15_揺れる体温


15. 揺れる体温


扉の開く音がして振り返ると、髪が濡れたままの伊織がそこにおった。
もこもことした上下セットの部屋着やのに半パンで、白い脚が大胆に見えとる。あっかん……もう俺、ギンギンになる。

「ゆ……侑士先輩あの……髪を、乾かしたいんですけど」
「ああ、そうやんね。こっちが洗面台や。そこにドライヤーあるから、使い?」
「あ、ありがとうございます」
「ん、ほな俺、入ってくるな?」
「はい、い、いってらっしゃい」

目を合わせるのが恥ずかしいんか、伊織はうつむいたまま洗面所に入っていった。
俺は風呂で体をゴシゴシ洗った。たわしでこすったんか、いうほどに、体が赤くなるまで洗った。やって、伊織を抱くんや。これまでの火遊びで汚れた自分を流しさりたい。
堪忍な伊織……俺もお前がはじめてやったらよかった。せやけど、これからはもう、俺、伊織しか抱かへん。せめて気持ちだけはまっさらにして、伊織をこれから抱くで?
ほんの少しヒリヒリとした痛みを感じながら、洗面所に入る。
髪もしっかり乾かさなあかん。いつもは自然乾燥やけど、これから伊織を愛でるんやし、冷たい思いはさせたくない。
風呂に入ってから洗面所を出るまで、時間はわずか10分程度やった。さっきまでちょっと落ち着いとったのに、部屋着姿の伊織を見たせいやろう、逸る気持ちを抑えらへん。
リビングは静まり返っとった。ここにおらんっちゅうことは……どう考えても、伊織はもう俺の寝室で待っとるんや。おかげで、バクバクバクバク、心臓がうるさくなっていく。

「……伊織、おる?」
「あ、はいっ」

一応、ノックをすると、小さい小さい伊織の声が、微妙に震えて聞こえてくる。
……絶対に優しくするで……そう心のなかで誓いながら、俺はゆっくり扉を開けた。

「伊織……」
「……ご、ごめんなさい。ちょっと、大胆、すぎるかな……」

うっすらとした明かりのなかで、伊織はワンピース型のキャミソール姿で待っとった。ちょお待ってマジで悩殺……なんやそのセクシーランジェリーは。誰が教えたんや、と思って浮かぶ顔はひとりしかおらん。千夏ちゃん……心の底から感謝するわ。
言うて、俺も腰にタオルを巻いただけやったんやけど……伊織と気持ちが通じたみたいで、それがやけに嬉しかった。

「明かり、このままでええ? 真っ暗のほうがええ……?」
「ゆ、侑士先輩は?」

俺はそら、煌々としたライトのなかで伊織を抱きたいけどやな……とは、さすがに口にはできん。

「伊織、俺に遠慮なんかすることあらへん。ホンマのこと言うてええよ?」そうや、伊織ははじめてなんやから。
「あ……じゃあ、これくらいの明かりが、いいです」へえ? 意外。もう少し暗いほうがええっていうかと思ったけど……。「侑士先輩のこと、ちゃんと、見たいから」

ぎゅーん! とまた俺の俺に血があがっていくのを実感しながら、それでもなんとか平静を装って、伊織の隣に座った。

「俺も、伊織のこと、ちゃんと見たい。ありがとう」
「ゆ、侑士先輩は、あんまり見ちゃダメ……」
「ふふ。ん。わかった。まじまじ見たりせえへん。な?」
「う、うん」

ホンマはめちゃくそ伊織の体をまじまじ見たかったんやけど、伊織が俺の上半身を見ただけですでに緊張しとったで、俺はそっと腕をなでた。

「めっちゃ、すべすべ……」
「……そ、そうかな」
「ん、綺麗やね伊織」

伊織の肩から腕にかけて、すーっと手のひらで線を描くように。
いきなりおっぱいを揉みたいのは我慢した。優しくする……はじめての伊織が、怖がらんように……。
それでも、うぶな肌に触れるだけで気持ちがよかった。綺麗に浮き出とる鎖骨も、今日から全部、俺のものや。ああ、伊織の肌だけで、魅了されてまう。

「色っぽい……かわいい」
「そ、嘘だよ、恥ずかしい……」
「嘘やないよ。ホンマに綺麗やし、かわいい」

耳もとでささやきながら、首筋にそっと触れる。そのまま俺は、伊織の唇に軽くキスした。
瞬間、伊織はきゅっと覚悟を決めたように目をつむった……いじらしく震えた肩に俺の鼓動も早くなっていく。もう一度、今度はゆっくり、ぽてっとした下唇を舐めると、控えめに開かれた。めっちゃ色っぽくて、かわいい……。
わずかに覗いた舌先に俺の存在を伝えたくて、すっと舌を絡めるように入れていくと、伊織の吐息が荒くなっていった。

