アルカディア_03








どんな間違いが起こっても、どうでも良くなっていた。

無理矢理だろうがなんだろうが、わたしと侑士はお互いに、正々堂々と欲して欲される間柄になったのだから…。
















アルカディア












3.






九月中旬の夜は残暑漂う空気がまだ流れている。

さっき走って来たせいか、侑士の体はすでに汗ばんでいた。

同じように、段々と汗ばむわたしの体。

熱い吐息が触れ合う頬。


「侑士…っ…ねぇ、ホントにこんなとこでするの…っ?」

「言うたって、真昼間に空の下でしたやん…」

「あそこは絶対誰も来ないってわかってたから!」

「ここにも誰も来うへんよ…周りは閑静な高級住宅街や…やでちょお、静かにな…?わざわざ気付かれたくないやろ?んっ…」

「ンッ―――」


とろけるようなキス。

侑士の舌は、わたしの舌の動きを全て把握しているかのように転がる。

思わずだらっと舌を出してしまう。その舌が恋しくて。もっともっと、吸って欲しくて。

これだからすぐに濡れてしまうのだ。

キスより少し遅れて下着の中に這ってきた指は、ぐっちゃりという音を立てた。


「ぐちょぐちょ…伊織…」

「だって…んっ…」


「前の彼氏ともこんなやったん…?」

「も…っなんでそんなこと言うの?」


「答えてや」

「…はぁっ…あっ…二ヶ月前に…んっ…二ヶ月前に別れた下手な男とのセックスなんか、覚えてないよっ…」


言った瞬間、侑士はくねらせていた指の動きをぴたりと止めて、きょとんをわたしを見た。


「あっ…侑士やめないで…っ」

「………ちょ…どういうことや?二ヶ月前に別れた…?」


「…わかりきってるでしょ…?あの日から侑士のことばっかり見てた…睨んでるって勘違いしたバカがいるみたいだけど…ねぇ、侑士やめないで…」

「………」


さすがに思わぬ告白に驚いたらしく、侑士はぽけっとしたまま黙った。

一度指を入れて撫でられた秘部が、愛撫のお預けに疼いてる。

たまらなくなったわたしが、痺れを切らしてせがむように侑士の首に手を回してからねっとりしたディープキスをすると、侑士はもう片方の手で、わたしの腰を苦しいくらいに抱き寄せた。


