熱_08
混ざりあい―――
お前と俺が溶けちまえばいい……
そろそろ…空がブルーに染まる…
そしたらお前の肌が綺麗に透き通って、俺を狂わせるんだろ…?
熱
8.
伊織に逢えない時間が、俺を余計に興奮させちまってた。
毎日…少しの希望と現実の狭間を見て、憂鬱な気持ちで伊織の自宅マンションへ向かっていたこの時間に…俺は今、伊織をしっかりと抱きしめて、ベッドの上で向き合って座っている。
「んぅっ…ふっ…」
「肩…ビクついてるぜ…?」
目を開けたまま伊織の口内をゆっくり、焦らすように舌を使って愛撫した。
最初からの貪るようなキスは、伊織を傷付けちまう…そんな気がした。
「えっ…ぁ…」
「キスだけで、そんな感じちまってんのか…?」
「や…ちがっ…ぅ…」
違うと赤い顔して恥ずかしそうに言いながら、伊織は俺のキスを躊躇うことなく、嬉しそうに受け入れる。
その表情が今まで見たことねーくらい、色っぽい女の顔をしてやがる。
「なんだよ、違うのか…?俺様はとっくにだぜ…?」
「…ん…はぁっ…」
まだ肩を抱きしめたまま、首筋に唇だけを滑らせてから、ゆっくりと舌を押し出した。
この俺様が今まで、女を抱くのにこれほど慎重になったことはない。
こんなに抱きたいと思った女も初めてなら、優しくしてやりたいと思った女も初めてのことだった。
「我慢してねーでもっと声…聞かせろ…」
「我慢…なんっ…あっ…」
顔を俯かせて目を強く瞑っている伊織の、乱れる顔が見たい…俺は撫でるように、肩に置いていた自身の手を、伊織の乳房の上に滑らせた。
「なんでこんな日に限って…こんなもん着てやがんだ…」
「だってぇ…んっ…あ…っ…」
「脱がしにくいだろうが…あーん?」
伊織の着ているニットの上から、蕾を見つけて指の間に挟んで軽く愛撫してやった。
漏れる吐息が益々俺を興奮させる。
早く素肌に触れたい…そう思うのと同時に、俺の手は自然と伊織の服の下から潜り込むように進入していた。
「あ…んっ…景吾の手…暖かい…はぁっ…」
「ったりめーだ…お前見て、どれだけ興奮してると思ってんだよ…」
この俺様が、自分で自分の顔の熱さに気が付くほどに…
今までの女と、伊織は、何もかも違っていた…。
ちっとも慣れちゃいねー、受け入れることが精一杯の表情。
「興奮…んっ…して…くれてるの…?はっあっ…」
乳房をゆっくりと撫で回しながら下から服を捲り上げて、俺はすぐに胸元に顔を埋めた。
少し強めに、きつく、伊織の胸を吸い上げると、赤い花が咲く…。
「景吾…っ…」
「俺様のっつー証拠だ…伊織…俺がお前を今から抱くんだぜ?…俺が興奮してんのが…お前にはわかんねーのか…?」
「あっ…」
伊織を責めるようにそう言ってから、俺は服を脱がせようとゆっくりと伊織を誘導した。
それを伊織はまるで子供のように、全身を俺に預けた。
着ている物を全て脱がせ、俺も同じように全てを伊織に預けようと裸になる。
静かに重なる肌と肌が、少し触れ合うだけで敏感に反応しちまう程…俺は伊織を欲していた。
「…わかっただろ…?俺が興奮してんのがよ…」
「しっ…知らないよ…っ…」
裸の俺を顔を赤らめて見ていたくせに、俺から顔を背けてそう言った伊織が可愛くてしょうがねぇ。
俺は伊織の上に覆いかぶさって、手を強く握り締めてから、唇から胸までに舌を這わせてその愛を伝えた。
「はっ…ぁっんんっ…ひゃ」
俺が赤く花を咲かせた隣で疼いていた小さな蕾を口の中で転がすと、伊織が悦びの声をあげる…その声がもっと聞きてーんだよ…。
「…こうされんの、好きか…?」
「やっ…はぁっ…」
繋がっている手を離して、俺はもう片方の蕾をそっと摘んだ。
口の中で弾く突起はまだ足りないと俺を誘ってやがる。
「伊織…俺を見ろ…」
「えっ…あっ…やっ…景吾…」