「ン、ふあ……」
「伊織、目、開けれる?」
「え……」
「見つめ合おうや。キスのときも」

素直な伊織が目を開ける。とろとろの目に魅了された俺がそのまま長いキスをくり返しとると、伊織の肩がピクピクと反応しはじめた。ああ、感じてくれとる。よかった……。
左手を、そっと背中に添えて上半身を支えながら、もっと深いキスをする。やがて、くちゃくちゃとお互いの舌から音がもれはじめた。
止まらんようになる。頬に触れとった右手を、肩から二の腕をなでるように送ってから、俺はようやく、伊織の乳房に触れた……。

「はっ……あ……」
「嫌やない……?」
「ん……」こく、と頷きながら。「嫌じゃない」

伊織の体が熱くなっていった。押し倒したいのを我慢して、俺はそのまま全身に触れた。お腹、太もも、内また、ふくらはぎ……ほんの少し、触れる程度に。
俺の指先が伊織の熱をあげていっとるんやと思うと、たまらん気持ちになる。かわいい声も、俺をめっちゃ刺激した。

「ん、ンっ……は、あ……」
「かわいい声……伊織、好きやで」
「侑士先輩……わたしも、大好き」

ぎゅっと伊織が首に巻きついてきて、いまや、と確信した。少しだけ強めに抱きしめてゆっくりと体重をかけていくと、伊織も倣うように、ベッドに仰向けになった。
それでもいきなり乗っからんように、俺はすぐ左側によけた。伊織の体に沿うようにして、頬を優しくなでながら、俺はもう一度、肩からじわじわと全身をたしかめた。
乳房、お腹、太もも……そこから自然と、下腹部にも軽く手で触れる。あとでまた、くるからな……そんな俺の来訪を、伊織に伝えて。

「伊織……これ、脱がせるよ?」
「うん、うん……は、恥ずかしい」
「大丈夫や。そっとな?」

ゆっくりと肩紐をはずしていった。俺から顔を背けるようにしてぎゅっと目を閉じる伊織の胸もとの布を、静かに下にずらしていく。ぷるんっと、白いふくらみとピンク色した先端が顔をのぞかせて、ああもう、めまいがしそうや。

「伊織……めっちゃ綺麗……」
「う、恥ずかしいよう、侑士先輩」
「あかんよ、伊織」
「え……」
「俺らもう、すっかり恋人同士やん。こんなときくらい、侑士って呼んでや?」

すでに潤んどる瞳が揺れる。きゅっと乳房を下から持ちあげるように愛撫すると、伊織の唇がパッと開いた。あわ……めっちゃ……エロい。エロいし、かわいい。

「あ……侑士」
「うん。なあに伊織?」
「好き……」
「ん、俺も……伊織のこと、めっちゃ好き。愛しとるよ」

すでに硬くなっとる先端を親指ではじいてから、伊織の首筋に頭をおろした。舌でツー……となぞるようにキスしながら、ぷるぷるの胸を、円を描くように包みこんで、指の間にそれをはさんだ。

「あっ……ん、侑士っ……」
「もっと呼んで? 好きやで伊織……」
「ゆ、侑士……ん、ああっ」

まだ胸をいじっとるだけやのに、伊織の脚がピン、と伸びた。めちゃめちゃかわいい。胸だけでイカせたなる。そんなんしたことないけど。
我慢できんくて、両手で伊織を愛撫する。谷間に鼻を埋めると、伊織の優しい香りが興奮をかきたてていった。

「侑士、そ、そんなに、あ、あっ」
「キス、させてな? 恥ずかしがらんで、もっと声、だしてええよ?」

ちゅうっと舌を絡めたあと、胸の先端に吸いついた。また、伊織の脚がピン、と伸びる。それに合わせるように、俺の腰も勝手に動きだした。ああ、入りたい……いや、あかん、我慢や。まだ、これからやから。

「や、あ……侑士っ」
「はあ……伊織かわいい。離さへんよ?」

吸って、舐めて。伊織の胸が濡れていく。俺の舌先が絡みついて、ちゅくちゅく音を立てるたびに、伊織の手が俺の頭を抱きしめて、ビクビクと肩を揺らす。気持ちええ証拠や。ああ、伊織……俺もめっちゃ、最高やって。

「ん、んんっ、侑士……っ、あ、ダメ……」
「気持ちええんやろ? 嘘はあかんで?」
「だ、だって、あ、あっ……侑士、すごくエッチ……」
「ん……伊織も、めっちゃエッチ……」

執拗に舌先で転がしとると、ついに伊織の腰も動きだした。ああ、待っとった。こうなったらもう、絶対に濡れとるはずや。
あえぎ声も、さっきよりも大きい。かわいい。エロい。もう、全部めっちゃ好き。
むっちゃ狂わせたい……そう思う一方で、少しだけ理性も働いた。激しくキスをしたいけど、ここからが大事やしな……。

「んんっ……ん」

胸から顔をあげて、伊織の唇を優しく貪った。カラン、コロンと、まるでグラスに入った氷が揺れとるような音をさせながら、ゆっくり、ゆっくりと、下半身に手を伸ばした。

「は、あ……! 侑士……」
「ん、ええよ。大丈夫や。怖かったら言うて?」

すーっと下着のなかへ指を入れていくと、くちゅ、と伊織の愛液が指先についた。
めっちゃ……濡れとる。あかん、天にも昇る心地やねんけど。めっちゃ感じとるやんっ!

