dream | ナノ

 いつもと違うキミ

やらなければならないことが、やっとひと段落。
くっ、と背伸びをし、窓の外に目をやる。

「今日も雨かよい」

ここ最近降り続いていた雨は船の中を大人しくさせる。

「なぁ!ハチ公!聞いてんのか?」
「んー、聞いてるよ」

ダメだ、と額に手を当ててサッチと何か相談しているエースを見つける。

「なにしてんだよい」
「おーマルコちょうど良かった!あれ、見てみろよ」

顎で指された方を見ると、静かな原因はこれか、と思う程にボケーっとしてるハチ公の姿が。
何してんだよい、ハチ公は。
雨で遊べねぇのが不満なのか、単に腹が減ってるのか。
珍しく大人しいハチ公は外を眺めては定期的に溜息をつく。

「何か悩みでもあんのかよい」
「マ、ルコ、隊長…」

人の顔を見るなり吃るたァどういう事だ。
首を傾げて見ると、ボンッと音が聞こえそうな勢いで顔が赤くなった。
可愛いっつーか、おもしれぇっつーか。

「なんだよい」
「あ、や、別に…」

よく分からねぇけど、元気ねェのは調子が狂う。
ハチ公の向かいに座り持っていた本を開く。

「何かあったら話せよい、聞くからよい」

そう言うと、ハチ公は普段見せない様な表情で頷いた。
なんていうか、大人っぽいとうか、赤らめた頬や長い睫毛、熱を帯びて少し潤んだ瞳とか、不覚にもドクン、と心臓が跳ねた。

「あ、雨の日は…気持ちが、下がります、ね」

いつもの可愛いハチ公とは違って見えるのは、さっきの表情を見たからか。
甲板でエース達と馬鹿騒ぎしてる元気なハチ公もいいが、こっちのハチ公もそそられる。

「そうだな」

何も悟られない様に視線は本に向けたまま。
小娘相手に、なんて、エースとサッチに笑われるだろうな。

「こういう時は、どうしたら良いんでしょうかね。雨だけど、隊長がいるから、その、気持ちは晴れというか…」

モジモジしながら、話す姿が可笑しくて、思わずクックッと喉をならした。

「た、隊長?」
「いや、可愛いなァと思ってよい」

本を閉じて視線を向ければ、茹蛸みたいに顔が赤くて、潤んだ瞳が俺を捉えた。
そっと手を伸ばしハチ公の頬に触れると、ピクッとハチ公の体が小さく跳ねる。

「ハチ公」
「あ、マルコ、隊長…」

顔を近づければ、ハチ公も目を閉じる。
ぷるんとした唇に触れるだけのキス。

「いいのかよい。こんなおっさんで」

そう問い掛けると、頬に触れてる俺の手に自分の手を重ねて

「マルコ隊長がいいんです」

と言ってくれた。

「好きだよい」
「あたしも、好き、です」


いつもと違うキミ
今度は深く、長く、自分たちの気持ちを確かめあうようにキスをした。







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