六月の手紙








何度も迎えた私の誕生日。

貴方と一緒に迎えるのは、今日で三度目。

一年目も二年目も、ありったけの愛をたくさん貰って…

今年は、どんな景吾の愛を受け止めれる―――?

















六月の手紙
















『今年はお前に何してやったらいいか…全くわかりゃしねーから、とりあえず俺のマンションに来な。』


そう言われたのは1週間前。

………私は今、走っている。


「うわ…やばい〜〜〜遅刻〜〜〜!!」


せっかく景吾が私の誕生日を自宅で祝ってくれるというから仕事でお休みをもらってまで、今日という日を楽しみにしていたのに。

私はこともあろうか昨日、ついつい夜更かしをしてしまった…。


〜♪


「っと…!!メール…ああ…景吾だ…」


景吾専用の着メロが鳴って、すぐに彼からのメールだと気付いた。

11時にはうちに来いって言われたのに、もう11時半だよどうしよ〜〜〜!!


[なにしてる?大した物もらえねーとわかって気が抜けてやがんじゃねーだろーな?]

[違う〜〜!!もうすぐ着くから待ってて〜!!]


こんなメールを、さっきから3回はしているような気がする…。

景吾は今年、景吾とは思えない程に不安そうに、私に何度も言っていた。


「大した物は贈ってやれない」


それはもう、口癖のように。

私は別に、そんなの構わないと何度も何度も言ってきているのに、それでもしつこいくらいに、昨日の電話でも言っていた。

まぁ確かに…大学で知り合った彼と、付き合い始めて3年…指輪、ネックレス、バッグ、洋服、財布、時計、靴、イヤリング、旅行、その他もろもろ…

記念日という記念日には景吾はあらゆる物を私に贈ってくれた。

所謂、いかにも彼女へのプレゼントというものはほぼ制覇したと言っても過言では無いほどに。

それは勿論、私も同じことで、今年の景吾の誕生日は何を贈ろうか、クリスマスは何にしようか、バレンタインデーは…と、毎年、頭が痛くなるほどに悩んでしまう。

今日の私の身に着けているものだって、ほとんどが景吾からの贈り物だ。

だから景吾がぶっちゃけ、「ネタ切れだ!」と思うのも当然のことであって。

私もそうなわけで…だから今年は、派手にせず、お家で過ごそうと景吾の中で決まったらしい…それはすごく嬉しいことなのに…。


「ぜぇ…はぁ…つ…着いた…はぁ…ぜぇ…ぜー…」


景吾が頭を捻らせて考えてくれた私の誕生日を、私が遅刻するなんて最低だ…わかってたけど…ホント最低…。


そんな自分に息切れなのか溜息なのか呼吸を整える為なのか…よくわからない「はぁ〜〜〜」という吐息が漏れ、ごくっと生唾を飲み込んで、私はどきどきしながらそのチャイムを押した。

すると、中から、どどどどど!と勢いの良い足音が聞こえてくる…うぐ。

そして、ガチャ!!という音と共に、眉間に皺を寄せた景吾が私の目の前に塞がった。


「おせーよ!!」

「…はい…ですよね…」


びくびくしながら下げた頭をゆっくり上げようと景吾を下から見ていると、所々に穴が空き、クラシックなロゴが大きくプリントされたビンテージデニムにその上には-Abercrombie&Fitche-と書かれたロゴが右下にあるカーキのTシャツを着ていた………あれ…。