俺を見下ろした視線が切なく、時折強く目を閉じる。
俺はそんな伊織を下から見つめ、目が合った時、胸に押し当てた舌を焦らすようにねっとりと先で転がしてから、伊織が乱れる様を見ていた。
「はっ…あぁっ…ん…はぁ…」
「もうぐちゃぐちゃなんじゃねぇのか…?」
「あっ…!や…景吾っ…」
伊織を見つめて我慢しきれなくなっちまった俺が容赦なくその割れ目に指を滑らせると、思った以上にとろりと、伊織は濡れていた。
「ひゃっ…あ…も…恥ずかしい…っ…」
「……何が恥ずかしいんだよ…こんなに可愛いっつーのに…」
俺の余裕を奪っていく伊織の仕草のひとつひとつが…その全てが…俺を支配する。
これまでセックスで心を通わせることなどなかった俺が、初めて思った…。
伊織…お前を壊して…俺だけのものにしたい…誰にも見せたことのない、お前の姿が見たい…。
「あっ…やっ…ぁぁっ…うっんっ…ああっ…!」
「この音が、聞こえるか、伊織…」
「やだ…やっ…ああっ…ぁ」
「もうこんなになっちまってたんだぜ…?」
ぐちゃり、ぐちゃりと、わざとその音を聞かせるように伊織の中を掻き回した。
その度に伊織の秘部が凝縮して、俺の指を締め付ける。
俺がそれを拒むように強く掻き回すと、伊織の中から愛液が溢れ出た。
「やっ…景吾っ…そんなにしたら…っ…はっぁっ…!」
「もっと壊れてみろよ…それとも突きが足りねぇってか…?」
「ひゃっ…ああ!!」
俺から逃げるように身を捩って起き上がった伊織を、俺は逃がさないとばかりにもう片方の手で抱きしめて、中をより強く激しく掻き回して、突いて、その動きを早めた。
「…シーツに零れちまってんな…こうされんのも…好きなんだろ…?」
「んっ…んんっ…ン…んんっ…ッ!」
それから伊織の顎を片手で捉え、深く深く、今度は容赦なく貪るようなキスをすると、伊織は俺の首に手を回して腰をガクガクと震わせながら果てた。
「んっ…んんっ…」
「ん…くっ…」
果ててもまだ俺は伊織から離れずにキスを続けた。
俺の舌から伝わる唾液が伊織の喉元を刺激したのか、伊織は苦しそうな顔をし、それを喉を鳴らして飲み込んだ。
「はぁ…あっ…景吾…はぁ…」
「まだ…もっと…めちゃくちゃにしてぇ…」
「えっ…やっ…景吾…!?」
唇が離れた時に見た、伊織の今にも泣きそうな顔が俺の欲望をより駆り立てちまった…。
俺はそのまま伊織の足を大きく広げてどろどろになった伊織の繁みに舌を押し入れた…くちゃ、と卑猥な音が伊織の身体を刺激する。
「ん…ッ!はぁ…!!けぇごぉっ」
「ここ…すげーヒクついてるな、伊織…」
「ゃ…ん…あ…ああっ!」
「吸い上げたら、どうなっちまうんだろうな…」
「やっ…ダメッ…!」
「もっと喘いでいいぜ?伊織…」
俺の唾液と伊織から溢れる愛液で、その水音はビチャビチャと大きな音を立てて俺達を酔わせた。
痙攣間近のクリトリスを吸い上げると、伊織は身を捩じらせてまた果てた。
「やっ…、吸っちゃ…!あぁ…ッ!!」
「んっ…伊織…可愛い…」
「はぁ…はぁ…も…壊れる」
乱れた呼吸で俺を見つめる伊織を見ながら、俺は自分の濡れた唇の周りを指ですくいあげて、そのまま口の中へと運んだ。
伊織の愛液が…俺の中に染み込んで行く…これも証だ…なぁ…そうだろ…。
「もうひとつ…な…」
「えっ…」
伊織が俺のものだという証が、キスマークひとつで足りるかよ…
俺の独占欲は、そのまま内股に顔を埋めて、またきつく吸い上げた。
「あ…また…つけ…っ」
「嫌か…?」
俺のきつく吸い上げる皮膚の痛みに、伊織の足が微妙に震える。
拒むかのようなその言葉に、そこから伊織を見上げて、俺は急に不安になった。
「…俺にも…つけろ…」
「えっ…」
「どこでもいい…お前の好きなとこに…」