「怖くないけど……恥ずかしい……」
「なんで? ぐちょぐちょやから?」
「や、侑士っ……も、そゆこと」
「なんも恥ずかしいことないよ? いっぱい感じてくれとるの、俺、嬉しい」
「うう……」だって、はしたない……と、泣きそうな顔をする。
「なんでえ? めっちゃかわいいよ? 伊織、めっちゃ好き。愛しとる。俺の伊織が、俺の愛撫で気持ちよくなってくれとる。最高の時間や」
「侑士……」
「それだけ、俺、愛されとるって実感する。わかるやろ?」

執拗にくり返す愛の言葉に、伊織は顔を赤らめながらも、こくん、と頷いた。
セックスしとるときに、愛の言葉やなんか、俺、吐いたことがない……せやけどこれは、全部、本音やから。
伊織がめっちゃ好き。好きすぎるから、めっちゃ愛しとるから、伊織とひとつになりたいんや。

「わたしも、好き……侑士のこと、愛してる」
「ん……せやけど、女の子の体はデリケートや。俺に遠慮せんで、嫌やったら、すぐに言うてな……?」
「侑士……優しい。嫌じゃないよ?」
「ありがとう。伊織も優しい。ホンマ、大好きや」

首をぶんぶん振る伊織に微笑みながらキスをして、今度はゆっくり、下着を脱がせた。
かわいい、ピンクの下着……リボンが控えめで、伊織らしい。
するすると脱がせていく下着が足先までたどり着いたとき、俺はすぐにそれを枕の下にもぐりこませた。
濡れてしまっとる下着をそのままそこに放っとくやなんて、あんだけ恥ずかしいって連呼する伊織やしな。嫌に決まっとる。

「侑士……」
「ん……? どないした? 寒い? 喉、渇いた?」
「ううん。すごく優しい……愛してる、侑士」

俺の気遣いが、伝わったんやろう。「愛してるの響きだけで強くなれる気がしたよ」って、スピッツも言うてたもんなあ。気がするだけやない、ホンマに強くなれるわ。
そのまま俺も、静かにタオルをはずした。伊織だけ素っ裸なんはかわいそうやったから、なんやけど……見ると、伊織は大きく目を見開いとった。
え、あかんかったか? と、焦りが戻ってくる。え、えぐいんやろか。でもお兄さんも弟もおるし、見たことないわけや、ないよね……?

「……わ、あ。あ、あ」
「ど……どうしたん伊織? 気色悪いか?」
「ち、違う。違うよ……」

自然に流れていくかと思っとったのに、伊織はまだ、まじまじと俺の俺を見とった。それだけで、ビクッと反応しとる自分がめちゃめちゃ恥ずかしい。

「ちょ、伊織……見すぎや。俺かて、恥ずかしいで」
「あ、ご、ごめんなさい、だって……」少し間を置いたあと、小声でぼそっとつづけた。「……そんな大きいの……入るのかな……」
「え、あ……」ちょ、めっちゃ興奮すること言うやん。「怖い?」
「だって……本当にすごく、大きい……」

あかん……めっちゃいますぐに伊織のナカにぶっ刺したい。ああ、あかんあかん、それはもっとあかん。せやけど、めっちゃ心臓がバクバクしてきた。舞いあがるってそんなこと言われたら。そら、伊織は恐怖心から言うとるんやろけど……そんなとろけた顔で、なんちゅう褒め言葉や。
まあ、たしかに? ちょっと大きめなんは自覚しとるけど。せやけど大きけりゃええっちゅうもんでもないやろし、はじめての伊織は、逆に怖いやろう。それに本来、サイズなんかどうでもええんや、AV男優ちゃうんやから。女の人の体は、ちゃんと入るサイズに合わせる神秘的な力を持っとる。けど……いまの伊織の目に、俺のが巨大に映っとることは、一定、問題やよな……。

「怖い? やめとくか?」やめたない、絶対。せやけど無理も、させたない。
「大丈夫……ちょっと、緊張するだけ、だから」
「ん……ほな、リラックスしような……? 伊織、こっち向いて?」

完全に俺のをじっと見つめる伊織の顎をあげて、キスを落とした。まだ、大丈夫や。急に挿れたりせえへんから。心のなかでそう伝えながら、手のひらで伊織の下腹部全体を覆うように、静かに触れた。
ゆっくり、じんわり、あたためるように。少しだけちゅくっと音がして、指先に蜜がつく。はあ……もう、めっちゃ濡れとる……たまらん。