「伊織…っ…めっちゃ好き…」

「ホント…?」


「ホンマ…あんなはじまりやったで、信用ないか?」

「お互い様でしょ?でもわたしも本当に好きだよ…最初に惹かれたのが、侑士とのセックスだとしても」


侑士は、くくっ…と嬉しそうに笑った。

そのすぐ後、街灯の太い円柱にもたれ掛かっていたわたしをひょいと抱え上げて近くにあったベンチに座らせる。

侑士は座らず、わたしの正面に立ったまま、腰を屈めてキス、キス、キス…。

何度も繰り返される執拗なキスに、自分がみるみる濡れていくのがわかる。


「んっ…」

「めっちゃ…かわええ…」


侑士もそれはわかりきっているくせに、だけどわたしのTシャツをたくし上げた。

そして自分もベンチに座り、わたしを抱えて正面に抱っこする。

どうやらまだまだ、焦らされてしまうみたい。


「勝負下着にしとくんだった…」

「あーほぉ…跡部に会う予定で勝負下着やったら俺、ブチ切れるで?」


侑士はそう言いながら、わたしのブラジャーをパチン、と外す。

そのままゆっくりと上げられて、露わになるわたしの乳房。

だけど少し汗ばんでいて、やっぱり恥ずかしい。


「侑士、ちょっと汗ばんでてわたし…ンッ…はっ…あ…」

「全然構わん…かわええ声…」


だけど侑士は躊躇い無く、わたしの胸に吸い付いてきた。

両手で胸を揺らしながら、右、左と気まぐれなリズムで突起を吸う。

思わず仰け反ってしまいそうになるわたしの体を、侑士はその度に支えて。

それでも唇からの愛撫は止めなかった。

チュ、チュと静かな夜の公園から漏れる音に興奮する。


「ゆっぅ…し…あぁ…んっ…」

「感じやすいな伊織…ひょっとして俺やからか…?」


「っ…侑士だから…多分っ…」

「多分てなんやねん…」


ぶつぶつと言いながらも、侑士はわたしを狂わせていった。

侑士の胸の舐め方はどうにかなりそうなくらいにエロティックだ。

少し口を開けて突起をゆっくり、弧を描くように刺激する。

同時にもう片方の突起を摘んでクリクリと回す。

おまけに段々と膨らんでくる自らの凶器を、わざとわたしの秘部に押し付けてくる。

侑士の腰が故意に動く度に、わたしの下着が湿って、そのまま中に入ってしまいそうな刺激に、我慢していても声が漏れる。


「はぁんっ…!侑士…う、動かさないで…」

「めっちゃ入りたがっとる…せやけど、まだ我慢しょーな、俺」


「も…っ入ってきてもいいよぉ…」

「あかん…伊織をめちゃくちゃにすんねん」


「っ…あ…何…す…」

「伊織の、して欲しいこと…」


めちゃくちゃにする、そう宣言した後に侑士はわたしを抱っこして、今度はわたしがベンチの背もたれになるように座らせると、そのまま地面に跪いてわたしの足を思い切り持ち上げた。


