「チャーターしたのはあの船だ。我々の他は乗組員だけだ。ほかに乗客はのせない」
「大きい船ーーっ!って、あんな船を電話一本でチャーターしちゃうって、…ジョセフさんっていったい何者……?」

「ムッシュジョースター、ものすごく奇妙な質問をさせていただきたい」
「奇妙な質問?」
「………詮索するようだが、あなたは食事中も手袋をはずさない…。まさかあなたの『左』腕は、『右』腕ではあるまいな?」
「……?『左』腕が『右』腕。左が右?たしかに奇妙な質問じゃ…。いったいどういうことかな?」
「妹を殺した男を探している。顔はわからない。だが、そいつの腕は両腕とも右腕なのだ」
「「「…………」」」

「50年前の戦いによる名誉の負傷じゃ」
「…失礼な詮索であった。ゆるしてくれ。もう3年になる。おれの妹は…雨の日、学校からの帰り道をクラスメートとふたりで歩いていた。故郷…フランスのいなか道だ。道の端に男がひとり背を向けて立っていた。不思議なことに、雨なのにその男のまわりは透明の膜でもあるかのように雨がドーム状によけて通っていた。突然クラスメートの胸がカマイタチにでもやられたかのよーに避けた。そして次に妹が辱めを受け、殺された。男の目的はただそれだけだった。九死に一生…命をとりとめたその友人の証言だ。その友人は男の顔は見ていないが、両腕とも右腕だったと証言した。だれもそれらの証言の内容を信じなかったが、おれには理解できた。おれがそれまで誰にも隠していた『能力』と同じものを、その男は持っていると思ったからだ。おれは誓ったッ!我が妹の魂の尊厳とやすらぎは、そいつの死をもってつぐなわなければ取り戻せんっ!おれの『スタンド』がしかるべき報いを与えてやるッ!そして一年前おれはDIOに出会った」

〈す…水晶に像が!うつっているのは!〉
〈幻想像(ヒジョン)だ…。わたしのではない…君…自身の心の中が、わたしの『能力』を通じて念写させているのだ。どうだねひとつ…わたしと友達にならないか?わたしは君のような『能力』を持つ者を探し、研究している……。『スタンド』と名づけたのだがね…〉
〈うう…?〉
〈君は悩みをかかえている…苦しみをいだいている…。わたしとつきあえばきっと、心の中から取りのぞけると思うんだ。今の水晶の像が君の『苦しみ』なんだね?力をかそうじゃないか…。わたしにも苦しみがあって、日光の下に出られない体なのだ。だからわたしにも力を貸してくれ。この男を探しだしてやるよ〉

「そうして君らを殺してこいと命令された。それが正しいことと信じた…」
「肉の芽のせいもあるが、なんて人の心のすき間に忍び込むのがうまいヤツなんだ」
「うむ…しかし話から推理するとどーやらDIOはその両手とも右腕の男を探し出し仲間にしているな」
「おれはあんたたちと共にエジプトに行くことに決めたぜ。DIOをめざしていけば、きっと妹のかたきに出会えるッ!」

「すみませーん、ちょっとカメラのシャッター押してもらえませんか。おねがいしまーす」
「やかましい。他のヤツにいえ!!」
「まあまあ、写真ならわたしがとってあげよう。君キレイな足しているから、全身いれよーね。シャッターボタンのように君のハートも押して押しまくりたいな〜」

「なんか、わからぬ性格のようだな」
「ずいぶん気分の転換が早いな」
「…というより、頭と下半身がハッキリ分離しているというか」
「下心丸見え」
「やれやれだぜ」



「ん?杏奈ちゃんはどうした」
「あいつなら船尾の方に行ったぜ」
「船尾ィ?海でも眺めておるのか?ここからでも見えるがの…」
「船の上でくらい自由にさせてやれ」
「わかっておるわい。男連中の中のただひとりの女の子じゃからな、プライベートな時間も必要じゃ。手出しはせんよ」



「くうーーーッ!やっぱり海っていいわ!自由ッ!って感じで。それに綺麗だし」

「ねえ、あなたもそう思うでしょう?ブルー」

「さて、みんなから遅れとってられないしスタンドを使うことに慣れないとね。まずはあなたがどこまで出来るのかっていうのを理解しないとね」



「ギニャアァッ」

「おほ〜〜〜〜っ、飛び込んだぞ…。元気ぃーっ」
「陸まで泳ぐ気だ」
「どうする…?」
「けっ、ほっときな。泳ぎに自信があるから飛び込んだんだろーよ」
「ま…まずいっスよ、この辺はサメが集まってる海域なんだ」

「ねえ、今の叫び声は何?船尾まで聞こえて来たわよ」
「この船に密航してたガキがよお、海に飛び込みやがったんだよ。ホレ、あそこだ」
「飛び込んだァ?子供が?」

「おい小僧!もどれーッ!」
「サメだ、サメがいるぞォ」

「あたしが行くわ、碧の女帝(ブルーエンプレス)!」
「!?」

「やれやれだぜくそガキ。ん?てめー」

「承太郎!サメの他に何かいる!気をつけてッ」
「!」



[*prev] [next#]

back

17 / 111
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -