Yellow_13





何もかもが、破壊されていく音を僕は耳にした。

それは誰でもない、僕が生んだ破壊の音。

僕が作り出した破滅の音…体中が、震えて、軋む音…。














Yellow












13.





「やぁ跡部、久しぶりだね」

「悪いな不二、遅れちまったか?」


「ううん大丈夫、まだ彼女も来ていないんだ。記者が遅れるなんて失礼だよね…ごめんね」

「お前が謝ることじゃねぇよ…にしても、噂通りだな」


15時の待ち合わせに、5分遅れで跡部はやってきた。

その5分前に、渋滞で遅れるから彼によく謝っておいて欲しいと、千夏からメールが来ていた。

僕はそれを跡部に伝える。

すると彼は、ふと僕を見て眉間に皺を寄せた。

久々に会った跡部は、あの頃の面影を残したまま、大人になっていた。

眉間の皺の寄り方も、あの時のままで…僕は思わず笑った。


「ふふっ…跡部は変わらないね。それより、噂通りって何のこと?」

「貴様のことだ。最近痩せちまったって、手塚が言ってたからな。久々に会ってみりゃ本当にこけちまってやがる。体調管理は基本だぜ不二…どうかしたのか?」


「ああ、なんだそのこと…いや、なんでもないよ…夏…だったからじゃないかな。それじゃスポーツ選手としていけないこともわかってはいるんだけどね。だから今、ウエイトを増やすメニューにプログラムを全部変更させられたとこなんだ」