…よく考えると、景吾の身に着けている物も、私が贈ったものばかりだ。


「ったく…なにしてやがった…」

「ごめん景吾…ちょっと…寝坊…して…」


景吾に説教されていることを頭の隅に、私はそんなことを考えていたせいで、彼の中でかなり好ましくない、寝坊という言葉を発してしまった。


「あーん…?」

「…ううう…ごめんてばぁ!!ごめんごめんごめん許してー!!」


寝坊、と言った瞬間に ぴききき と引き攣った景吾の顔が怖すぎて、私はダダコネの子供みたいに景吾に抱きついて顔をうにうにと胸に押し付けた。


「な…おい伊織…調子良すぎねぇか?…ん?」

「………ごろにゃー…」


「ったく…TVでも見て座ってろ。飲み物持って行ってやるから」

「わー!景吾優しいーーーっ!!大好き!」


「うるせー早く行け…バーカ」

「あう〜バカだもーん…ふふふ〜ん♪」


ぶっきらぼうに言うくせに、バーカと言った景吾の顔は微笑んでいて。

3年も付き合ってるのに、私は未だ、それだけで顔がニヤけてしまうほどに景吾を愛していた。

大好きな大好きな景吾に微笑まれただけで、私の機嫌は嘘みたいに良くなる。


「ほら、飲め」

「きゃああああ!!つめっ…!!冷たいー!!」


後ろからきた景吾に 飲め、と言われた瞬間、私の頬にこれでもかというくらいに冷たいグラスがぺっとりとくっついた。


「当たり前だろ?顔に当てたんだからよ…くくっ…」

「ひひひひ…ひどいよー!お化粧取れちゃうじゃない!」


バッグの中からハンカチを取り出してひたひたっと当てる私を、景吾はいたずらっ子のような顔して笑って見ている。

むー!悔しい〜〜!!


