リカバリー_02
雅治の手にかかると、私はすぐに熱くなる。
自分でも恥ずかしい声色で、甘えたような口調で。
耳元で名前を囁かれるだけで、とろけそうになるひととき…。
リカバリー
2.
唇を、そっと舌先でなぞられた。
ベッドの上に寝かされて、優しく顔中にキスをした後、必ず最後にはそこに執着する。
雅治は、いつもこの行為に至る前、何度も何度もキスを繰り返す。
首筋にキスをされると、思わず私の声が漏れてしまうのも、楽しんで。
「んっ…」
「伊織は敏感じゃの…」
耳元で囁いて、かかる息にまた興奮する私を嘲笑うように、獲物を仕留めたと言わんばかりの表情で妖艶に微笑んでいる。
自分のシャツのボタンを片手でぱちぱちと外し、一方の手は私の頬を撫でる。
そこから、しっとりと私の乳房に掌を置いた。
私が着ているシャツの上から雅治の温もりが伝わる。
胸に当てられたそれは、彼の唇が私の唇を塞ぐのと同時に揺れ始めた。
「ん……」
「お前のその顔がたまらなく好きよ、俺は…」
きゅっと目を瞑ってから、きっと困った顔して雅治に酔っている私の表情。
その顔が好きなんて、また私の脳内を溶かすようなことを言う…
私も好きだよ雅治…貴方のその、いつもとは少しだけ違う、熱を持った目が…。
「はぁ…私も、雅治が…好き…」
「伊織はいつも…、途端に色っぽくなるのぅ…」
「そ…雅治のせ…っ…んっはぁ…」
「かわいい奴じゃ…」
私の着ていたシャツのボタンを、雅治はいつのまにか外していて。
ブラジャーを下に引っ張っると、覗かれた乳房の突起に吸い付いた。
時折、ちゅっと部屋の中に残されるその音に、乳首を這う雅治の舌先に、その息遣いに、私の体は容赦なく疼く。
「ぅんっあっっ…はぁ…ぁっ…」
「伊織…」
そんな姿を見られながら、着ていた物が脱がされていく。
雅治もシャツを脱ぎ捨てて、ベルトを外し、全裸になった。
胸や唇にキスを繰り返されながら手を握られて、今度は、ゆっくりとそれを彼自身の場所に持っていかれる。
私はされるがままに、その熱くなった雅治自身を撫でた。
「はぁ…ええよ、伊織…」
「気持ちいい…?」
「ああ…俺も負けちょられん…」
「あははっ…あっ…」
少し笑いあった後、雅治は私が動かしている手を取り、握りしめてからゆっくりと離した…。
その両手は流れるような動作で私の腰へと行き着く。
同時に、私のおへそに雅治のキスが振ってきた。
だんだんと、下がる唇、その舌先…その後のことを考えるだけで、下着が濡れる。
脱がされるだろう下着の行方を感じて、私は脚を揃えた。
「伊織、まだじゃ…」
「え…」
けれど、雅治はそうした私の脚を開いて、股の間に体をすり込ませた。
下着を着けたままの私の秘部に顔を近づけて、私の目を見つめながら、キスを落とす。
「ぁっ…や…」
「まだ少し、焦らしてからだ…気持ちが逸るか?」
「雅…治…っ」
「好きだ、その声も…全部…」
舌が…、今度は私の下着の上を這う。
途端に熱い唾液と共に湿っていく布の感触、うごめく唇。
それだけで果ててしまいそうなほどの快感が私の腰を震えさせる。
彼の舌がその下着と肌の淵をツーッと撫でていく。
その度に、焦らされている私の身体が早くしてと愛液を出す。
そうして濡れていく恋人に満足しているかのように、雅治の舌の動きは中心へ辿りつくと、ゆっくりと上下していった。
クリトリスと女性器の表面が一枚の膜を隔てて擦られる快感を、私は初めて味わっていた。
「あっ…ああっ…雅治っ…だめっ…」