「あっ……はあ……」

緊張しとったはずの伊織の吐息が、また乱れていく。声をもっと聞きたくて、俺は強弱をつけながら揉むように、当てた手のひらを動かした。
すぐにでも指を挿れてかき回したかったんやけど、そんなん絶対あかんよな。伊織ははじめてなんや……それやなくても俺のせいで、めっちゃ怖がっとるし。マッサージするみたいに、優しく、や。
じわり、じわりと。いちばんの性感帯やろう小さな蕾も、指の腹で優しくなでた。痛くないように。怖がらんように。

「あ、あんっ……はあ、侑士……」
「ん、気持ちいい?」
「う、うん」

伊織の脚が、また伸びていく。同時に、やわらかかった蕾が、硬くふくらみはじめた。
医学的には男性器は、もともとこのかわいい蕾が伸びたもんや。気持ちええに決まっとる。俺も、こすられたらめっちゃ気持ちええもん。同じように、硬くなるし。

「はあっ……あ、ゆ、侑士、あ、ああっ」
「ええよ? もっとようなって?」

せやけど男とは違って、女の蕾の役割は、感じるためだけにある。それもまた、めっちゃ神秘的や。あげくこんな好きな人のやったら、余計に愛しくなって、もっと優しくしたくなる。
そのままたっぷり時間をかけて愛しとったら、伊織の蜜がもっとあふれてきた。とろとろ、とろとろ……俺の中指に沿って流れていく。
……はあ、あかん、もう我慢できん。

「えっ、侑士……?」
「キスさせて? 伊織のかわいいとこに」
「や、まって、恥ずかしいっ」
「大丈夫や……まじまじと見たり、絶対せえへんから」

めっちゃまじまじ見ながら、少し強引に脚を開かせて、俺は伊織の花弁に舌を這わせた。
とろんとした蜜が舌に溶けて、やわらかい弾力が唇を包んでいく。俺の伊織の、かわいいグミ。んん、至福……全部、食べたい。

「ひゃっ……! ああ、あ、う、嘘……ああん、ほ、本当に、な、舐めてる」
「んっ……かわいい」その感想も、めっちゃかわいい。「気持ちええやろ……?」
「あ、はあ、う、んンっ……」

伊織の手を握りながら、俺はピチャピチャと音を立てた。舌を当てると、くにゅ、と赤くなったふにふにのお肉が口のなかで溶けていく。
蕾も、花弁も、まんべんなく優しく、ときにはちょっと激しく、舐めたり、吸ったりをくり返すと、握りしめとった伊織の手の力が、どんどん強くなってきた。

「あっ……あぁん侑士っ……! い、イッちゃいそ……! あ、あっ」
「ん……ええよ、イッて……?」

余裕ぶっこいて返事したけど、内心、めっちゃ興奮した。イクって感覚を、伊織が知っとる。ちゅうことは、やで……伊織もひとりエッチとかするってことや。
そんなんもう、めっちゃヤラしい……しかも初体験の子をイカせるとか、俺めっちゃやるやん!
こうなったらなにがなんでもイカせたい。執拗に舌を動かしながら、俺は片方の手で伊織の上半身にも手を伸ばした。胸の先端をつまんでクリクリといじると、また妖艶な声が響いてくる。

「や、あ、ああんっ、侑士っ」
「我慢せんで伊織? イッて?」
「あっ、あっ……、も……はあ、ああっ……ンッ!」

奥のほうに舌を這わせて、優しく蕾の付け根あたりを指で揺らした瞬間やった。伊織の腰が大きく揺れて、俺の唇に伝わるほど伊織の花弁がきゅんきゅん震えとる。
手の力が、だんだんと抜けていく。めっちゃ綺麗な、色っぽい伊織の恍惚とした表情に、俺はしばらく魅了された。





千夏から聞いた話やネットの体験談を見て、わたしはとにかく、臆病になっていたのだ。なんせどこを見たって、感想は、「ものすごく痛い」ってそればっかり。
2回目は大丈夫とか、わたしは1週間つらかったとか、そのあとのことはまちまちだけど、「初体験は痛くてあたりまえ」説は、侑士先輩とひとつになる前からそのことで頭がいっぱいで、正直、緊張しかなかった。でもそれを超えなきゃ、侑士先輩とは愛し合うことができない。
でも思った以上に、侑士先輩は……すごく、すごく優しかった。

「伊織、めっちゃかわいい」
「も、まじまじ見ないって、言ったのにっ」
「見てへんよ。伊織のイクときの顔はばっちり見たで?」
「うう、いじわる……」
「ふふ。でも、気持ちよかったやろ?」
「う……うん」