「きゃあ!…ちょっ…侑士恥ずかしっ…」

「なんやねん今更…ああ、せやけどこないじっくり見るん初めてやな…」


「やっ…やだよ侑士っ…!汗かいてるし、汚いよっ…!」

「伊織の汗やったら、なんぼでも舐めたるよ…」


下着の上から、ぐりぐりと捻じ込まれる指。

でもそれは僅かのことで、侑士は横から指を滑り込ませて、わたしの濡れ具合を確かめた。


「うわっ…めっちゃぐちょぐちょ…なぁ伊織、なんで…?」

「や…そ、こっち見ないで…」


「あかん、俺から目ぇ逸らしたら止めるで?」

「んっ…そんな…意地悪…っ…あっ」


侑士が脚の間からわたしを見上げる。

地面にベッタリと、片足を立てて砕けた座り方をしている侑士。

ものすごくそのスタイルが決まっていて、見とれそうになる。

その半袖から出ている太い筋肉質の腕の先には、わたしの繁みを潜って奥に入りきってくれない中指。


「侑士…も…焦らしちゃやだ…」

「なんでか言うて…?初めて伊織とした時より、なんでこないに伊織が濡れ易くなっとんか俺に教えて?」

「…そっ…!」


どうしよう、恥ずかしすぎる。

侑士は気付いてた。

侑士にだけは感じ易くなってしまったわたしに。

そんなの決まってるだろう、女は訓練すればするほど、感じ易くなるのだ。

その妄想の相手が決まっている場合は、それが現実となった時に爆発する。


「俺で何回したん…?」

「…っ…侑士っ…」


「言うて…俺の目ぇ見て言うて。言わんと止めるで?」

「あっ…はぁっ…侑士…っ」


意地悪な視線、でも期待してる強い視線。

わたしは頭の中で、何回侑士に犯されただろう。

恥ずかしいその問いかけは、わたしの熱をどんどんと上げていく。

侑士の舌先が太腿の付け根を舐め上げる。

私から目を逸らさずに、そのままきつく吸い上げた。


「つっ…んっ…さ、寂しくなった時…」

「ん…?寂しくなった時、なんや…?」


そう言いながら、侑士は無理矢理に指を押し込んできた。

いつのまにか二本に増えていた指が、突然中に入って暴れ出す。


「ああっ…!あっ…やっ…なった、時…侑士との…あの日のこと…考えながら…やっ…あっ…!」

「…オナったん?」


「っ…はぁっ…んっ…したっ…」

「ふっ…俺と一緒やな…伊織っ…」


週に何度も、わたしは侑士の愛撫を思い出しては、自分で自分を慰めた。

付き合っていた彼氏に抱かれても、目を瞑って侑士に置き換えた。

侑士だって思うと、信じられないくらいに体が熱くなって。

侑士も同じだったと思うと、そんなことならさっさと話し合って繋がっていれば良かったと思う。


「白状したご褒美や…」

「あっ…」


するすると、揃えられた脚から脱がされた下着。

侑士はもう一度わたしの脚を上に持ち上げる。


「伊織、支えとって。こやって、自分で開いて持っとってや」

「は…恥ずかしすぎる…淫乱みたい…」


「俺限定の淫乱やから、大歓迎」

「ううっ…」


否定できないことを言われつつ、わたしは侑士が支えてくれていた自分の脚を自分で持ち上げた。

途端に、侑士が秘部に舌を滑らせる。吸っては、舐めて。

ピチャ、チュク…その音がする度に、眩暈を覚えるほどの快感。

恥ずかしくて仕方ないのに、たまにわたしを見上げる侑士から目を逸らせない。


「んっ…んっ…めっちゃそそるわ…その顔…んっ…」

「はぁっ…あっ…ああっ…も…イッちゃうよぉ侑士ぃ…!」

「俺も後でイカせてもらうで、ええよ、イッても…」


そう言って少し微笑んだ侑士は、親指で撫でていたわたしのクリトリスをチュルっと吸い上げて、舌先でとろとろっと揺らした後、そっと甘噛みをした。


「ひゃっ…!あっ…な、やぁっ…なにそれっ…!」

「ものっそい、気持ちええやろ…?」


「あぁっ…や、ほんとにイッちゃう…!」

「せやからイッたらええがな…んんっ…こっちもしたる」


今度は三本、一気に突いてきた侑士の指。

入れる侑士もすごいけど、なんなくそれを飲み込んだわたしのだらしない穴。

クリトリスを優しく吸っては少し歯を立てて、何度もそれを繰り返して。

もうひとつの手の親指は、垂れているわたしの愛液を掬うようにアヌスを撫でている。


「だ…め…あぁっ…イクッ…!あっ!ああっぁっ…!」

「んっ…きっつ…指が痛い言うとるわ伊織…締めすぎ…」


「はぁっ…はぁっ…侑士…あっ…だめ、もう動かさないで!」

「我慢することないで…イッとき」


侑士の指の動きが一気に加速して、ねばついた音が激しくなった。

侑士の舌の動きと同時に、侑士の頭が左右に揺れ始めた瞬間…


「あぁぁっ―――!」

「…っ…と…イッたみたいやな…痙攣しとる…」


遂にわたしは果てた。

侑士はヌチュ、と音を立てて抜き出された三本の指を、

わたしの顔の前に掲げて開いて見せる。