「まだ肌に触れちょらん…」
頭がおかしくなってしまいそうなほどに焦らされていた私の両手は、無意識のうちに彼の髪の毛をくしゃっと撫でていた。
雅治はそれを気にもせずに、下着に手を延ばして、ゆっくりと下げていく。
今度こそ私は脚を揃えた。
ふっと笑った雅治は、脚からそれがするりと抜けると、何の前触れもなく秘部に指を入れてきた。
「あぅっ…うんっ…あっ…」
「音がしとるよ、伊織…」
「うっ…ぅっ…恥ずかしっ…」
「ヤラしぃのぅ…」
雅治は楽しそうに私を見ている。私はそれどころじゃなかった。
部屋中にグチュ、と響く私の音…喘ぐ声…揺れる腰…。
そんな姿を好きな人に笑って見られて、羞恥心と抑えきれない欲望との葛藤。
悔しくて、彼の硬くなっている場所に手をやると、 ん…っ と声を出した。
「雅治だって…ヤラし…んっ!」
「んっ…伊織、イッときんしゃい」
「あっ…んっ…あぁっ…」
私が反抗した後すぐ、雅治が私の唇を激しく塞いだ。
秘部の中でいやらしい音を立てながら入れられている雅治の指は二本に増えて、勢いを速めては掻き回す。
その親指でクリトリスを刺激されると、あっという間に果ててしまいそうだった。
絶頂へと向かう私に気付いたのか、雅治はもう一度キスを落とすと、喘ぐ私の乳房に唇を当て、吸い上げるのと同時に、一気に指の動きを加速した。
「やっ…あっ…!あっ…イッちゃ…っ…ぅっ…!」
声が大きくなった私に構うことなく、雅治はキスマークをつけていた。
果てた私の腰がガクガクと震えると、雅治は手の動きをゆるめて、余韻を確かめるようにゆらゆらと中を彷徨った後、漸く指をそこから抜いた。
「はっ…はっ…んっ…はぁ」
「おうおう、手がふやけちょるぜよ、伊織」
「う…意地悪…」
「そんなに良かったかの?」
ニコニコと嬉しそうに私を見下ろす雅治は、その指を私の口に持ってきた。
やだ!と咄嗟に顔を背けても、もう遅い。
「舐め取りんしゃい…」
「んんっ…いやっ…んくっ…」
無理矢理、口の中に指を突っ込まれて抜き差しを繰り返された。
口の中で、唾液と一緒になった自分の味を僅かに感じる。
雅治はもう片方の手で、私の乳房を弄んでいた。
それだけで、身体から力が抜けていく…彼はそんな私を見て、私の口から二本の指を抜き取ると、その指についた唾液を舐めて私の身体を起こした。
向き合う、私と雅治の身体。
目の前にある愛する人の身体に触れてはいなくても、その体温を感じることが出来た。
途端に愛しくなって、彼に身体を預けると、大丈夫か?と抱きしめてくれた。
「ぐったりしちょるのぅ伊織…これからぜよ?」
「はぁっ…うん…大丈夫…」
「伊織」
「ん…?」
「その前に、お前も付けんしゃい…」
「……あ…」
何のことかと思ったら、私の肩を掴んで一旦距離を置いた雅治が、その部分を指でなぞった。
私は気付いて、小さく声をあげた。
そんなこと、今までせがまれたことがなかったからだ。
「嫉妬深いもん同士、独占欲を楽しむのもええじゃろ?」
「ふふっ…うん…そだね!」
私の胸には、果てたと同時に雅治がつけた赤い跡がくっきりと残っていた。
独占欲の証、愛されている証、愛しているからこそ、許される証…
私が雅治の胸に頭を預けると、またそっと抱きしめてくれた。
掌の温もりを感じながら、私は彼の胸に、熱いキスをした。
きつく吸い上げると、ん…と漏れる彼の声。
嬉しくて、夢中になった。
「ついた…」
「伊織…」
「んっ…」
キスマークを付け終わった延長で雅治と私は激しく舌を絡め合わせる。