だからこそ、イクなんてことはないと思っていた。こればっかりは、想像と違う展開だった。彼氏とのエッチでイク経験をした人なんかほぼいないってのが、ネットの情報だったから。おまけにわたしは初体験だ。だけど、イッちゃった……。
だって侑士先輩、いっぱい好きって言ってくれて。愛してるって言ってくれて。そのたびに、体がうずいた。恥ずかしいけど……その言葉だけで、感じちゃって。
キスだって、すんごい時間をかけてくれたし、大事なとこに到達するまでも、いっぱい体中にキスをして、なでてくれて。
緊張しきっていたわたしの体は、いつのまにかほぐされていた。そしたら、あっという間に……イッちゃった。

「伊織、ひとりでするんやね?」

チュ、チュッと何度も唇にキスをしながら、侑士先輩は満足そうだった。はああ、裸の侑士先輩に抱きしめられてる。しかもすごい笑顔。ああーんもう、死んでもいい! とは思うのに、ものすごく恥ずかしいことを聞かれて困惑する。

「え、えっ!?」
「そうやろ? やないとイクなんてわからんやん」
「し、しないっ」
「嘘やあ? 恥ずかしがらんでええって。俺もする。女の子も大抵はするもんや。普通やで?」
「……そ、それは」
「かわいい。これからもいっぱいしてええよ? でも俺ともいっぱいしよな?」

いじわるな侑士先輩の質問にも、また感じはじめたのを自覚していた……ひとりでそんな恥ずかしいことしているのを自白させられたというのに、わたし、スケベだしドMがすごいんじゃないかって、自分でも心配になる。

「俺も、伊織とひとつんなったとき、一緒にイキたい……」
「うん……」

しかし、そうなのだ。問題はここからなのだ! と、先輩の声で我に返る。
まだ、わたしと侑士先輩は、ひとつにはなっていない。わたしがよくしてもらっただけで、侑士先輩とはまだ……本当の意味で、つながれたわけじゃないから。
ピンと背筋を伸ばした。さっき見た侑士先輩の大きいのがぽてぽてと太ももにあたっている。アレが自分のなかに入るなんて、とても、信じられないけど……。でもアレを挿れて、動かして、それで、それで侑士先輩がイッたら、エッチしたってことに、なるんだもんね?

「ん……伊織、少し疲れたな……? マッサージしたる。リラックスして、な……?」
「あ、うん……」

緊張がまた、顔にでてしまったのかもしれなかった。
先輩が優しい声で、体をなでていく。わたしをうつ伏せに促すと、濡れた唇で、チュッチュッと音を立てながら、キスとマッサージをくり返してくれた。
肌と肌が重なって、さらさらとした感触が気持ちいい……。

「背中もめっちゃ綺麗やな、伊織」
「ほ、本当?」
「ホンマ……めっちゃ綺麗。好きやで?」

また、心が溶かされていくのを実感した。ううん、本当は、怖いのだって残ってる。
だってネットじゃ、「初体験は鼻から大根」なんてたとえがあったくらいだ。いったい、どうやったら鼻から大根を入れたりだしたりすることができるというのか。いったい、誰がたしかめたのか。そんなのもう、「鶴は千年、亀は万年」じゃないか。「誰が見たんだ!」と言いたくなる……不明瞭なことに、不安があおられまくっていた。

「わたしも、好き……」
「ん。もう伊織のこと、離さへんからな? ずっと一緒やね?」
「うん……ずっと、一緒」

でも侑士先輩はこの恐怖心もきっと、わかってる。理解してくれてるからこそ、こんなにも優しい。ネットにあるような初体験のレポートよりも、ずっとずっと優しかった。こうしてるあいだだって、ずっと声をかけてくれる。愛を、ささやいてくれる。
「愛しとるよ」「好きやで」「離さへんよ」……そうやってわたしの名前を、何度も呼んでくれる。キスだって、愛撫だって、すごく優しくて。それだけで、目頭が熱くなりそうだった。

「なあ伊織……?」
「うん?」
「ひとりエッチのとき、なに考えるん?」
「な……」

背中からぎゅっと抱きしめられて、肩に落ちていくおだやかなキスにうっとりしていたら、突然に聞かれて、一気に熱くなっていった。
なんてことを聞いてくるんだああああっ……そういうことをするようになったときにはもう侑士先輩が好きだったんだから! つまりその……なんてこと、言えるはずないじゃんっ、はしたない!