「然程変わりゃしねーからいんじゃねーのか?くくっ…」

「もー!ううううううう…ごく…」


それでも喉は渇いているわけで、というか今のはきっと遅刻した私へのお仕置きなわけで…私は黙ってそれを飲んだ。


「うまいか?」

「うん!すごく美味しい!!」


「それ、一応酒入ってんだぜ?」

「でっ!?ええええええええええええ!?」


私が全くお酒が飲めないということを知っているくせに、大したことじゃないと言わんばかりの顔でふっと笑ってそう告白する。


「で…でも全然…お酒の味しない…」

「ああ、異常なくらいに薄めたからな…大丈夫、酔やしねーって…」


「ほ、ほんとぉ?」

「ああ…それにそれは、食前酒な?」


「食前酒……ってことは!?」

「ほら…こっちに来いよ…」


グラスに注がれた食前酒をテーブルの上に置くと、景吾が私の手を握って誘導した。

晴れている暖かな日には、いつも二人でご飯を食べる広い広いバルコニー。

そこへ連れて行かれた私の目に、チリチリと墨の燃える音がしている。


「わーーーー!!バーベキュー!?」

「伊織は肉しか食わねーからなー」


「そんなことないもーん!他の物も食べれるもん…でも肉好き…」

「だろ?…あんまりがっつくなよ!デザートもあるから」


「やったー!」

「まるで子供だな…くくっ…」


お肉を見てはしゃぐ私に苦笑しながら、景吾は懸命に団扇で風を当てていた。

なんだかそんな後姿が愛しくて、私は思わず抱きついてしまう。


「伊織…」

「ん〜?」


「何くっついてんだ…?あーん?」

「嫌…?」


少しだけ、汗で染みてるTシャツに、そっと私が頭をすり寄せると景吾が私を振り返った。

…すごく、嬉しい。

私の為に、今日は朝から準備して、こうして汗かきながら火を熾してくれてたんだ…。


「嫌じゃねーけど動きにくいだろ…?」

「でも景吾とこうしてたいーーーー…」


今日は私の誕生日だから、思い切り景吾に甘えたい。

景吾もそんな私のことは全部全部、お見通しで…。

後ろから抱き付いている私の頭に、腕を斜め後ろに上げてから優しく微笑んで…そっと、撫でてくれた。


「でもあれだ伊織、こうしてても…肉は焼けねーぞ」

「むむー、それがあったか!」


私がそういうと、景吾はふっと笑って。

私もそれに合わせて、あはは!っと笑う。

それでも景吾と身体が離れるのはやっぱり少しだけ寂しくて。

私はいかにも名残惜しそうに、景吾の背中にキスをした――――。











「んん…」

「目…覚めたか?」


スーっと流れるように私の額を掠めたのは、風に揺れた自分の髪で。

半袖でいた私を、後ろから優しく包んでくれている景吾の腕の温もりが、爽やかな心地良い風と一緒になって私に触れている。


「あ…寝ちゃってた…ごめん…」

「構わねぇよ…昨日遅かったんだろ?」


景吾の胸に身を委ねて眠れるほどの大きなデッキチェアーは、昼寝の好きな私の為に、景吾が特別に業者に発注してくれた物だ。

時々、天気がいい日曜日には、二人でここでお昼寝をする。

それが癖のように、景吾を背もたれにしてこの椅子で安らぐと、私はしばしば、眠りに堕ちる身体になってしまったようだ。


「ううん…大丈夫…あ〜…気持ちイイねぇ…あ…おにぎりまだあるよね?…食べようかな〜…」

「まだ食うのか!?」


「え〜!だって…景吾がせっかく握ってくれたおにぎりだよぉ?」

「あ〜…そりゃあ俺様の手垢が入っててうまいだろうよ…」


「ちょっ!!汚いこと言わないでー!!」

「はははっ!間違いじゃねぇだろ?ん?」


景吾の上から、とん、と降りて、すぐ傍のテーブルにあるおにぎりを取る私の背中に向かって景吾はそう言いながら、他の人には滅多に見せない、少年のような笑顔をくれた。

もう〜とぶつくさ言いながらも、私は景吾の上にまた乗っかっておにぎりを頬張る。

それが美味しそうに見えたのか、景吾は頭を少し前に出して、おねだりするようにあーんと口を開けた。


「ん?はい」

「はんきゅ…」


男性にしては…いや、あの跡部景吾だから当然か、彼はサンキュと言いながら上品におにぎりにかぶりつき、それもまた上品に食べた。


「景吾さ、おにぎり初めて食べたのっていつ?」

「あーん?」


「景吾がおにぎりって何かちょっと面白いなーって…」

「バカにしてんのかてめぇ…オラ!!」


私が少し「ぷぷぷっ」と含み笑いでそう言うと、景吾がまた少年のような顔をして楽しそうに嬉しそうに笑いながら、私のお腹をくすぐってきた。


「ぎゃーーーはははは!!やめてやめてーー!!」

「ごめんなさいは…!?」


「ごごごっ…あーーーはは!!あははは!!ごめんなさいーー!!」

「よしよし、しょうがねぇ、許してやるか…」


「はぁーはぁー…も…ほんと…涙目ーー!!」

「はははははっ!泣くなよ…!くくっ…笑えるじゃねぇの」


景吾からくすぐりの刑を下された私は、身動きのあまり取れないデッキチェアーの上で跳ね上がり、景吾がそれを抑えつけるものだからあまりのくすぐったさといろんな感覚の苦痛に笑い過ぎて涙目になってしまった。

