告白









「誰かと思ったら、侑士か」
「なんでそんな残念そーな声やねん…好きな男でも、待っとった?」

彼女が視線を逸らした隙に、俺は唇を盗み見る…
ホンマは知っとる。
俺より年上の彼女が、彼女より年上の男と付き合っとったこと。
…二週間前に、フラれて別れたことも。

「んー…まぁ、そんなとこかな」
「そらえらいすんませんなぁ」

閉店間際にひとり、ブティックを任されとる女が
早めのクリスマスツリーの電球に手ぇかけて…こっちが泣けてきそうんなるわ。

「あ、こないだ侑士のお母さんにここで高い買物してもらったの。よくお礼言っといてね」
「おかんはあんたが好きで来とるからな…俺にまでとばっちりなんやけど、どないしてくれんねん」
「…?とばっちりってー…なに?え、まさか今日買物に来たの?いつもの冷やかしじゃないの?」

その戸惑いがちな、嬉しそうな顔に、俺はいつも騙される…
俺のこと好きなんちゃうかって、疑ってまう…。
あんたが好きやからここに来とるのは、俺のおかんだけとちゃうで?

「なんとかして、あんたと結婚せぇて煩いわ」
「あははっ!なにそれ!」

「あんたのこと、嫁に迎えたいらしいわ。忍足家じゃ俺が長男やからな」
「なんかそういえば、こないだお母さんに言われたかも。侑士どう?って」

無邪気に笑う彼女の表情に見えるんは、ただの冗談話。
その厚い厚い壁の突破口、俺が開いてもええ?

「!!…っ…侑士…」
「―――本気やっても、同じ反応するん?」

大学からの帰り道、ずっと考えとった。
いきなり抱きしめたら、あんたがどんな顔するやろって。

「ど…どしたの…」
「俺やったら、あんたのこと、絶対泣かしたりせえへんよ」

「侑――っ」
「めっちゃ好き…」

寂しい女の気持ちに付け込む俺は、卑怯モンやろか?

「せやから…っ…」
「侑士っ…」

せやけどそやって、戸惑いながら完全に俺を拒否せんあんたも、めっちゃ卑怯で…。
俺より20cmは低い身体を包んだら、思っとった以上に細かった。
ほのかに香るムスクの香水。あの男のために伸ばした髪。
何もかも、俺が全部受け止めて、全部俺のモンにしたいねん。

「俺んこと、好きんなって…?」

強引に奪った唇を重ねる瞬間、見えたのは、彼女の涙――――。





















fin.



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