「教えて? エッチな動画とか見たりすんの?」
「そ、そんなの見ないもんっ」見たことはあるけど……自慰のときは見ない。
「んー? ほなエッチな漫画?」
「も、それも見ないっ」見たことはあるけど……自慰のときは見ない。
「ほな、イマジネーションっちゅうやつ?」

くるっと、体をひっくり返された。超いじわるな顔をしているのかと思いきや、侑士先輩は微笑んでいた。ゆっくり、だけど濃厚なキスが落ちてくる。
ああ……これは、信じられないほどの自白剤だ。こんなキスされたら、なんでも白状しちゃう。

「……そ、それは」
「俺は、いつも伊織のこと考えながらしとるよ?」ちゅぱっと、キスの音が頭の奥まで響いてくる。「伊織とこうなりたいなって、ずっと思っとった。伊織のこと考えただけで、すぐにこんなんなってまう」

ぐりっと、中心に押し当てられた熱に、クラクラしそうだ。侑士先輩、わたしのこと考えながら、いつも、こんなことになっちゃってるの!?
やだもう、や、やだもう、す、すっごいエッチー! はあ、どうしようすごい興奮する。
はじまってから、もうすでに30分以上はゆうに超えている。きっと、たぶん、そろそろなんだ。
想像するだけで、潤いが増していくのがわかった。ああ、わたしってば……ホント、スケベ……。

「んっ、ン……侑士」
「伊織は? 教えて?」
「わ、わたしも、侑士のこと……は、あ」ゆっくり、また侑士先輩の指が、中心に届く。
「俺のこと想像して、いつもこんなに濡らしとったん?」

どおりで、濡れやすいわけやね? と、くすくす笑った。
はああああ……これがいわゆる、言葉攻めというやつなんだろうか。恥ずかしい。すごくエッチなこと言ってくる侑士先輩……ううううああああ興奮しちゃう、どうしよう、もう、こんなのエッチが大好きになっちゃう、ああ、はしたないっ。でも興奮する!

「侑士……あ」キスしながら、また、胸の突起が指先にまさぐられた。
「かわいい……またこんなに硬くして」
「あ、う……あんっ、恥ずかしい……」
「大丈夫や。このさき一生、俺にしか見せん姿やろ?」
「う、うん……」
「俺も、もうお前以外の女やなんて、考えられへんよ、伊織……俺のこのさきも、伊織にしか見せん」
「侑士……」
「ホンマ……めっちゃ、めっちゃ愛しとる。誰よりも、なによりもやで」

果てたばかりの全身の熱が少しだけ冷めていたせいだろう。また、はじまったときと同じように、体がじわじわと熱くなってきた。侑士先輩、イッて疲れちゃったわたしを気遣ってくれたんだ。本当なら、すぐにでも、ひとつになりたかったよね……?

「好き……侑士。わたしも愛してる」
「ん……せやから伊織……ひとつになろな?」
「うん……」

言いながら、自然に枕の下へ手を伸ばした。唇が離れた隙に、ピチッとビニールの破れる音。侑士先輩が口で封を開けて、またキスが落ちてくる。
……いよいよなんだ。いよいよ、大好きな侑士先輩と、ひとつになる……。

「伊織……この姿勢がいちばん楽やと思うから、このままするな? 平気?」
「うん……」

体位なんて、いろいろ見てきたけどこれがいちばんよさそうだと、わたしも思う。いや、わからないけど……自分が動くなんてうまくできそうにないし……ここは、経験者である侑士先輩におまかせしたほうがいいよね。
緊張が高まってくる。ふう、ふう、と深呼吸をくり返していると、先輩はそっと、わたしの中心に指をあてた。ちゅぷ、と音がする。うわあ、恥ずかしい……。
さっき舐められといてなに言ってんだって感じだけど、やっぱり恥ずかしい。

「んっ、侑士っ……」
「力、抜いてな? 指、挿れるよ?」
「はあ……うん」

侑士先輩が、愛液をたっぷりと自分の指にまとわりつかせていた。それだけで頭がおかしくなりそうだ。
ゆっくりと……ナカに指が、入ってくる。侑士先輩の、指……わたしの、ナカに。はあ、爆発しそう。

「どう? 伊織。痛ない?」
「うん、平気っ……う、はあ」

そりゃわたしだって、指くらい、挿れたことありますけど。でも、侑士先輩の指は、わたしのとはなにもかも違う。ごつごつしてるし、太くって……わたしのより、ずっと奥に届いてくる。

「あ、ああっ……」
「ん。ここ、気持ちええ?」
「う、うん……あ、そこ……だ、だめ」
「ん? ここがええの?」
「あっ……」

とってもゆっくりした動作なのに、わたし、どろどろになってる……だって、さっきから、くちゅくちゅって、音が……。あああああううう、恥ずかしいっ。

「侑士っ……」
「ん……かわいすぎ、伊織」
「ン、んっ」
「キス、いっぱいしながらな? ええ? 力抜いてな?」
「……うん……、ンっ……」

先輩の指が、二度と抜けない物みたいに、ナカで圧しつけられていく。ゆるやかな刺激がいじらしくて腰が勝手に動く。親指も、そっとわたしの蕾をはじくから。
はあ、ダメだ……こんな、気持ちいいとか、そりゃ千夏が色気を増すはずだよ……こんなの、幸せすぎる。

「はっ、ああっ……侑士っ、あっ」
「伊織っ……」
「すごく……気持ちい、ああっ」
「ん、もう、伊織めっちゃ締めつけてくる……俺も、我慢できへんわ」

侑士先輩の目が、はじめて、切なく揺れた。ナカから指が引き抜かれていく。彼はその指を、見せつけるように舐めとった。

「そ、き、汚いよっ」
「全然、汚くない。伊織、ホンマ、めっちゃ好き」

愛し合うって、こんなに、幸せなの……?