「ハッ…そんなことじゃ、いつまで経っても俺様には追いつけねぇぜ?つってもまぁ、俺はお前とは違ってアマチュアだけどな…」


「ふふっ…跡部のアマチュアなんて肩書きは意味ないよ。でも…プロ契約しないのは、やっぱり財閥の仕事があるからかい?」

「当然だな。…ま、あの家に生まれたことで、俺の人生はもう決まっちまった…おい、それより不二、海外遠征の話も出てんだろ?」


曖昧に頷いて、僕は世間話に徹した。

跡部のテニスの腕はプロ顔負けだけど、彼はアマチュアで通している。

それでも千夏の会社が取材をしたいと申し出る程、彼はテニス界の中では超有名人だ。

アマチュアとプロの肩書きなんて、所詮そんなもので…。

健康そうな肌の色を見ただけで、今の彼には到底勝てないだろうと検討がつく。


ちょうど、そう思った時だった。

僕の目に千夏が入ってきた姿が見える。

僕がそこへ視線を送ると、跡部は自然と後ろを振り返った。


「あ!周助いたいた…あ、跡部さんはじめまして!あの私、吉井千夏と言います。無理を言って来ていただいたのに、遅刻してしまうなんて、本当に申し訳ありません!」

「……」


近付いてきた千夏に席を立って知らせると同時に、跡部もゆっくりと席を立った。

千夏はすかさず名刺を取り出して、とにかく頭を下げて謝る。

紳士な跡部だから、こうした時の彼はあっさりとその謝罪を受け流すはずだけど…跡部は、何故か黙ったままで千夏をぼうっと見ていた。


「…跡部?」

「あ?ああ、いや…構わない…こちらこそ、よろしく…」

「あ、お名刺頂戴いたします、ありがとうございます」


ふと、何かに気付いたようにジャケットのポケットに手をやって名刺を出した跡部に、千夏はにこやかに微笑んで、また丁寧にお辞儀をした。

跡部はそんな千夏の様子を、じっと見つめていた。







□ □







携帯が鳴ったのは、新しく着た商品を棚出ししている時だった。

幸い、お客さんは店内に誰も居らず、母は今日も自宅で仕入作業に明け暮れていた。


「メール…跡部さん…」


千夏と最後に会ったあの夜から、跡部さんには何度か会っていても、彼がその話をしてくることは全く無くなった。

当然、その場に母が居るからだと最初は思っていたものの。

私が一人で店番をしていても、跡部さんはただ食事をして、他愛のない話をして帰って行った。

…彼の、優しさだと思った。きっと何度も、話そうと思っては躊躇っている。

跡部さんという、全くこの件に関係のない人まで巻き込んで悩ませてしまったこと、私は本当に、それが辛かった。

そんな彼から、メールが届いたのだ。

彼と出会ってから、初めてのことだった。



―お前に話がある。近いうちに時間を取って、予定を折り返してくれ―



そのメールに、胸騒ぎがした。

何も言わなくなったと思っていたのに。

やっぱり、彼は私と千夏のことで自分が何か出来ないかと考えていた。

…跡部さん、私はもう、これ以上貴方に頼っちゃいけない…。

これは、貴方には関係のないことだから。



―彼女と私のことなら、もう、そっとしておいて下さい…―



祈りを込めるように、すぐにそう返事をした。

跡部さんの優しさが嬉しくて、涙が溢れ出そうになった。

こんな人が、この世の中に本当に居るんだと思った。

跡部財閥という重た過ぎる荷物を背負わされてこの世に生を受けながら、私のような馬鹿な女の人生にまで気にかけてくれる。


…母が、跡部くんは学生時代からとてもしっかりした、いい少年だったと言っていた。

優しくて、それを悟られたくない天邪鬼だから挑発的に振舞うこともしばしばあったけど…心が本当に、綺麗な子だったと。

私は思う…母が少年と言っていたその彼は、そのまま大人になったのだ。


その時また、携帯が鳴り響いた。

これまで跡部さんに掛けてきた迷惑を考えていた私に、その音は大きすぎる。

そっと携帯を開くと、やはり跡部さんからの返信だった。

どう食い下がってくるだろう…私は慎重にメールを開けた…


だけど…予測も出来なかったその内容を見た瞬間、私の手から携帯が滑り落ちた。








―あの女とお前の事じゃない。話があるのは、不二の事だ。―








□ □








「ごめんなさい、私もちょっと、電話をしてきていいですか?」

「ああ、構わない…」

「じゃあ、少し休憩ということで!」

「うん、そうしようか。跡部も喋りつかれちゃったんじゃない?」


何度か携帯をいじっていた跡部に、取材から1時間経った頃、千夏がそう切り出した。

何かと忙しい跡部は、この取材中にメールが二件程度入ってきていたみたいだ。


「いや…俺は大丈夫だ、取材は慣れてるんでな」

「そう。そうだよね。僕はちょっと、喋りなれてないから苦手なんだ」


近くに居た店員さんに、コーヒーのおかわりを注文する。

千夏は店から出て、何やら難しそうな顔をして電話をしていた。

跡部は、そんな千夏の様子をずっと見ている。

取材中から感じていたことだけど、今日の跡部は、どこか様子が変だ。


「跡部、やっぱり疲れてるんじゃない?大丈夫?」