「見てこれ…めっちゃすご…」

「ちょ…やめてよ!」


「んーっ…問答無用や…」

「えっ…ンッ―――!」


すると侑士は、その中の一本を舐めてから、わたしに口づけて舌を捻じ込んできた。

しょっぱい味が広がるのと同時に、ドンドンと侑士の胸を叩く。


「んっ…なんやぁ…」

「汚いっ!」


「どこが汚いねん。俺の好物に失礼なやっちゃな。ほれ、…次は伊織の番やで」

「何が好ぶっ――――」


わたしが喚いてる間に、立ち上がった侑士のジーンズがばさっと音を立てて地面に落ちた。

次はわたしの番…つまり、そういうこと。

ぴたっと侑士の体に張り付いてるのは、黒いボクサーパンツ。

目の前にあるそれは、欲望がはち切れそうなほどに膨らんでいた。


「…して?あかん?」

「あかんわけない…」


ああ、やっとわたしも侑士を愛せる。

そう思うと、気持ちが高ぶった。

わたしは変態だろうか?それでもいい。

目の前の男もきっと変態だから。


わたしは、さっき侑士がわたしから抜き取ったばかりの手を取った。


「お…?」

「どうしてだろ…相手が侑士だと、なんでもしちゃう…」


近くの街灯に照らされて、角度を変える度にキラキラと光る愛液。

わたしはその指を、一本一本、舐めていった。


「…っ…伊織…」

「まずはわたしが汚した侑士の指を、綺麗にしなくちゃ…ね?」


わざとらしく舌先を出して、時には指を奥から咥え込んで、するっと舐め取った。

今までなら絶対に出来なかった自分の愛液を舐める行為。

それが侑士の指ってだけで、こんなにも大胆になれる。


「くっ…焦らしよって…も、指はええからこっち…」

「ふふっ…はいはい…」


わたしのその口元を見て我慢しきれなくなったのか、侑士はぐっと腰を出してきた。

相手のそれを舐めるのは初めてじゃないけど、愛でるのは初めて。

わたしはボクサーパンツの上から、舐めたりキスしたりを繰り返す。


「あっ…伊織…はよっ…」

「んっ…せっかちだなぁ…」


薄明かりの下で、困惑の赤い顔をしてわたしを見下ろす侑士が可愛くて。

さっきまであんなにSっ気たっぷりだったのに。

少しだけ可哀想になって、ゆっくりとボクサーパンツを下げると

侑士のそれは跳ねるようにぶるんっと顔を覗かせた。

まじまじと見るのはこっちこそ初めてで、大きなカチコチの欲望に少し驚いた。


「おっき…」

「はぁっ…なん…今更っ…!…あ…くっ…」


侑士が何か言う前に、わたしはその後ろでぶら下がるモノを撫でながらしゃぶった。

侑士の腰が少し揺らぐ。侑士の凶器を握って、上下に擦ると、侑士の体がひゅっと動く。


「はっ…んっ…お前…っ…どこでそんなん覚えた…?」

「んっ…したいこと、してるだけ…」


「嘘つけっ…はぁっ…男に…教えてもらったんやろ…?めっちゃ妬ける…はぁっ…!」

「んっ…そんなの…言いっこなしだよ…わたしが吉井千夏に妬いてないと思う…?」


自分勝手な侑士の言い分。

だけどそれがひどく愛しくて。

わたしは口の中いっぱいに、侑士自身を含んだ。

今度こそ、びくん、と揺れる侑士の体。

わたしの頭に自然と当てられた侑士の手は、その後頭部を何度も押した。

侑士が頭を押す度に、ズブッ、ズブッと繰り返しわたしの口から漏れる音。


「んっ…んっ…んっ…」

「はぁっ…伊織…こっち見て…」


「んっ…?んっ…んっんん?」

「くっ…やばっ…めっちゃそそる…あ…そこ…ああっ…」


カリを舌先で辿ると、そこ、と声を漏らした侑士。

侑士の声は、いつもより格段に色っぽくなって、わたしをその気にさせる。

侑士に絡みつく、わたしの唾液が滑りを良くして、わたしの動きは加速していった。


「あっ…くっ…伊織っ…俺の飲んで…っ…?」

「んっ!?…んっ…!!」


呼ばれたことで見上げた途端、侑士がわたしの頭を奥に押さえつけた。

苦しくて動けなくなった直後、揺れた侑士の腰。

左手でわたしを押さえつけて、腰を振って、右手で自分の根元を掴んだ。


「イッ…ああっ…イクッ…あっ…はぁっあかんっ…くっ…!」

「っ…!…ん…くっ…」


侑士がきゅっと目を瞑った直後、腰の動きが止まった。

それでも侑士の右手は止まらない。

彼自身の手がその根元を絞る度に、暖かい液体がわたしの口の中に飛び込んでくる。


「はぁ…はぁ…伊織…めっちゃ上手い…俺、口でイッたん初めてやで…?」

「っ……っ……………っ…」


「伊織…?」

「っ…だぁ…!はぁ…うぇっ…まっず…」


仕方なく飲み込んだものの…。

その味は何にも例えられないほど不味かった。

いくらコラーゲンたっぷりでも、これは絶対に罰ゲームに値する。


「そないに傷つくこと言わんでや…」

「失礼…わたしも口の中で出されたの初めてなので………」


「………さよか、やっぱり前の男が教えよったんやな…」