キスマークを付けろと言った俺を、伊織は目を丸くして見やがった。
うるせー、俺だって十分恥ずかしいんだよ…。
「……胸…で…いい?」
「ああ…」
「…じゃ…じゃぁ…」
ゆっくり、俺の胸に近付いて、伊織は軽くキスをした。
何度かそれを繰り返していくうち、伊織の唇が自然と下がっていく。
そうして伊織が頭を下へとずらしていくうちに伊織の胸に俺自身が僅かに触れて、思わず、俺は声を漏らした。
「…ん…っ…」
「あ、ごめっ…」
「くっ…胸じゃなかったのかよ…」
「…やっぱり私も…内股にしようかなって…」
顔を赤らめていった伊織は、すぐに俺の股に顔を埋めた。
「あっ…!くっ…」
伊織の頭がそこにあるというだけで、俺は気が狂いそうになるほどに欲望が膨れ上がった。
「んっ…うー…うまく付けれない…」
「…っだよ…ならもういい…」
俺がそう言って伊織を元の体勢に戻そうとした時、伊織がそれを拒んで俺の欲望に触れた。
「…ちょ…おおぃ…」
「………景吾が…好き…」
「……伊織…?」
「…誰にも…負けたくない…景吾が…好き…」
下から俺を上目遣いで見て、伊織はそう訴えた。
俺自身は伊織に握られたことで伊織の手の中でまた膨張し、硬くなっちまった。
「…初めてだから…誘導…してね…んっ…」
「あっ!…くっ…伊織…あっ…」
伊織は躊躇うことなく、俺を口に含ませた。
ぎこちなく、ゆっくりと俺に伊織の舌が絡まり、いやらしい音を立てた。
「んっ…んっ…」
「あぁ…伊織…はぁ…すげイイぜ…」
何人も女と寝てきた俺を、その女達の誰よりも愛したいと伊織は俺を悦ばせる為に頭を振り続けた。
伊織の唇が俺のモノを擦り、ねちゃねちゃと動く度、俺は我慢出来ずに腰を振り、伊織の頭に手を添えた。
「くっ…あっ…はぁ…出ちまう…伊織…」
「んっ…んっ…ふっ…ん…く…」
「は…はぁっ…あっ…あぁ…伊織…っ…!!」
「…んっ!…んく…」
ドクドクと、俺の中から欲望が噴出す。
伊織は俺を口の奥まで押し込んで、それを涙目になりながら飲み込んだ。
「…おい…大丈夫かよ…?」
「…えへっ…」
涙目で飲み込んだ伊織は、俺のその言葉に、何故か嬉しそうに笑って言った。
「あーん?何笑ってやがる…」
「だって…ふふっ…」
くすくすと微笑みながら俺に抱きついて、首筋に何度もキスしながら伊織は言った。
「景吾…すごい可愛かった…」
そんな安っぽい挑発でさえ…
伊織から与えられたものであれば、俺はすぐに受けちまう…
「…ほぉ…まだ余裕があるみてーだなぁ…伊織よ…」
「だって景吾、顔赤くし―――んッ…!!」
饒舌は黙らせておくべきだ…俺のキスでな。
抱き合って、笑いあって…離れていた時間を取り戻すように、俺達はしばらくそうして繋がらないまま…俺は伊織に愛撫を繰り返し、伊織はその波を受けて何度も果てた。
やがて触れ合った唇がお互いの意思を伝わらせたのかどちらからともなく俺達は繋がった…
寂しくて、逢いたくて…、ずっと欲しかった伊織の愛が、漸く俺を受け入れて、手を繋ぎ合わせるとそれを強く握り返す。
少しでも、離れたくない…そんな俺の勝手な想いで互いが果てた後も繋がったまま、俺は息が詰まるほど伊織を抱きしめていた。
「景吾…?」
「………ん…」
俺がそう呟いただけで、伊織は何も聞かずに俺の頭を撫でた。
「…愛してるよ…」
「ああ…俺も…愛してる…伊織…」
唇を、何度も何度も重ねて…
混ざりあえばいい…溶けてしまえばいいと、何度もそう思った。
伊織…俺の愛した、最初で最後の女…
これから二人だけの約束を、もう一度交わそうぜ。
いつまでも、愛してると―――。
fin.
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