「いや………それより不二、ちょっと話がある」


「…なんだい?」

「今は出来ない。明日、時間あるか?」


「…僕は、構わないけど…明日、夜の8時以降なら」

「ああ、それでいい。場所は…そうだな、俺から連絡する。名刺にあるこの携帯に、お前から一本着信を入れておいてくれ」


切羽詰った様子の跡部に、僕は嫌な予感がした。






翌日――僕は跡部からの連絡を受けて、夜の9時にホテルのバーに居た。

跡部は僕の隣の席で、ウイスキーの中で踊る球状のアイスをグラスごと転がしている。

僕は今、目の前にある跡部と同じグラスを、ただ眺めることしか出来ずにいた。


「……本当、だよね…」

「こんな嘘をついて、何の得がある」


跡部は、僕が席に座った途端、『俺は佐久間伊織を知っている』と切り出してきた。

僕が目を見開いて何も言えずにいると、跡部はどうして伊織と知り合ったかを僕に話して聞かせてくれた。


「跡部と伊織が…知り合いだったなんてね…」

「伊織から…いろいろと話は聞いてる。お前は伊織の幸せを願って好きでもねぇ女を選んだんだったな?」


その跡部の話に相槌を打ちながら、僕も自分のことを少し話した。

伊織とのこと…彼女とあれきり、会っていないこと…その理由…。


「…そう…そうだよ。僕と一緒になったら、伊織は…」

「ああ…お前の考えそうなことはわかる。だがお前が良かれと思ってした結果が、結局は地獄だったかもしれねぇぜ…?」

「…それは…どういう意味だい跡部…」


跡部は深い溜息をついた。

僕は跡部の言葉の意味を探ろうと彼を見つめる。

長い長い沈黙の後、跡部がひとつ目を伏せて封筒を僕に差し出した。

僕は跡部の真意を知りたかった。

だから、それを何も言わずにそっと開いた…中には、写真がある。


「…伊織の母親がやってる店は然程栄えてるとこじゃねぇが、元々は商店街だ。それは商店街の監視カメラの映像を手配して入手した、日が暮れる直前の映像写真だ」

「…これが…どうかしたの?」


写真は…きっと、伊織のお母さんのお店の前なんだろう。

そこに人が一人、傍にあるBOXに何かを入れるように手を伸ばしていた。


「その日の夜、伊織は郵便受けの中身を取った際に右手をズタズタに裂かれた。俺がたまたま店に顔を出していたから、すぐに病院に連れて行くことが出来たけどな」

「え…!?」


「…ガラスの破片が敷き詰められてた。郵便受けの中にな」

「っ…!」


僕は咄嗟に、もう一度その写真を見た。

はっきりとは映っていないせいで、一瞬、誰だかはわからない。

だけど…


「その背格好じゃ、お前の婚約者ってことはなさそうだがな…」

「…話してない…はずじゃ…」


「…お前の話じゃ、お前の婚約者は互いの両親には話さないようにと言ったんだったな?自分から話すつもりもない、真実を伏せて欲しいと。そして伊織を傷つけない代わりに、自分との結婚をお前に約束させた…そうだったな?」

「…僕はそれに、何の疑いも持たなかった…」


千夏は、お母さんに話してた。

そこに映っているのは、紛れも無く、千夏の母親だと僕は確信した。


「…不二、婚約者のことを調べろ。ただ恐らくこの母親の件は、お前の婚約者は知らないだろうがな」

「…跡部…まだ、何か隠してるね…」


跡部の表情を見て、僕は何故かそう思わずにいられなかった。

婚約者を調べろ…その言葉が引っ掛かる。

何故なら、ここで見せられたのは僕の婚約者の肩書きを持っている千夏じゃない。

千夏の母親だ。

それなのに、跡部は『婚約者を調べろ』と言った。


「俺がどうしてお前と佐久間伊織の関係に気付いたか、よく考えてみろ。言っておくが、伊織から聞いたんじゃねえぞ」

「……」


昨日、千夏を見たときの、跡部のあの様子…。

つまり跡部は、伊織の傍に居て、千夏を見る機会があったってことになる。

当然、いい印象じゃないから、こんな話になってるんだ。


…そしてまた、長い沈黙が訪れた後…跡部はゆっくりと言った。


「不二…佐久間伊織と会わせてやる」

「!……伊織に…会える…?」


僕は思わず、声が震えた。

伊織に会える…。伊織に…僕の…伊織…。


「ただし、今回の件に関して、お前が自分でケリをつけろ…それが条件だ…」

「条件…」


呟く僕に、跡部はウキスキーを飲み干してから頷くように言った。


「ああ、そうだ…そうでもしねえと、…俺は、お前が許せないからな」

「…え…」


僕を冷たい視線で突き刺してきた跡部は、一瞬も僕から目を逸らさなかった。

許せない――――その言葉の後に続いたのは…


「お前は自分勝手に女を抱いて本気にさせておきながら、自分勝手に結論を出しやがった。お前にはあの女の元に戻るか、伊織の傍へ行くか選ぶことが出来たかもしれない。だが伊織はどんな想いでお前を待っていたと思う……あいつはな、選ぶことすら出来なかった。どんな思いをしてもお前の傍に居たいという、その願いさえお前に伝えることが出来ないままに、今の状態を余儀なくされた……それがどんなに辛いことだか貴様にわかるか…?」