「挿れるで……? ええ?」
「うん」

侑士先輩の熱が、中心に強く当たってきた。くちくち、音がする。

「侑士……」
「ん……はあ、いくで、伊織……」

ピタリと当てられているだけの状態で、腰が前後に揺らいでいく。侑士先輩の屹立が、自分の中心から見え隠れする。緊張がまた、押し寄せてきた……それはたぶん、期待も一緒だ。

「やっと、一緒になれるな?」
「うん……」
「緊張しとる……?」
「うん……、ドキドキする……」
「ん……実は俺も……最初からずっと手震えとる。堪忍な、余裕ないで」

じっと見つめて、髪と顔をそっとなでて……ゆっくりとした動作でまた舌を絡めると、侑士先輩の亀頭部が、中心に強く押し付けられた。
あ……と声をもらした瞬間だった。先輩の左手の人差し指がわたしの口のなかに、少しだけ入ってきて。

「えっ……?」
「伊織……お前だけに、痛い思いはさせへんよ……愛しとる。ずっと一緒や」

なんのことかわからないうちに理解したのは、それからまもなくだった。ゆっくり、侑士先輩が入ってきた瞬間、肉が無理にこじあけられていく痛みを感じて、わたしが歯を、食いしばったからだ。先輩の指を、ガチッと噛んでしまっていた。

「侑士……やっ」
「痛いな? 堪忍」
「や、指……はずしっ……んっ、つう……!」
「く……はあ、つっかえた……もう少しや」

侑士先輩の指は、第一関節が折り曲げられた状態で、わたしの下の歯にひっかけられていた。だというのに、膣の痛みが強烈で、口のなかに気が回らない。
まだ、すべては挿入されていない。だけど体が、その訪問を拒んでいた。痛い、痛い……すごく、痛いっ……!

「んっ……んんんんんっ」
「つっ……伊織、もうすぐや。堪忍な、んっ」

じわじわと、侑士先輩がわたしのナカに入ってくる。そのたびに先輩の手が、指が……、震えているのをわかっているのに。わずかな血の味が、口のなかに広がった瞬間だった。
グッと、侑士先輩の腰が、深く打ちつけられた刹那、激痛がドンっとお腹の奥から突き抜けていった。

「んんっ!」
「く、つう……伊織……大丈夫か?」
「ゆ、侑士……」
「はあ……堪忍な? 痛かったな?」
「指が……侑士」

終わったと、わかったから……侑士先輩の手をとって、自分の頬に当てた。
まだ、ジンジンとした痛みはつづいたままだ。でも、先輩の震えた指のほうが、わたしの、心が、痛い……。

「……こんなの、なんで」
「伊織……俺なら、大丈夫や。な?」

噛んでしまった人差し指に、そっとキスをして、侑士先輩を見あげた。目尻から、涙が落ちていく。
幸せだよ……侑士……わたし、こんなに大切にされるなんて、思ってなかった。

「伊織? 泣くほど痛かった……? ごめんな?」
「違う……嬉しいから、泣いてるの。侑士……」こんなことするなんて。「痛かったでしょ?」
「ん……ちょっとな。せやけどそんなん、伊織だけが痛いやなんて、フェアやないもん」
「侑士……」

俺、めっちゃ嬉しい……。つぶやいて、優しいキスを落としてくる。

「伊織のナカ、あったかい……。ゆっくり、動くな?」
「うんっ……」
「誰が伊織を抱いとるんか、よう、目に焼きつけてな?」
「うん、うんっ」

涙を拭いながらうなづくと、先輩は、じわじわと動きはじめた。奥にくる度に、チリッとした痛みと、喜びが走っていく。
とてもゆるやかで、心地のいいリズムだった。侑士はずっとわたしにキスを送ってくれた。愛されてる、すごく……その確信がだんだんと、わたしの体に、官能を与えていった。

「あっ、ん……ああ、侑士、も、大丈夫そう」
「はぁっ、ホンマ? 無理しとらん?」
「うん、もう、はあ、ああ……気持ちいい、侑士……」
「はあ……俺もめっちゃ、気持ちええ……伊織っ」

ほんの少しだけ残っていた痛みが、優しさに包まれていく。愛する人に身も心も一緒に抱かれたことで、全身が満たされていた。
ふたりの体温が、幸せの船をこぐようにベッドを揺らす。熱っぽい侑士先輩の瞳も、同じように揺れていた。ずっと見つめあって、一緒に溶けていきたい。

