just one more kiss









じっと見るのは恥ずかしいし。
だからって、変に目を逸らしてんのも誤解されそうだし。


「ねぇリョーマ」
「ん?」

「せっかく遊びに来てるのに。リョーマはそやってずっと漫画読んでるつもり?」
「自分だってゲームしてるくせによく言うよ」


高校入学してから、ずっと好きだった先輩。
誰にも渡したくなくて。
半年分の想いを伝えたら同じ気持ちを返してくれた。
つい、一昨日の話。
先輩が、俺のこと好きだった…とか、実は全然自信が無かったし。
だから俺はその日、夜、ちゃんと寝れないくらい嬉しかった。

で、同じような夜を昨日過ごした。つまり二日連続。
今日、先輩がウチに遊びに来るってことになったから、そのせいで。

俺はさっきから、先輩の唇を盗み見てばっかで。
でもそれが無意識だから、タチが悪い。


「リョーマが漫画ばっか読んでるからじゃん」
「わかったって。じゃあ何か話す?」


まともに向き合ったら、絶対キスしたくなる。
そうなった時に避けられたら…すっごい気まずいよね。


「そうしようよ!一緒にいるのにお互いが別々のことしてるなんてオカシイもん」
「いいよ。じゃあ何の話する?」


ゲームのスイッチを丁寧に切ってく先輩の指先にさえ、キスしたい。
俺が内面こんなこと思ってるなんて知ったら、先輩はどんな顔するだろう。
いつまでも俺を子供扱いなんて、しなくなったりしてね。


「じゃあじゃあ、質問していい!?」
「何?」

「リョーマっていつからわたしのこと好きだったわけ?」
「…っ…」


言葉に詰まった俺を見て、先輩は嬉しそうな顔。
きゅっとあがった口元が可愛いピンク色で。


「もしかして一目惚れとか!?まいったなぁ〜!」
「違うよ。調子乗ってもらっちゃたまんないね」

「むかつく〜!じゃいつから?」
「先輩は?」

「わたしが聞いてるのに!」
「先に答えてくれたら正直に言うから」


俺の提案に納得いってないような先輩の顔。
でも段々、上を見たり、横に流れたりする視線。
その動きに、俺の心は一喜一憂。
可愛くて、食べたい。だからずっと目で追ってる。
それはまだ早いってわかってるし。
でもそうやってずっと目で追ってると、先輩の動きも読めてくる。
もうすぐ、先輩の唇が開く。


「不二くんに、リョーマのこと教えてもらった時…」
「ふーん。それって、初めて会った時ってこと?」


やばい。嬉し過ぎて顔が崩れそう。
そんな赤い顔がどれだけ可愛いとか、それが全然わかってない感じとか。
全部憎たらしくて、愛しくて。全部俺のモノにしたいから。


「そうだよ!忘れた?初めて会った時のこと!」
「じゃあ一目惚れだったってこと?」
「だからそうだって――――!…っ…」


赤くなって怒ったような声を出した先輩の唇に、思い切って俺の唇を押し付けた。
先輩の唇、少しだけ開いてすっごいセクシーだったから、ちょっとだけいたずら。


「ッ!」


下唇、俺がそっと舐めると、先輩の肩が震えた。
だけど、1cmも逃げないでいてくれてる、先輩が好き。


「…俺も、一目惚れ」


唇を重ねたまま小声で言ったら、先輩は一瞬、目を丸くさせたけど。
そのままゆっくりと閉じられた瞳に俺は迷うことなく、もう一度キスをした。


















fin.



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