「……っ…僕は…」


跡部の言葉は、痛い程に僕に突き刺さった。

また、声が震える…けれど、跡部は言おうとする僕を遮って、諭すように言った。


「不二…どうして伊織に選択権を与えてやらなかった…」

「……僕は…僕は伊織を……伊織を守りたかった…っ…」


それなのに、僕は伊織を守れてなんかなかった…守ったつもりでいただけだ…。

伊織が傷付かないで済むようにと、千夏の元へ戻ったのに…

結局、伊織は傷付いていた…肉体的にも、精神的にも…。


…いつのまにか、目の前で握り締めていた拳を見つめた。

目の前が歪んでいく…伊織のことを想うと、涙が出そうだった。


「……今回の終止符を貴様が正しく付けるっつーなら、俺はお前を許してやる。その褒美に、佐久間伊織に会わせてやる…。だからまずは…」

「…千夏との…ケジメを付けろってことだね…」


言われなくても、僕はそうしただろう。

跡部から突きつけられた事実の一部は、あまりに残酷だ。


「そうだ…それが正しい順序だ」

「ありがとう…跡部、恩に着るよ…」


ホテルから出ると、生温い風が僕の前髪を揺らした。







「あ、おかえり周助〜。今日は遅かったね」

「……」


跡部との話を終えて、自宅マンションについたのは10時半だった。

いつもなら「ただいま」のひと言を発する僕が、黙ってリビングを通り過ぎる。

その様子に、千夏は不思議そうな声を出した。


「周助…?」


近寄る千夏を無視して、僕は寝室の隣の部屋である、彼女の書斎に入った。


「ちょっと周助…!?」


スポーツ記者の千夏の書斎はほとんどがスポーツ雑誌や専門書で囲まれていて、その中にある机の上にはノートパソコンや原稿、編集記事の下書きが無造作に置かれていた。

僕は真っ先に、そのパソコンをクッションの上に放り投げ、机の上にあるものを全て床にぶちまけた。


「ちょっ…!!何してるの周助!?ちょっとやめて!何して…!!」

「鍵は、どこにあるの?」


暴れるでもなく、僕は淡々とそう言った。

千夏は僕を唖然と見つめながら、口元をわななかせている。


「何言ってるの周助…なんでこんなことするの!?」


まだ何もわかっていない千夏に、僕は鍵が掛かっている机の引き出しを揺らした。

開かないことがわかっているのに、わざわざ開かないということを千夏にわからせるために。

そのせいで、無理矢理な衝突音が部屋中に響き渡る。


「そこは仕事の大事な物が入ってるから…!!周助どうしたの!?お願いだからやめて!」


僕の腕にしがみついて僕を止めようとする千夏を、僕は無視した。

今度は寝室に移動する。

千夏は必死になって僕についてきた。

彼女は全身の力を入れて僕を止めようとしている。

だけど僕はそれを何度も振り払った。

そして、彼女の鞄を見つけた。


「ちょっと、ねぇ!!周助!!」

「見つけた。これだね?」


鞄の中から取り出した財布を探ったら、案の定、鍵が出てきた。

前に、僕の自宅マンションの鍵を財布に入れるところを見たことがあった。

それを思い出したおかげで、意外にも鍵はあっさりと見つかった。


「やめて!!」

「そこ、どいてくれるかな…」


僕が書斎に戻ろうとすると、千夏は先に書斎まで走った。

部屋に入ると、机に背中を向けて、これ以上は行かせない、という形相で僕を睨んでいる。


「仕事の書――――!!」

「悪あがきはやめなよ千夏。そこに仕事の書類なんてない」


千夏は僕を止めるのに必死で、肩で息をしている。

時折、飲み込む唾が喉の渇きを訴えていることがわかる。

彼女がそれほど緊張し、それほど警戒している物に、どんな真実があるんだろう。


「…君がその机に鍵をかけるようになったのは、君が退院してからだったね」