「ああ、はあ……伊織、好きや」
「うん、わたしも、侑士が好き……」

キスが、耳に、首に、胸に、手に、脚に。
そのたびに、わたしのナカがうずいて、ぎゅうぎゅうに中心が甘く、苦しくなっていった。
気持ちいい……すごく、愛しい。

「ん、ンンッ……侑士っ、あ、も……」
「伊織……イキそうなん? めっちゃ、締めつけ……ンッ」
「う、うん、あ、あっ……」

ゆっくりだった揺れも、だんだんと早くなってきた。先輩の背中が、汗でしめっていく。
お互いの胸のあいだで交差する熱が、時間を忘れさせるほどに。

「伊織……愛しとる……好きや……っ」
「侑士、あ、う……わたしも、愛してる……あっ、ああっ、い、イッちゃう……」
「ん……一緒に、一緒にイこ? ああ、俺も、も、あかんわ……っ」

ぱちゅん! と音が激しくなった。乾いた音に、また官能が押し寄せてくる。切ない侑士先輩の表情と荒い息遣いが、たまらなく心を揺さぶっていく。
どうしよう、気持ちよくて、幸せで、本当に、泣いちゃいそう……っ。

「ああ、く……イク……伊織っ、ンッ……!」
「侑士、ああっ……!」

先輩が強く腰を突きあげたとき、わたしも同じように、ビクビク体を震わせながらしがみついた。
同時に、ドクン、ドクン、と、わたしのナカで、脈が打たれていった。
嘘みたいだ……ナカイキなんか熟女にならないとできないって、ネットに書いてあったのに……。わたし、いま、侑士先輩と一緒にイッた……。

「はあ、あ……めっちゃ、出た……」
「侑士……」

侑士先輩のアレが、わたしのナカで、出してる……先輩の、ピクピク、してる……。
う、わ、はあ、すごくエッチ!

「伊織……結ばれたな? 俺ら」
「うん……結ばれた……う、恥ずかしい」
「くくっ。なーんや、いまさら。あんなに乱れとったくせに」
「も、だから恥ずかしいのーっ」

笑って見おろしてくる彼に恥ずかしさをごまかしたくて、わたしもケタケタと笑った。
心を溶かすようなキスを、お互いが送りあいながら。





離れたあと、先輩はすぐに枕元に用意していたタオルを差しだしてくれた。
終わったあとのことも全部、考えてくれてたんだなあと思う。侑士先輩はそういうところが律儀というか、すごく真面目で、ジェントルだ。
やっぱり大切にされているんだという実感が、どれだけ考えても幸せで、後処理をしている彼の背中に抱きついた。

「おうおう、なんやあ、どないしたん?」
「好き」
「んー? めっちゃ甘えたさんやん」ぽいっと、ゴミ箱にティッシュを捨てている。あれはつまり使用済みの、ということだろう……はあ、もう、エッチー!
「ぎゅうしたくなったんだもん」
「ん、ぎゅうしよな?」

頬に触れる、侑士先輩の優しい手。その指先が痛々しかった。噛んでしまった後悔が襲ってきて、指先にそっと口づけると、先輩は微笑んだ。

「ごめんなさい……侑士」
「なんでえ。平気やってこんなん。伊織のほうがよっぽど痛かったやろ?」
「最初だけ……でも、すごく幸せだったよ?」
「ん……俺もや。最初だけ。あとはずっと幸せやった。伊織とひとつになって……一緒に気持ちようなれたもん」

侑士先輩の言葉は、わたしをどこまでも包みこんでくれるから、不思議。

「な、伊織。一緒にシャワー浴びへん?」
「え、恥ずかしい……」
「ええやん、もう全部、見せあった仲やんかあ」

わたしのような初体験をしている人は、どのくらいいるのだろう。つらい、と嘆いていたネットの情報は、あまりアテにならないなと思った。

「まじまじ見られるの恥ずかしいよ……」
「くくっ。もうめっちゃまじまじ見たっちゅうねん」
「あーもう、いじわる」

ぎゅうっと抱きしめて、笑いあってキスをして。

「そんでシャワー終わったら、もっかいしよ?」
「えっ……!」
「ええやん? やって今日こそ、俺の誕生日やねんから」
「もう……」

なんだかんだと言いながらも、こくっと頷いた。あの幸せな時間をまた過ごせるなんて、まるでわたしがお祝いされている気分だ。そんな気持ちにさせてくれるのは、侑士先輩しかいない。
きっとわたしは、世界でいちばんの幸せものだよね。
与えて、与えられた……優しくてあたたかい大切な愛が、きちんとここにある限り。

「お誕生日おめでとう、侑士」

侑士先輩……あなたに出会えて、わたし、本当によかった。だから……。

「ありがとう、伊織」

わたしこそ、心からありがとうって、伝えたい。





fin.

recommend>>秘密_01



[book top]
[levelac]




×