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 敵船よ、こい!

戦闘中のサッチ隊長はそれはそれは格好良くみえる。
普段はチャラコックのくせに、戦闘の時になるとガラリと表情が変わる。
その瞬間のサッチ隊長の顔が、私は凄く好きだ。

「敵船来ないかなぁ」
「え、なに物騒な事言い出すの、この子」

島にいても争い事はしないから、敵船が来ない限りは戦闘にはならない。
そんな日が続いてるって事は大変平和な事だからいいんだけど、サッチ隊長のあの顔を何日、何週間と拝んでないのが物足りなくなってきた。

「だってぇ…暇なんだもん」
「ハチ公はバカかよ」

テーブルに突っ伏していた私の目の前に入れたてのココアが入ったマグカップを置いて、サッチ隊長が向かいに座る。

「敵船なんてこなくていいんだよ」
「だって…そうじゃないと見れないんだもん」

マグカップを手に取り、冷ましながら飲む。
おいしい…当たり前か。サッチ隊長が入れたもの、作ったものは全部美味しいんだもんね。
そんな事を思いながらサッチ隊長に視線を向けると、きょとんとした顔をしていた。
格好いいな、チクショウ。

「なんですか」
「何が見てェんだ?オニーサンに言ってごらん」

サッチ隊長は私の事を妹にしか見てないんだろうな。
隊長にだけは妹扱いされたくない。

「サッチ隊長の顔です」
「は?」

面食らったような顔をしてサッチ隊長が飲もうとしているコップを持った手が止まる。
いつも見てるだろ?とでも言いたそうな目線が、わかってないなぁ、と言ってしまいそうになる。

「戦闘に切り替わる時のサッチ隊長の顔が見たいんです」
「え、なにそれ。俺どんな顔してんの?」

ペタペタと自分の顔を触り、今にも鏡ー!と叫び騒ぎそうな勢いだ。
そうなれば鬱陶しい以外の何物でもない。
私は、私がいつも見ているサッチ隊長が好きだし、やっぱり、オニーサンなサッチ隊長も好きだ。
もう一度言うが、サッチ隊長に妹扱いはされたくないけど。

「すーっごく、格好良いですよ」
「ハチ公?」

動揺しろ、それで、私を女として見ろ。

「そんな事、他の奴もそうだろ?」
「サッチ隊長しか言いませんよ」

だって好きなんだもん。サッチ隊長が。
気付けば体を乗り出し、隊長の唇にそっと触れる。

「なっ?!」
「この意味、わかりますよね?」

バカじゃないんだし、と付け加えて、動揺を隠しきてれないサッチ隊長に背中を向け甲板へ出る。

今日も平和なだなぁ
「なぁ、マルコ。敵船来ねェかな…」
「バカ言ってんじゃねェよい」





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