「…っ…なん―――」


「出来れば、乱暴なことはしたくないんだ。僕が今どれほどの怒りを抑えているか、君にはわからない?」

「――っ…」


だけど、僕が近付いても、千夏はそこを離れようとしなかった。

僕は彼女の手首を掴んだ。

痣が出来るくらいに、強く。


「…ッ!!」


そのまま思い切り引っ張ると、同時に千夏が僕の手を振り払おうとした。

結果的に振り払えなかったそれは、余計に力を込められた僕の握力でどんどん千夏の顔を歪めていく。

我慢しきれなくなった千夏は、ついに僕が引き寄せたのと同時にそこから離れた。


「いやっ!!やめて!!」


千夏が僕の背中に飛びついて叫ぶのと同時に、僕はその引き出しを開けた。

中には、最近新規で作られた通帳があった。

中身を開くと、そこには、500万円の入金が記されている。


「やだ!やめて!やめてよ!!」

「……」


僕に何度も飛びつく千夏を、僕は何度も振り払った。

その度に、千夏は派手な音を立てて床にしりもちをつく。

僕はそれを見向きもしないで、今度は千夏の日記を開いた。

通帳にあった、500万円の入金日近くの日記をペラペラとめくる。

その頃、千夏はすでに諦めたのか、床に突っ伏して泣き喚いていた。


「…店内の物を…全部…ぶちまけた…?」


日記には、千夏が伊織にしてきたことの全てが書かれてあった。

本当は、お母さんには真っ先に僕と伊織とのことを話していたこと。

そして母親と一緒になってやった、彼女の会社への何百枚ものFAX。

そのせいで行方がわからなくなった伊織を執拗に探す毎日。

自分の母親が居場所を突き止め、その住所へ向かい、彼女の店をめちゃくちゃにしたこと。

そして挙句の果てに、個人的な500万円の請求をしたことも。


もう何をしても遅いのに、時折、僕の背中にしがみついてはまた床に突っ伏して…

そんな千夏の泣き喚く声をBGMに、僕はその日記をしばらくの間読んでいた。

見たこともないような彼女の歪んだ字は、その歪んだ文章に、感情に、ぴったりだと思った。


「……千夏…」

「っ…しゅっ…周助が悪いのよ!!…ひっ…うっ…全部、あなたが…!!」


「そうだね…それでこれは、僕じゃなく伊織への復讐…?」

「そうよ!!親友のくせに、私の大事な人を寝取ろうとした!!とんでもない淫乱女よ!!苦しめばいいのよ!!私が苦しんだ分っ…あの女にも苦しみが必要じゃない!!」


喉から叫んでいる千夏の声は、ざらついた彼女の心に比例していた。

僕は想像以上の真実と、彼女のその言い分に、怒りを抑えることが出来なかった。


「ひっ…!」


僕は無意識に、千夏が泣き喚いている横あったゴミ箱を蹴り上げ、周りに積み上げられている本や雑貨をなぎ倒した。

派手な音に、千夏が一瞬悲鳴を上げる。

だけど…伊織の悲鳴は、こんなものじゃなかったはずだ…。


僕は中腰になって、床に座りこんでいる千夏の胸倉を掴み上げた。彼女は震えていた。

その証拠に、彼女は体が大きく揺れるのと同時に、喉の奥をヒュッと鳴らした。


「………それで、気が済んだ?」

「…っ…」


僕の顔を見つめるその目が、ぎょろぎょろと不規則に動いている。

今度こそ本格的に、彼女の体はガタガタと震え始めた。

僕に殺されると思っているのかもしれない。

だけど僕はそんなのもお構いなしに、彼女を見つめた。


「ねぇ……君のお母さんが何したか知ってる?」

「えっ…」


一瞬我に返った顔色に僕の口が開いて、その事実を語った時…

彼女はそのまま気を失ったように、目を見開いて僕を見つめていた――――。





to be continue...

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