
漸く強張っていた表情筋が動き、苦痛の形に変わっていく
食満の首を掴んでいるのは私の手。
そりゃ、七松みたいな人体構造をぶっ飛ばしたような馬鹿力は私には無いけど
力は少なくとも人間を追い詰める術は知っている。
現に私の手を引き剥がそうと藻掻いてるが全然力が入っていないし、その目には怯えの色が滲んでいる。
「くのたまの何を知ってるつもりでいるの?」
「ガハッ!!」
女の細い指が男の首に食い込んでいく様は中々に良い光景だ。
流石に食満に身体的影響を残す事が目的じゃないので、手を離す。
無様に倒れ込む…て事はしなかったが、新鮮な空気が嬉しかったのか食満は何度も噎せて咳き込んでいた。
「勝手に勘違いして決め付けるのやめてよねー。吐き気がする」
「…ッ!」
食満の背中を擦ってやりながら告げれば、彼の目がまた恐怖の色を含んで見開かれた。
軽く労るように背中をポンポンと叩けば、呼吸も落ち着いたようだし私はさっさとこの場を去ろう
「待…っ、椛…!」
「ああ、そっか。まだ答えてなかったね」
掠れた耳障りな声が続く前に自分の台詞を被せる。
「その頼み、もちろん断るよ。」
くのいち教室に戻る道へと進みながら、手を振りはっきり返答してあげた。
数歩進んで無言の彼を振り返れば、首をさすりながら難しい顔で俯いている
「一つ、誤解を解くのならば」
私の声につられ顔を上げた食満と視線を会わせ微笑む
「私が君たち忍たまに手を出さないのは、ただ単に君たち相手じゃ…つまんないからだ」
さてさて、もう用は無いだろう。自室にでも帰ろ
あーあ、呆れた忍たまだ。くのたま相手にタダで頼みをきいて貰うなんて脳味噌お花畑かっての
結局実の成る言葉を一つも言いやしない。やっぱ忍たまってつまらない。
しっかし、食満のせいで今日は見たかった半分も観れなかった