それを見て、景吾が面白そうに笑っている。


「ちなみに俺様が初めておにぎりを知ったのは中学1年くらいの時だな」

「えっ!!そ、それまで知らなかったの!?」


「知らなかった」

「ひゃーーーーー…信じられない…」


「初めて合宿ってのに連れて行かれてな。その時の合宿で1年全員で作ることになったんだよ。その…おにぎりとやらをな」

「おにぎりとやらって…」

「うるせー関西人が居てな…『自分にぎり飯知らんのかー!?』つって、俺様の隣で叫びながらよ…そいつがバカみてーに熱弁してたんだよ。嫌でも覚えちまった」


懐かしそうに、嬉しそうに話す景吾の表情がすごく優しくて。

その関西人の彼って、きっと今でも、たまに連絡を取り合っているあの人だとすぐわかった。

でも、それには気付かないフリして、出身が関西のほうの私は言った。


「あはは!関西人ナメたあかんのよ景ちゃん」

「あー…そん時から関西人には縁があんのかもな…?」


「あら嬉しいわぁ〜♪」

「バーカ」


そう言っておちゃらけた私も、そんな私に悪態付きながら微笑んだ景吾も、お互い、突然真面目な表情になって…見詰め合った私達は、静かに唇を寄せた。

そのキスが離れた時、また私達は微笑み合って。


「…伊織、ケーキあるぜ?」

「あ!!そうだよ〜!ねね、ケーキも景吾の手作りなの!?」


「あーん?俺様を誰だと思ってやがる。愚問だ」

「わーーーー!!景吾のケーキぃぃぃーーー!!」


そう絶叫しながら喜ぶ私を、多少呆れた、苦笑顔で見た景吾は「待ってろ」と私の頭をぽんと弾いてからキッチンへ向かっていく。

そんな小さなスキンシップに私の胸は舞い踊った。


「…綺麗な空…いい天気だなぁ…」


ぽつりと一人で呟きながら、景吾が戻ってくるまでに空を仰ごうと思った私は、デッキチェアーからゆっくりと起き上がり、柵がしてあるところまで小走りで向かっていった。

太陽がまだ眩しい空に、私はひとつ欠伸をして。

景色を少し眺めた後に、今度はぐるりを振り返りバルコニーを仰いだ。


「広いよなぁ…さすが跡部様宅って感じ……あ……」


景吾の家のバルコニーへ繋がる部屋は2つあって。

リビングと、そしてもうひとつは書斎からだった。

いつも明るい時間には、ブラインド全開の景吾宅が、今日は何故か書斎だけブラインドが閉じられている。


「何をぼーっと突っ立ってんだ?」

「あ…わ!!美味しそうーーーー!!」


その時、景吾が前方から現れて…私は景吾の持っているケーキに、目を爛々とさせた。


「味は保証しねーけどな…」

「景吾ありがとうーーー!!もう大好き大好き大好き愛してるーー!!」


テーブルにケーキを置いた景吾に、私はすぐさま飛びついた。

あの跡部景吾ともあろう人が、私の為に…おにぎり握って火を熾して、バーベキューの用意して。

それも野菜切ったりお肉切ったり…挙句の果てにケーキまで作ってくれた。

今までずっと特別な日は、外で食事だった二人のデート…それも勿論、素敵過ぎるものだったけど。

それでもやっぱり、景吾がこんなアットホームなことをしてくれるなんて…!!

今更ながらに景吾のしてくれた私への誕生日プレゼントに、じわじわっと涙が出てきそうになる。


「なんだよ…どうした…ん?」


抱きついて離れない私から、鼻をすする音が聞こえたせいか景吾は私を優しく抱きしめて、ゆっくり、頭を撫でてくれた。


「うれ…しくって…!!ありがとう…景吾…最高だよ…最高の誕生日プレゼント…もらっちゃった」


景吾に抱きついたままそう言うと、景吾が小さく笑った。


「おいおい、まだ渡しちゃいねーぜ…?」

「え…?」


景吾はそう言って私をゆっくりと離すと、書斎へ向かって歩いた。


「あ…そっち開いてるの…?」

「くくっ…開けてたの…!」


そう言った景吾がガラッと書斎部屋を開けてブラインドを思い切り引っ張った……その瞬間。

私の目に、全く思いも寄らなかった物が飛び込んできた。


「…………………景吾…?こ…れ…」

「綺麗だろ…?あんまり腕に自信はねぇけどな…でも…綺麗だろ…?」


「嘘……」

「結構時間かかったんだぜ…?」


それは、私が描かれた油絵だった。

ゆっくり、ゆっくりと、私は目を見開いたまま、その絵に近付いた。


「…………私…こんな綺麗じゃないよ…景吾…」

「…バーカ…それは俺様が決めんだよ」


そっと私を後ろから抱きしめる景吾の腕を、私も思い切り抱きしめて…「ありがとう」…そう、呟いた。

声にならない声で…微かに、震えた身体で。

すると、景吾の腕がまた力強く、私を抱きしめる。


「…景吾は、絵心もあるんだね…」

「さぁどうだかな…伊織だから描けたのかもしれねぇだろ?」


「それ…殺し文句……あれ?」

「あーん?…あっ!!だ、それはダメだ…!!」


景吾の温もりに浸りながら、ぽつぽつと言葉を交わしていた私が、ふと、首を横に振ったとき…そのスケッチ台の後ろに隠れていた小さな椅子の上に、何かがそっと置かれていることに気が付いた。