私は自然と、彼の膨張した部分を優しく上下していた。
それに応えるように、雅治は私の胸の突起を指で挟んではこねる。
やがて雅治が、耐えれないかのように溜息を漏らした。
「伊織…もう入りたい…」
「ん…私も…欲しい…」
ゆっくりと、彼の上に跨った。
さっきよりもますます膨らんで熱くなった雅治のそれを握って、
自分の中にうまく入るように、確かめるように探る。
じわじわと腰を落とすと、繋がった喜びを味わうかのような声が漏れた。
「んっ…あっ…」
「はぁっ…相変わらず…熱いのぅっ…伊織っ…」
「あっ…ぅっ…んっ…んっ…」
雅治に抱きつくと、異常なほどの肌の熱を感じた。
でも彼は、そこに浸ってる暇はないとばかりに、下から一定のリズムで私を突いてくる。
突かれる度に、近付いてくる快感が、その動きに合わせるように私の腰を振らせた。
揺れる私を見つめながら、舌先で胸に愛撫を繰り返す雅治に、思わず狂おしい程のキスでしがみついた。
唇を離すと、微かに余裕をなくした雅治の表情が、私の胸を熱くさせた。
「雅治…っ…愛してる…っ…」
「ああ……俺も愛しとるよ…伊織…っ…くっ…」
「あっ…んっ…!」
少しだけ顔を顰めた彼は、揺れていた私の身体をそのまま押し倒した。
ぐっと私の腰を両手で持ち、欲望のままに激しく腰を打ち付ける。
奥に、奥にとくる雅治自身を咥え込んで、私のそれがどんどんと縮み始めた。
「やっ…あっ…!あっ…あぁっ!雅治っ…もっ…あ…!」
「んっ…んっ…くっ…イクっ…伊織…っ…くっ…!」
パンッパンッという乾いた音がする中、私はまた達していた。
雅治はそれを確認すると、より激しく腰を振る。
内部が彼の凶器で破裂しそうで、思わず悲鳴を上げそうになった。
間もなく、彼は果てる直前でぐっとそれを抜いて、私の肌に白い欲望を吐き出した。
□
「また…シャワー浴びなくちゃ…」
「ティッシュじゃ嫌なんかの?」
「違うよ、汗かいちゃったもん…」
「ん…伊織は激しいからのぅ…」
ぽそっと言ってニヤニヤと笑う雅治に、変なこと言わないでよ!と叫んでぽかすかと胸に拳を当てた。
ベッドの中で抱き合いながら話すのが、私と雅治のお決まりのパターンだ。
でも雅治はいつもそうして、私をいやらしい女に仕立て上げる。
確かにそりゃ…いやらしいかもしれないけど…でもそれは、相手が雅治だから…好きだからああなるのだ!
「まぁそう怒りなさんな。伊織とのセックスは最高よ」
「なんなのそれ…身体ばっかりみたいな発言…」
「伊織とのセックスは良くないって言われたいかの?」
「そ…そりゃ嫌だけど…」
「…伊織は、どうじゃ?」
「え!」
付き合ってから一年半…こんな質問をされたのは始めてで、正直私は戸惑った。
セックスを声高々にいい!っていう女ってどうなんだろうか…。
でも…雅治とのセックスは好きだ。出来ることなら毎晩抱かれたいほどに。
「……どうなんじゃ?好きじゃないか?」
「そんなわけない!…好きだよ、雅治とのエッチ…」
「ええんかの?」
「…すごく…いい…」
恥ずかしいから彼の胸に顔を埋めながら白状すると、雅治は堪えるような声でくくくっと笑っていた。
「もっ…なん…!」
「顔が赤いぜよ、伊織」
それに怒って顔をあげると、しっかりと指摘されて。
つん、と彼の人差し指に突かれた私の鼻の先を筆頭に、またキスの嵐が振ってきた――――。
fin.
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