「侑士それは言いっこな…ひゃあ!」


ぐったりしてわたしの隣に座ったはずの侑士は、今度はわたしを膝の上に座らせた。

侑士に背中を向けた状態で後ろから胸を鷲掴みにされる。

そうして、わたしが中腰になるように促してから、さっき出されたばかりなのにもう大きくなっている自分の凶器をわたしの秘部に思い切り突き刺した。


「ああっ…!侑士っ…!いきなりすっ…!」

「よう言うわ…俺の舐めながら濡れとったくせして…」


「はっ…あっ…!あっ…!」

「一回出しとるで、長いから覚悟しいや…」


ガタン、と音を立てて、浮かせていた侑士が思い切り座った途端、ベンチが悲鳴を上げる。

下から容赦なく突き上げてくる侑士は、わたしの膣の中で益々膨らんでいった。

それなのにわたしの口は広がるどころか侑士を締め付けるもんだから、ズチュ、ズチュ、とその度にヤラしい音が大きくなる。


「めっちゃ気持ちええっ…あっ…はぁっ…なぁ、伊織…同時にこんなとこ弄られたら、たまらんやろなぁ…?」

「はあっあっ…えっ…?――あっ…!はぁんっ…!侑士っ…!」


私の胸の突起を後ろからしつこく摘んでは揉んでいた侑士の両手。

右手だけが、ぱっとそこから離れてさっき甘噛みされたクリトリスを刺激した。


「やぁっ…あぁっ…イッ…イクッ…イッちゃう…!」

「あかん、イカしたらん」


襲ってくる快楽に身を委ねようとどんどんと腰の動きを早めたわたしに、侑士はぴたっと動きを止めて、手を離した。


「や…っ…侑士っ…お願いっ…」

「ほなこっちに体向けて、俺にキスして」


「…っ…う…」

「名残り惜しそうにしよって…そんなに欲しいん?」


侑士に背中を向けていたわたしが、彼に正面からキスするには、繋がった体を外さなきゃ出来ない。

わたしはまたSっ気を発揮した侑士に従いながら、そこから腰を上げて、向き返って侑士にキスをした。そんなわたしを、きつく抱きしめる侑士。

すくっと立って、街灯の円柱にわたしの背中を押し付ける。


「あんま可愛えからいじめたなんねん…堪忍。そないに切なそうな顔せんとって…?」

「侑士っ…」


侑士にいじめられすぎて、いつのまにか流れていた一筋の涙。

あんまりにも感じすぎると、生理的に涙が出るって本当だったんだ。


「伊織…愛しとるよ…んっ…くっ…熱ッ…」

「っ!あっ…侑っ…士…わたしも…っ…あっ…」


そして、立ったまま入ってきた侑士。

わたしの左脚をぐいと持ち上げて、激しく下から上へと腰を振る。

その唇は、胸の突起を吸い上げたり、わたしに熱いキスを送ったり。

何度繋がっても、侑士とのこの瞬間だけは体が震える。

侑士の表情が困惑してて、何度も名前を繰り返されて。

こないだ体を重ねた時、この時だけは愛されてるって信じてた…

信じて良かった…本当に、わたしは、愛されてたんだ。


「はぁっ…伊織っ…イキそっ…キスして…」

「んっ…わたしも一緒にイクッ…んっ…!」


本当はもう、侑士の長い長い精力のおかげで何度も果てていたけれど。

遂にはわたしを丸ごと抱えた侑士にしがみついて、狂おしいほどのキスを送った。











「はぁ…はぁ…ああ…伊織…めっちゃ好きやで…」

「うん…はぁっ…うん、…好き…ていうか侑士…すごい体力…」


「ん…ああ、ええ筋トレんなったわ…はははっ…」

「あははっ…うん…ああ、またとんでもない場所で、しちゃったね…」


果てた後のわたしたちは、もう本当にぐったりで。

今までしてきたどんなセックスよりも、とにかく疲れた。

よたよたになりながら、公衆トイレのトイレットペーパーを拝借。

中途半端に脱いでいた服をまたきちんと着用する姿はお互いにマヌケで、ふたりでくすくす笑いながら服を着た。


「めっちゃ、汗かいた…ベットベトや…」

「うん…帰ってお風呂入る…」


手を繋いで家に帰りながら、そんな他愛もない会話。

すると侑士が、にこっと微笑む。


「……伊織、今日は徹マンのつもりで来たんとちゃうの?」

「え?いや、そんなつもりなかったけど…別にそれでも構わないくらいの気持ちでは来たよ?」


「せやろ?ほな、俺の家で一緒に風呂入ろか」

「…………や、わたしもう…ヘトヘトで…」


「一緒に風呂入るだけやーん」

「……………………だって絶対に、それじゃ終わらな…」


「よっしゃ決まりな!」

「って無視かよ…」


結局、侑士に強引に来られるとわたしは断れないんだ。

それは間違ったはじまりから、きっと決まっていた運命というやつに、違いない。

嗚呼、南無阿弥陀仏…でもそれはきっと、侑士との愛あるセックスに、溺れ続ける運命―――――。




fin.



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