「何慌てちゃって!!怪しい〜〜〜!!」

「ちがっ…!!あっ…伊織!!」


景吾の腕から抜け出して、その置かれている物を取って見た私はメッセージカードにある言葉を、声に出して言っていた。


「……Happy…Birthday……」

「頼むからそれは後にしてくれよ…あぁ…」


私がそれを開くと、景吾が諦めたようにくるっと背中を向けた。 






Happy Biethday 伊織



六月の雨には 六月の花咲く

花の姿は 変わるけれど

変わらぬ心を誓いながら

いくつ春を数えても いくつ秋を数えても

二人でいたい


そよ風は見えない 幸せも見えない

愛の姿も見えないけれど

見えない何かを信じながら

いくつ春を数えても いくつ秋を数えても

二人でいたい










そのメッセージカードに書かれた詩的な文章を読んで、私は胸が一気に熱くなった。

景吾…ありがとう…どうしよう…勿体なさ過ぎるよ…こんなの…。

もう涙でぐちゃぐちゃになった私は、震える声で景吾の背中に呼びかける。



「……………景吾…」

「……最後まで、ちゃんと、読んだか…?」

「え……?」

「ちゃんと…最後まで読んでくれよ…?」

「えっ…」


景吾が肩を震わせて、意味ありげにそう言った…私はふと、自分で掴んでいるメッセージカードを見下ろす。

すると、右手の親指に隠れて、何かが書かれていることに気が付いた。

これだ…そう思った私は、ゆっくりとその親指を避けた。

そこに書かれてあったのは…


「……by…小椋…佳…」

「…ぷっ…くくくっ………」


「ちょ…景吾ーーーーーーーーーーー!!」

「だから後にしろって…!!伊織が勝手に見つけて勝手に読んだんだろうが!」


景吾の背中に向かって飛びつき、バシバシと叩く私を景吾は子供みたいな顔して楽しそうにそれを受けながら笑っている。


「何が勝手に…!!わざと見つかるように置いてたくせしてもーーー!!」

「あーん!?なんの話だ!!…ははっ…いてーよっ!」


全くこの人は!!なんか詩みたいだと思ったら、小椋佳の歌だったのね!!


「私の感動返せチクショーーーー!!」

「小椋佳の言葉借りただけだろ?そんな怒るなって…」


「うーーーーーーーーー…」

「悪かった…くくっ…でも…想いは小椋桂と一緒だぜ?」


笑い過ぎて涙目になった景吾が、攻撃する私の腕を掴んでそう言った。


「そんなの全然…!!」

「…嬉しくねぇ?」

「……………嬉しい…よ…」


すごく、すごく悔しいけど、こんな詩を渡されて、嬉しくないわけがない。

それが例え小椋佳だったとしても…!


「そんな顔すんなって…ちゃんと、こっちに本物があるから…」

「えっ!!」


景吾は、それをスッとジーンズの中から取り出して、私にひらつかせた。


「それ読ませ…!!」


私がそれを掴もうと景吾の持つメッセージカードに手を掲げると、景吾はそれをなんなくパッとかわした。


「俺と居る時は読ませねー。一人になってから読め…これが条件だ」

「え〜…うー…わかったよぉ…」


ぶつぶつ言う私に、景吾はニッコリと笑って…そして、熱い、熱いキスを、何度も、何度も繰り返ししてくれた―――――。






Happy Birthday 伊織


六月はお前の特別な月だ。

だが来年には、俺とお前の特別な月にしよう。





June brideも悪かねぇだろ…?



跡部景吾




fin.



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